応援は風とともに
高校時代にチアリーダー部だった私は、その衣装を着て、自分ちのテレビをつける。今日のために、前もって仕立て直していたので、衣装がきつく感じることはない。
久しぶりの格好になったのには、理由がある。
母校の野球部が、夏の地方予選を勝ち抜いたのだ。これから全国大会の初戦を迎える。ここはOGとして、ぜひとも応援しなければ。
チアリーダーが手に持つ『ポンポン』も、あらかじめ自作してある。
それではさっそく、
「ふれーふれー、ぼ・こ・う♪ ふれーふれー、ぼ・こ・う♪」
しばらく応援していて、ふと思った。
一人だと寂しい。
高校時代の仲間を誰か誘うべきだったと、今さらながら後悔する。そもそも、チアリーディングは普通、複数でやるものだし・・・・・・。
テレビ画面には時折、後輩のチアリーダーたちが映っている。
今の応援は、こんな感じに変わっているのか。私の時とは全然違うぞ。
しかも、テレビの向こう側には大勢いるけれど、この部屋にいるのは私一人だ。寂しくないわけがない。
そこで、あるアイデアを思いつく。すぐさま試してみることにした。
小さなポンポンを大量生産する。手のひらサイズのポンポンだ。
さらに扇風機を運んでくる。そのお顔の部分に、量産したポンポンをたこ糸で結びつけていった。
最後に扇風機のスイッチをオンにすれば・・・・・・
「みんな出番だよ、風力最大!」
小さなポンポンが風になびく、という寸法だ。
名付けて『インスタント・チアリーダーズ』。強烈な風を受けて、小さな『チアリーダーズ』が応援を開始した。
では気を取り直して、私も応援を再開する。
「ふれーふれー、ぼ・こ・う♪ ふれーふれー、ぼ・こ・う♪」
私の高校時代、うちの学校の運動部はどこも弱小だった。全国大会で応援するなんて、夢のまた夢だった。
それが少し形を変えて、今こうして現実になっている。
試合は白熱した展開になった。
私は全力で応援する。
そして、最終的に母校は勝った。一回戦を突破して、二回戦へと進む。後輩たちよ、よくやった。
体力を使い果たした私は、勝利の余韻にひたりつつ、床に大の字でぶっ倒れた。
その横では、扇風機が風力最大の状態を維持している。
小さなポンポンたちが風の中で揺れていた。
それはまるで、がんばった私を応援してくれているみたいだった。
次回は「試合時間を短縮しようとする」お話です。




