娘からのプレゼント
母の日だからと、娘が母親にプレゼントをした。
プレゼントは野球のボールだ。カーネーションのイラストと、「いつもありがとう」のメッセージが、ボールの表面に書いてある。五歳の子にしては上手だと思う。
そんなボールが、紙袋の中にいっぱいだ。これ全部にイラストとメッセージを書くのは、とても大変だっただろう。
(そっか、今日は母の日か)
そのことを母親は忘れていた。
しばらく考えごとをしてから、紙袋の中のボールを一つだけ取り出す。
「ちょっと出かけてくるから」
娘に留守番を頼むと、紙袋の方を持って、どこかへと向かう。
この母親、現役のプロ野球選手だ。女子野球界の名選手。
そして、その母親も元プロ野球選手だ。近所に住んでいて、そこが今回の目的地である。
「母の日だから、って」
そう言うと母親は、自分の母親に紙袋を渡した。紙袋の中には、野球のボールがいっぱいだ。
「まあ、ありがとう」
このあと、彼女も同じようにする。自分の分として、ボールを一つだけ取り出した。
で、その紙袋を持って、自分の母親を訪ねる。
「母の日だから、って」
「まあ、ありがとう」
このあと、彼女も同じようにする。何代にもわたって、女子プロ野球の選手を輩出してきた家系なのだ。
今は西暦三〇〇〇年。
人類の平均寿命は、五〇〇歳を突破している。
次回は「唐揚げ」が出てきます。




