eスポーツのスポンサー
世界中で近年、『eスポーツ』が盛んに行われている。対戦ゲームによって、勝敗を競うのだ。
ゲームの種類には色々あって、そんな中に今年、『野球』のゲームが加わった。
で、さっそく公式大会の開催が決まる。
――ゲームで目指せ、日本一!
――さあ、君の「プレーボール」を、世界中が待っている。
公式大会は一チーム五人で、その内の三人が相手チームと対戦する、という方式だ。
大会には続々と、参加希望が集まってくる。すごい、すごい。予想を上回る数だ。
そんなわけで、ものすごい数のチームが参加することになったが、たぶん大丈夫だろう。予選でチーム数を、大きく減らせばいいのだ。
それに、いくら参加チームが多いと言っても、こっちには大手スポンサーがついていることだし、予算は十分にある。
だから、何の問題もない!
「・・・・・・そう思っていた頃が、私たちにもあったな」
大会運営委員会の一人がつぶやくと、残りの全員がため息をついた。
会議室ではテレビがついている。さっきからずっとニュースを流していた。ある大会社による「不祥事」のニュースだ。
困ったことに、不祥事を起こした「この会社」こそ、公式大会のスポンサーである。
いや、正確には「元スポンサー」か。つい先ほど、「スポンサーを降りる」と電話で伝えてきた。
「代わりのスポンサーを紹介する、とは言っていたけれど・・・・・・」
スポンサーからのお金がなければ、大会を中止するしかない。
そんな中、代わりのスポンサーが見つかった、と連絡が入る。
大会運営委員会はホッとした。
で、二か月後、大会の予選が行われる。
その会場はなぜか陸上競技場だ。『eスポーツ』の大会を行う場所としては、異例中の異例。『野球』のゲームだから、『野球場』とかならわかるけど・・・・・・。
集まった参加者たちを前にして、運営委員会の一人が告げる。
「予選は『持久走』です。各チームの代表者一名に十キロ走ってもらい、タイムの速かった六十四名が予選通過になります」
予想外のことに、参加者たちはざわついた。ゲームの腕に自信はあっても、走りは別分野だ。
予選がこうなったのには、理由がある。
新たなスポンサーが、マラソンのスニーカーなどをつくっている会社なのだ。その会社からの要望に応えて、この形になった。
で、翌年になる。
今年もスポンサーの変更があった。新しいスポンサーは、カレーの大手チェーンだ。
昨年のことがあるだけに、参加者たちは予想し合う。今年の予選はどうなるのか。
会場は前年と同じ陸上競技場だ。ゲームをやるのではなさそう。
「だったら、『カレーの大食い競争』とかじゃないのか?」
そんな意見が多数を占め、大食いの特訓をする者たちが続出した。
そして、予選当日。
集まった参加者たちを前にして、運営委員会の一人が告げる。
「予選は今年も『持久走』です。各チームの代表者一名に十キロ走ってもらい、タイムの速かった六十四名が予選通過になります」
運営委員会は考えたのだ。
スポンサーは変わったけれど、特に口出ししてこないし、予選は去年と同じでいいだろう。何だかんだ言って、そこそこ盛り上がっていたみたいだし。
「なるほど。そうきたか」
参加者たちもバカではない。こうなる可能性も考えていた。
だから当然、対策を用意している。
この大会は一チーム五人で、その内の三人が対戦する方式だ。
つまり、二人は補欠。実際にゲームをしなくてもいい。
そんなわけで多くのチームが、
「頼むぞ!」
陸上のスペシャリストをメンバーに加えていた。もちろん代表者として走ってもらう。
すぐに予選が始まった。
その様子を見ながら、運営委員会の者たち数人が「こそこそ話」をする。
「良いことなのか、悪いことなのか、今年の予選は非常にレベルが高いな」
「ですね」
「ですね、じゃない。さすがに、あれは駄目だろ」
「私の予想だと、今走っている人たち、決勝トーナメントで誰もゲームのコントローラーを握らないと思う。全員補欠」
「それはそれで、まずいかもな」
「じゃあ、来年は全員参加のリレーにでもする?」
「まあ、そこはスポンサー次第になるかと」
これなら、「全員参加のカレーの大食いの方が良かったかも・・・・・・」などと考える大会運営委員会だった。
次が最終回です。




