授与と処分と誘い
「よっしゃあ!!」
「塚本君!カッコいい〜!!」
「ナイスファイトー!!」
クラスメイトから称賛の嵐。黒鉄は喜びつつ
塚本に駆け寄っていった。
「なんとか終わりましたね」
「……ああ」
「さて、君達A組には約束どおり一万円を進呈しよう!おめでとう!!」
クラスメイトは大いに盛り上がりを見せる。B組との温度差がすごい。
「B組の皆、非常に残念ながら誰か一人退学してもらう。……決めるのは君達だ。チャイムギリギリまで考えてくれ」
「いえ、もう答えは出てます」
女子生徒がそう答える。
静けさに包まれたB組は徐々にざわつく。
「三浦くん。あなたよ」
彼女は指を差す。
指名されたのは気弱そうな男子生徒。動揺しているのか震えていた。
「ぼ、僕……です、か?」
目を見開き、震えた声で問う。
「ええ、あなたよ。……そんなビクビクしている子、私達のクラスにはいらないのよ」
指を差していた女子生徒が非情に告げる。
ここの空気は最悪だ。
「そ……んな……そ」
「三浦。……お疲れ様」
先生が三浦の肩をポンポンっと叩く。
「ふ……」
「ん?どうした?」
三浦が何かを言っている。しかし、聞こえない。
「ふざけるなぁぁっ!!!!」
いきなり叫び、先生に向かって拳を振るった。
「う……あぁ!!」
「悪いなぁ三浦。お前はもううちの生徒じゃない。今の立場は学校の侵入者みたいなもんだ。だから手を出させてもらった」
攻撃を避けた先生は、三浦の腹部に一発カウンター。そして腹を押さえて悶絶している彼に、手を出した理由を述べた。
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その後、塚本と藍沢は病院に運ばれ、
俺達は放課後を迎える。
クラスメイトの半数はお見舞いに行くと言い、
すぐに教室を飛び出していった。
そんなに行っても迷惑な気が……。
「イヴちん!今日遊びに行かない?」
「ごめんなさい。今日は用事がありますので……」
「ちぇ〜。そっか!りょーかい。また明日ね!」
真島は早々に立ち去る。
「……ふわぁ」
「お疲れ様です」
あくびをしてのびていた俺にイヴが話しかけてきた。
「あの……このあと空いてますか?」
突然の誘いに俺は驚く。彼女さっき、用事があるって言ってなかったか……?
「あ、ああ。まあ、空いてるが?」
「本当ですか?……それなら、お茶でもしませんか?」
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彼女と共に学校近くにあるカフェに寄った。
注文し、見晴らしのいい席に向かい合って座る。
「へぇ。いい所だな」
この街に来てからロクに外食なんてしてこなかった。そんな俺には新鮮でしかない。
「ですよね。昨日美花ちゃんに連れてきてもらって、また行きたいなって思いまして」
「だったら真島を連れてこればよかったんじゃ?それにここに彼女が来ている可能性もあると思うが」
「今日は二人でお話したかったんです。それと、美花ちゃんはそういうの気にしないタイプなので大丈夫だと思いますよ」
「そうか。それで…………何の話だ?」
「今日の代表戦、影の立役者は桐生君ですよね?」
「…………」
彼女が何故それを知ったのか分からないが、たしかに俺は代表戦に介入していた。
「なんで俺だと思うんだ?」
「体操服のポケットから塵?みたいものが出てましたよ?それが意志を持って動いてましたし。何かやっているんだろうなって」
「よく見てたな……」
「目は良いほうなんですよ」
「そうか」
「それでお話っていうのは桐生君が何をやっていたのか聞きたかったんです。美花ちゃんを誘わなかったのは、できるだけ目立ちたくないだろうなと思いまして」
「面白い話でもないが……」
「お願いします」
「この学校はルールがざっくりしていて、どこかに穴があるんだ。今回の代表戦にもそれがあった。先生は代表者を一人決めて、お互いに異能力ありでの真剣勝負。そして殺すのはナシ。そう言っていたよな」
「はい」
ここで一度、注文した砂糖の入ったコーヒーを一口飲む。
「殺すのはナシと言われているが、観客の妨害行為については何も言っていない。
まあ、常識的に考えて真剣勝負に水を差すのは駄目だ。でも、捉え方を変えれば、バレなきゃやってもいいってことになる」
「なるほど」
「代表戦のルールを聞き、話し合いで塚本が代表者に決まったあと、俺はトイレに行くと言って場を離れた。その間にグラウンドへ行き、砂という砂をポケットに詰め込んだ」
「あれは砂だったんですね」
「ああ。そして代表戦が始まり、さり気なく介入しようとも考えたが、最初は流れに身を任せていた。二人の能力が分かり、塚本が苦戦していたころ、俺は一つ疑問を抱く。それは藍沢の持つ能力の事だ。あの能力は普段から鍛えてなければまともに動けない。そういった類の能力。
俺と同じようにバレなきゃいいを実行しようと、藍沢を影から支援する奴がいるんじゃないかと踏んだ」
「俺は向こうの客席を凝視した。そして一人、戦っているフィールドの方に向けて両手をかざしている、明らかに怪しい生徒を発見。俺はその生徒めがけてポケットに詰め込んだ砂を能力で徐々に飛ばした。すぐさまその生徒の目に向かって砂粒を浴びせ、集中力を切らせることに成功。その瞬間、藍沢の動きに変化が訪れ、奴は突然の負荷に耐えきれなくなって倒れた。
おそらく移動能力の補正でもおこなっていたんだろうな。……長々喋って悪い。こんな感じだ」
「ありがとうございます。なんか凄いですね」
彼女は迷惑にならないよう小さく拍手した。
「…………」
俺はこのとき、先の学校生活が不安になっていた。B組の男子生徒が無慈悲に退学を告げられていたあの光景を見てしまったからだろう。
クラスメイトの誰かが退学するところなんて見たくない。俺は強く思った。




