誘いとハプニング
「学校全体のおよそ八割が、か」
俺はこの学校のことを知らなすぎたというか、
小田さんの胸中を考えれば納得できる。
言えなかったんだろうな。
俺はこんなところにしか居られなくても
大丈夫だと小田さんに伝えたい。
しかし、外部との連絡はアウト。
あの人は今頃どうしているんだろう…………。
「ん?」
スマホを見ると、イヴからチャットが来ていた。
内容は、明日どこかに出掛けませんか?という誘いだ。丁度俺も学校まわりに興味があったため、
どこかに行こうかと考えていた。
まだどこに行くかは分からないが、少し楽しみだ。帰ってからチャットしてみるか。
「おいゴラァ!!!!」
どこからか怒鳴り声が聞こえた。ここから近い。
様子を見に声のした方へ向かう。そこは裏路地。
「あれは……」
複数人の男子生徒に囲まれた日村がいた。
ていうか前にも見た奴がいるな。
ひとまず物陰から様子をうかがう。
日村とは言えど、複数人の能力者を相手にどうなるか分からない。なので、いざとなれば手を貸そう。貴重な戦力だからな。
「ヒッヒッヒ!こんなとこ通るから悪いんだぜ〜?」
「バカなヤツだなぁー!」
「ふーん。程度の低い人達だね」
「んだと!?」
「へっ!さっさとやっちまおうぜ」
日村が手を広げると、突然、辺り一帯にバチバチっと電撃が走った。次の瞬間、ドォォン!!と落雷のような音が鳴る。耳が痛い。
「凄い威力だな……」
煙を掻き分けると、日村が複数人の倒れた男子生徒を背に更に奥へ進んでいるのが見えた。
心配いらなかったようだ。
風を起こす能力じゃなかったのか?今のは間違いなく電気だったぞ。……まあいいか。
「懲りない奴らだな」
倒れた男子生徒に向けてボソッと吐き捨て、その場をあとにした。
「なんだか疲れたな」
帰宅後、スマホを見ると、
再びイヴからチャットが来ている。行き先の事についてだ。
候補として挙がったのは二駅先にある、街で最大のショッピングモール。フタバガーデン。
俺も真っ先にここが思い浮かんだ。もう一つ候補があったが、彼女を連れて行くにはちょっとなぁという場所だ。
そして結局、フタバガーデンに決まった。
自室に戻り、ふとあることに気付く。
「そういえば俺、着る服全然無いな……」
全身黒の服一式とパジャマに制服。あとは予備の制服。これだけだ。
一応ルールとしては、普段から制服の着用を推奨されている。しかし、休日は私服でも良いらしい。
なら、彼女はほぼ確定で私服だろうな。
それなのに俺が制服って……浮きそうだ。
まあ、とりあえずこの黒一式でも着ていくか。
別に彼女とは付き合ってもないし友達だ。
カップルでデートするわけじゃない。
変に考えるなよ俺。
______翌日。俺はいつも通り早めに起きて支度する。
集合は最寄りの駅前に九時ごろ。
同じタワマンに住んでいるのに何故エントランスではないかというと、変に目立つのをお互い避けたかったからだ。
学校に行く時とほぼ変わらず準備をし、余裕を持って最寄り駅へ。
集合時間十分前。今日行くところの詳細や道順などをスマホのマップで見ていた。
そういえば初めて乗るな。モノレール。
「すいません!おまたせしましたー!」
「いや、待ってないぞ。…………!!」
彼女の方へ目線を合わせる。すると、白いワンピースにサンダル。とても清涼感のあるコーディネートをしていた。
「似合うな……そういうの」
「え?あ、ありがとうございます。桐生君も似合ってますよ」
「あ、そうか……?」
車内は人がとても多く、ぎゅうぎゅう詰めに近い形で乗り込んだ。当然座れる席はないため、出入り口付近で揺れに耐えながら二つ先の駅を目指す。
走り出して間もなく、ガタンッと大きく揺れる。
彼女は思わずよろけ、自身の胸元へ身を寄せた。
「おっと」
俺は片方の手で鉄の棒を掴んでいた。そしてもう片方の手で咄嗟に彼女の肩を掴んで受け止めている。
彼女は彼女で掴むものがなかったため、咄嗟の判断で俺の体に抱きついていた。
「あっ!?」
「……大丈夫か?」
「は、はい。……すいません!」
恥ずかしがりながら小声で謝罪する。
「……気にするな」
下心があるわけじゃないし、あんまりそういう目で見たことなかったが、この状況では無視できなかった。
決して小さくはない彼女の胸が。抱きついてきた際に変に意識してしまったというか。
なんとも言えない雰囲気になりながらモノレールを降りる。




