手段
「速いな」
金髪であの後ろ姿。間違いない。あれは黒鉄だ。
それにしても足が速い。
風を纏って移動速度を上げているのでなんとかついていけている。
「ん?」
彼は走り疲れたのか速度を落とし、公園のベンチに座り込んでいた。
「クソっ!なんでだよ!」
何かに対し怒りを露わにした。
「誰だっ!?」
俺の気配を感じ振り返ってきた。
「悪い。コソコソするつもりはなかったんだ。
……俺は桐生颯斗。お前と同じクラスだ」
「……何の用だ?」
「何で飛び出して行ったのか気になってな」
「わざわざ追ってきたのか!?まあいいや。
……元々来る気なんてなかった。塚本にどうしてもって言われたからきたんだ。けど、あんなザマでクラスにも塚本にも迷惑かけておいてさ、しれっと来る方がおかしいだろ?」
なるほど。確かにしれっと来る方がおかしい。
「そうだな。じゃあ、」
「うわあぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
突然、断末魔のような声が公園に響いてきた。ここから近い。
「なんだ今の!?」
黒鉄は一目散に飛び出し、声の方に向かった。
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裏路地の奥に進むと、争った形跡があり、更に奥へ進むと、痣が至る所についた一人の男子生徒が倒れていた。
「う、う」
「おい!大丈夫か!?」
俺は物陰から見ているが、黒鉄は突っ込んでいった。
「……おいおい、テメェが叫ぶから余計なのが来ちまったじゃねぇか!」
コイツは以前にも見かけた厳つい男子生徒だ。また戦っていたのか。
「お前がやったのか!」
「だったらなんだ?」
「やりすぎだ!殺すつもりかっ!!」
「ああ、そのつもりだ。つーかソイツ……もう終わるぞ」
「た、助け…………ぶうぇぇぇっ!!」
いきなり嘔吐し、緑の吐瀉物を出した。
「なんだよ……これ」
吐いた男子生徒はピクリともせず、固まってい
る。
______彼は死んだ。
「ふはははは!!こいつは傑作だな。なんて面で死んでやがる!」
死人を指差し、爆笑している。
「……に……ってんだよ」
「あ?」
「何笑ってんだよ!!」
考えもなしに厳つい男に向かって拳を振るった。
「な!?」
「いい拳だな。でも足りねぇ」
手で受け止められ、黒鉄の握り拳を掴んで振り払い、その隙に右ストレートを打った。
「ぐぁっ!!」
「大丈夫か?」
受け身を取れなさそうだったので咄嗟に黒鉄を支えにいった。
「桐生……」
「なんだ……もう一人いたのか。まあいい、お前たちはまた今度に取っておくぜ」
そう言うと、奴は自身のスマホを操作しながらその場を後にしようと歩き出す。
「待てっ……!!」
「担任から聞いてるだろ?手段は問わないってよ。なら、一般人にバレずぶち殺してもいいってことだよな!」
「そんな……こと」
「…………」
______手段は問わない。
やはりそうなるか。
もちろん、学校関係者以外にバレたらアウトだが、逆に言えばそれくらいしか注意する点がない。
「ま、普通の学校生活が送りたかったら、こんなところ去るんだな」
「お前!!」
「よせ、これ以上のゴタゴタは御免だ」
彼の手を掴み、なんとか押さえた。
「でもよ……」
「落ち着け」
「お前はなんで……そんな冷静なんだ!」
「いいや、冷静じゃないさ。俺だって動揺してる」
黒鉄を落ち着かせていると、作業服を着た大人が複数人来た。
「黒百合学校の者だ。君達は速やかに帰りなさい」
「……分かりました」
処理班がいるのか。
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現場を離れ、先程までいた公園に戻った。
「…………」
ベンチに座り、俯いている。
「あんなのありかよ……」
「この学校は甘くないってことだな」
「…………俺、どうすればいいんだ?金もないし、クラスにも塚本にも迷惑かけたし。ドン底だ!なんなんだよ!!」
「お前も叶えたい願いがあるんだろ?」
「……ああ。あるよ。でももう無理だろ」
「じゃ、まずは謝罪だな」
「謝罪?」
「クラスメイトの事を考えて日村に怒ったのは分かる。お前のプライドも大事だが、この先もずっと一緒にやっていく仲間だ。明日にでもちゃんと謝罪をしたほうがいいぞ。もちろん、日村にじゃない。お前のことを心配して止めようとしてたやつが何人もいるだろ?それに、人を殺さなくたっていくらでもやりようはある」
「そう、だな……ほんとにバカだな、俺。勝手に突っ込んでいって、結果やられてさ。恥ずかしくて皆の前に出るのも怖くなってって…………ダサすぎるよな」
泣きながら自身の現状を語った。
そして頭を掻きむしり、あぁっ!!と一声叫んだ。自身に対しての怒りをぶつけたのだろう。
「俺はこんなところで立ち止まりたくない。願いを叶えるために。人としての真っ当な手段で必ず卒業してやる!」
拳を天に掲げ、涙声のまま意思表明をおこなった。
「……ありがとな桐生。お前いいヤツだな」
「……そうでもないさ」
______お前が思ってるより、俺は悪いやつだ。
変な形ではあるが、俺に新たな友人が出来た。
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週末を挟み、彼は朝のホームルームの時間を使って皆の前に立った。
「俺の身勝手な行動のせいで、クラスのみんな、それと塚本に多大な迷惑をかけてしまいました。……俺を止めてくれようとしてた人もいたっていうのに、本当に俺はバカです。…………本当に申し訳ありませんでした!!」
「皆、このとおりだ。黒鉄君を許してほしい」
頭を下げ続けている黒鉄。それを見て思うところがあるのか、クラスメイトは「頑張ろうぜー!!」や「よろしくなー」といった励ましの声が響いた。
「ちぇっ。面白くないなぁ」
日村は相変わらずああだが、
これで一応、一件落着だ。




