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甘いマスクの裏側

クラスメイト達はそれぞれ食事と会話を楽しんでいた。男子に囲まれていたイヴは、真島が間に入り、なんとか会話しているようだ。


「ちょっとトイレ行ってくるね」


様子の違う塚本に、つい俺は目で追った。


「桐生君?」


「……悪い。ちょっとトイレ行ってくる」


___________________________________________________


レクリエーションルームを抜け、彼の後を追うことにした。


「ん?」


トイレには行かず、彼はエレベーターに乗っていた。俺も別のエレベーターを使い、一階に降りる。


「はぁ」


先に着いていた彼は、

エレベーターホールのソファに座って頭を抱えていた。


明らかに様子が変だったが、一体どうしたのだろう。


「大丈夫か?」


話しかけづらい雰囲気を漂わせていたが、彼に声をかけた。


「あ……桐生君か」


無理しているような笑顔で呼びかけに応じた。


「えと、大丈夫だよ?」


「そうは見えないぞ」


「変に見えてたかな……」


「ああ。だいぶな」


ケーキを見た塚本の顔。

あれは、ただケーキが嫌いという目や表情ではない。なにか別の理由があるはずだ。


「実は僕、誕生日が嫌いなんだ」


「そうか……それでケーキをあんな顔で見てたんだな」


「心配かけたみたいだね。ごめん」


「いや、謝ることじゃないさ。誰にだって嫌なものはある」


「そうだね……」


「……言いたくなかったら良いんだが、何で誕生日が嫌いなんだ?」


彼は深呼吸をし、目を閉じた。


「……僕が六才の誕生日を迎えた日。

ある時、セールスマンが家に来た。何の気無しに出て行った母は突然、腹部を刺され、そのまま死亡。

戻りが遅いから様子を見に行くと、そこには血だらけで動かない母と、刺して手が震えたセールスマン。

奴は僕のことまで手をかける事はせず、そのまま逃走。母子家庭だったからその後は親戚の家でお世話になってたんだ。……ざっくり話したけど、とにかく僕は誕生日が大嫌いなんだよね」


「そうか……思い出させて悪いな」


想定よりも重い話に気分が沈む。


「ううん。大丈夫。そのうち皆に話すつもりだったから」


「そうか。……ぶり返して申し訳ないが、その犯人はどうしたんだ?」


事の顛末が気になり、悪いと思いながらも聞いた。



「それなら……僕が殺したよ」


彼は目を見開いて答えた。

まるで別人のようだ。

六才で……殺人、か。


「そうか……」


「じゃあ、そろそろ戻ろうか」


「ああ」


その犯人が死んでいるのなら、彼は一体何を願うのだろう。母の蘇生……とかか?


心の中で憶測を立てるが、これ以上聞くのをやめ、二人でレクリエーションルームに戻った。



「あっ!塚本君ー!どこ行ってたのー?」


「ごめんごめん。トイレだよ」


「さ、こっちで食べよう!」


「あ、うん」


同時に戻った俺は、塚本がクラスメイトに引っ張られていくのを見送る。


そして塚本は、ケーキが切り分けられた皿を受け取っていた。表情はやはり曇っている。


ケーキが嫌いな理由を知ってしまったが、中々助けに入れるような雰囲気ではない。

向こうもわざとケーキを用意したわけじゃないしな。


そんなことを考えている俺は塚本と目が合う。


ニコッと小さく笑みを浮かべ、大丈夫だと

こちらに言っているようだった。


それから再び久保田と過ごし、約二時間ほどして解散。


あまり多くの交友関係は築けなかったが、久保田とはかなり会話ができた。

それに久保田とは連絡先も交換した。


俺的には上出来だと思う。


しかもクラス全体のグループチャットにも参加した。自分から何かを発信することはないだろう。





そして部屋に戻り、入学から現在までをざっくり振り返る。


イカれた学校の姿を知り、クラス内での抗争。

部屋のガラスに現れた不思議な校長。

それから死者を出した交流会。

授業開始初日から退学者を出し、

そして今日、

クラスメイトの狂気を知った。



一見普通の男の子にみえる塚本に、あんな暗い過去があるとはな。

それに、ルールの穴を突いて生徒を殺し、金を奪ったあの厳つい男子生徒。


この学校は色々と変だな。


気になる疑問はわりとあるし、先生にでも聞いてみるか。


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