告知
______不思議な校長との邂逅をしたその翌日。
そういえば、黒鉄は大丈夫だろうか。
まだ教室には来ていない。そろそろホームルームの時間だが……。
「おはよう。えと、桐生君」
こちらに話しかけてきたのは、特徴的な低音ボイスを持つ男子生徒だ。
名前は久保田弘樹。俺の前の席に座っているご近所さんだ。昨日はなんだかんだあって結局喋りかけられなかった。まさか向こうから来るとは。
「ああ、よろしくな。久保田」
「あの、君ってどんな能力持ってるの?」
「そよ風を吹かせる程度の能力だ。……学生証は見せないでおくぞ」
詳しくは説明せず、弱い能力だとアピールした。
「へぇ。風の能力者なんだ。良いなぁ」
「そういうお前は?」
「僕は声を使って辺りを振動をさせる能力だよ」
俺とは違い、気軽に学生証を見せてくれた。
●「雑音振動」(ノイズウェーブ)
口から出す唸り声や叫び声を発し、強力な振動を起こす能力。
範囲は狭いが、威力は高い。
弱点は喉に負担がかかること。使いすぎると
声がかすれ、しばらく使えなくなる。
元より野太い声らしく、異能力とのシナジーは抜群とのこと。
使い所を誤なければかなり便利な能力だ。
「へぇ、中々おもしろい能力だね?」
久保田の背後からふらっと現れたのは、
問題児こと日村だ。
絡まれてる久保田を可哀想にと思い、まわりのクラスメイトはじっと見ている。
「う、うん。あ、ありがとう」
「まあ、せいぜいクラスのために役立ってくれよ?どこかのおバカさんみたいにならないようにね」
「……う、うん」
いない黒鉄を煽り、口笛を吹きながら席に座った。
塚本もそんな日村を見ているが、拳を握ってグッとこらえているのが見て取れる。
______ホームルーム
「はーい。皆さんおはようございま〜す」
先生はクラスの現状をまるで知らないかのように
普段と変わらず挨拶してきた。
「あ、ちなみに今日は黒鉄君お休みだそうです」
思ったより酷い怪我だったのか。
______それとも……。
「あれー?そんなにボコった記憶ないんだけどなぁ」
またもいない黒鉄のことを煽りだした。
しつこいやつは嫌いとか言ってたが、こいつも十分しつこい。
しかし現在、黒鉄のような注意喚起をする生徒はいない。本当はシバきたいが、こいつの挑発に乗るだけ損をする。そうみんな思っているからだろう。
決闘に持ち込まれ、負ければマネー没収or退学だもんな。もちろん、こちらが勝てば彼を追放することも可能だろう。だが、能力なしでも強いのは昨日の決闘で判明している。
奴の手綱を握れるほどの実力者がいればなんとかなりそうなもんだが……。
「はーいそこまで!
それより……あなたたちに告知がありま〜す」
告知?なんだ。
「今週の金曜日に一学年だけの交流会をおこないまーす」
明後日か。自分たちのクラスでさえ、まともに喋れる奴はまだ少ないというのに、他クラスとの交流と言われてもな……。
強制参加ではないが、出なければきっと振り込まれるマネーに影響が及びそうだ。
出るだけ出て適当に隅っこで飯でもつまんでおこう。
あとからでも他クラスの情報は収集できるしな。
「ちなみに明日は体力テストと身体測定でーす。体操服での登校をお願いしまーす」
体力テストに身体測定か。面倒だな。
今日はまだ授業がなく、各教科の教科書を受け取って終わった。
「塚本君、このあと職員室まで来てくれるかしらー?」
「はい!分かりました」
「ねぇ、アイツ逃げたんじゃねぇの?」
「それはないだろ」
「どうだろうな、負けて金もなくなれば逃げたくなるだろ?俺だったら恥ずかしくて出てこれねぇよ!」
「こらこら、そんなこと言わないであげてよ」
ぼやく男子生徒達を注意する塚本。
「塚本……」
「いやでもさ、ぶっちゃけ塚本はどうなん?お前も金無いわけだし、アイツ助けたこと後悔してるんじゃないの?」
「後悔はしていないよ。……もちろん、このままでは良くないと思ってる。彼には来てもらわないとね」
「尊敬するわお前のこと。俺だったら耐えられないしな」
「俺も!」
「塚本君はあんた達と違って優しいの!」
「そうそう!」
「んだよ!割り込んでくんじゃねぇ!」
「はあ?」
塚本によく寄っていく女子生徒達が割り込み、
ピリピリとした雰囲気になっている。
「僕、先生に呼ばれてるから先に行くね」
苦笑いでこの場を脱し、教室を出ていった。
「おーう」
「またなー」
「私達もついてくー!」
「待って〜!!」
黒鉄はいつ来るのだろうか。
仮に来たところで居づらいだろうな。




