華やかな球場
プロ野球の春季キャンプが始まった。
キャンプ地は宮崎や沖縄だ。遠方から来るファンの中には、熱中症になる人もいる。二月とはいえ、思っていた以上に日差しが強いのだ。
そこで各キャンプ地では、熱中症対策を呼びかけている。
そんな中、ある球団が変わった取り組みを始めた。
選手たちを乗せたバスが朝、キャンプ地の球場に到着する。
早起きして集まったファンは、バスから降りてきた選手たちの姿に驚いた。
全員が異なる帽子をかぶっているのだ。いつもの野球帽ではない。シルクハットや麦わら帽子、ベレー帽、チロリアンハット、ナポレオンハット、テンガロンハットなど、その種類は豊富だ。
ファンの視線はおのずと、選手たちの頭部に集中する。派手な色の帽子が多いようだ。
すると、彼らが笑顔で告げてくる。
「屋外では熱中症対策に、通気性の良い帽子を」
帽子をかぶることで、「頭を直射日光から守る」というのは、熱中症対策の一つだ。
熱中症の危険性をただ言葉でアナウンスするだけでなく、視覚的にも印象に残る形で、対策をアピールできないか。
そのように考えた球団は、「選手たちにさまざまな帽子をかぶってもらう」ことにしたのである。
といっても、練習時間の大半は、いつもの野球帽に戻すのだけど。
これに対して、大きな反響があった。
この球団では今年から、キャンプ地の球場そばに、「通気性の良い素材を使った帽子の専門店」を出していたのだが、ここが予想以上の売上を記録したのだ。
帽子をかぶる、というところを出発点にして、他の熱中症対策にも関心が集まる。
おかげで、このキャンプ地では熱中症になるファンが、例年よりも大幅に減った。
すぐに他球団も追随する。おしゃれな帽子をかぶって、各球団の選手たちは練習するようになった。
普段と違う選手たちの姿に、ファンのテンションは上がる。この興奮を他の人にも伝えたい。選手たちの写真を撮って自分のブログに掲載する、というファンが続出した。
それらの写真が、外国人の目にも留まる。
その中には大手新聞社の記者もいて、
――日本では、野球場でファッションショーを開催している。
そんな記事が紙面を飾った。添えられている写真は、紅白戦の様子だ。さまざまな帽子をかぶった選手たちが、野球の試合をしている。
この記事が出た直後から、日本プロ野球の運営本部に問い合わせが殺到した。
世界中の帽子メーカーから、ファッションショーの問い合わせや、スポンサー契約の問い合わせだ。
こうして日本のプロ野球は、「世界で一番、帽子の華やかなスポーツ」になっていくのである。
次回は「祝勝会」のお話です。




