#582 「……俺無罪だろ?」
「またなんというか……凄いの連れてきたわね」
「ふーん……」
「ギギギ……」
メイド達をブラックロータスに連れて帰ったら嫁達――特にセレナとクリス――の視線がなんか痛いんですけど。俺がこの三人選んだわけじゃねーし。そもそも今後を考えてメイドロイドを増やすってのは話し合って決めたよな? なんで俺が針の筵に上に座っている様な思いをしなきゃならんのだ?
「何か言いたいことがあるならはっきり言うと良いぞ。正面から受けて立つから」
「個性的なのを連れてきたなぁと思っただけよ。ほら、前にシエラⅢのリゾートで働いてたメイドロイドは皆整った顔立ちだったけど、ここまで個性的ではなかったじゃない?」
「誤解のないように言っておくが、俺は彼女達の機体デザインに一切関与してないからな。個性的な外観についてはメイか彼女達自信の趣味か、製造元の思惑か何かだぞ」
そう言いつつメイド達に視線を向けると、三者三様の答えが返ってきた。
「私はメイド長から頂いたご主人様の嗜好と、市場データを検証してボディを作成しました」
「イコはうちの会社の新型機構を搭載したボディを選んだだけだよ。この頭の上のパーツは高感度パッシブセンサーをいくつも詰め込んだもので、この尻尾は運動性の向上と格闘戦の補助をするパーツなんだよ!」
「あーしのはあーしの趣味ひゃくぱーでーす。自由裁量権の範囲が広かったんで選びほーだいだったんだよねー。あ、でもあーしもイコちゃんもごしゅの嗜好データは一応参考にしてるよー」
ニーナはにっこり笑顔、イコは尻尾をふりふり、そしてサトミはばっちりとウィンクと横ピースをキメてのことである。
「……俺無罪だろ?」
「……まぁ、そうね。どちらかと言うと被害者かもしれないわね」
エルマが頭の痛そうな顔をしながら同意してくれる。俺の性癖が勝手に開陳されているようなものだからな、これ。確かに全員可愛いとは思うけれども。どうせなら可愛い方が良いとも思うけれども。
「良いですね、サトミさんのセンス」
「おー、ミミちゃんもキマってるねー。そういう方向でもよかったかもー?」
「……破廉恥では?」
早速ミミとサトミが意気投合してるし、その横でルシアが破廉恥では? とか言いながら明らかに興味を持っている様子である。おい近衛、今すぐ止めろ。このままだと露出過多気味サイバーパンクファッション皇女殿下とかサイバーギャル風ファッション皇女殿下とかが爆誕しかねんぞ。
「ふむ、ケモミミっぽいパーツに高感度のユニバーサルセンサーを搭載かぁ……悪ぅないな」
「この尻尾、バランサーにもなってるみたいだね。結構な重さだよ。振り回されたこれが当たったら痛いじゃ済まないんじゃないかなぁ……」
「耳と尻尾……此の身もありますよ!」
「わーい、けもみみしっぽふれんずー!」
あっちではイコの身体を怪しげな機器を手にしたティーナとウィスカが調べていて、更に獣耳と尻尾がついた仲間が増えたのが嬉しいのかクギがはしゃいでいる。あとイコ、その発言は微妙に危険な気がするからやめような。
「うーん、これはなかなか……重さや質感だけでなく、体温もちゃんと感じられるのか。オリエント・インダストリーは良い仕事をしているね。生体パーツというわけではないんだよね?」
「でかい……私の胸もこういう感じにならないかい? ドクター」
「あ、あの……流石に触られるとですね」
ニーナがショーコ先生とネーヴェに乳を揉まれている。それは流石に女性同士でもセクハラと違うか? あとネーヴェがそのレベルのおっぱいになったら歩くのもしんどくなりそうだから、できたとしてもやめなさい。トップヘビーってレベルじゃないぞ。
「ヒロはこうやって回りに女の子を増やしていくというわけね。実際に目の当たりにして納得したわ」
「私もあれくらい……身長はそんなには変わらないから、きっと不可能では……」
「みんなで決めたじゃん……俺悪くないじゃん……あとクリス、俺はクリスのおっぱいも大好きだから落ち着こう」
大きければ良いってものでもないからな。バランスっていうのは大事だ。え? じゃあニーナの乳の大きさに感じるものは何も無いのかって? それはな、うん。大きいのにも小さいのにもそれぞれ魅力があるってことだよ。女性の魅力は乳だけで語り尽くせるものじゃないしな。
「新しいメイドさん達との交流も良いんだが、バカンス先の選定はできたのか?」
「あ、はい! それは問題なくできましたよ! ミロさんに貰った割引クーポンも使えたので!」
サトミとのファッション談義に花を咲かせていたミミが何やら華やかな画像が表示されているタブレット端末を両手で掲げてアピールする。
てってって、と軽やかに俺のもとに駆けてきたミミからタブレット端末を受け取り、その内容を確認する。今回もまた滞在先にはシエラⅢを選んだようだ。シエラⅢにはミロもいるし、前回の滞在も素晴らしいものだったから、リピートするのは妥当だな。
で、今回はほぼ赤道直下に位置する前回よりは少し大きめの島を貸し切るらしい。シエラⅢに存在する物資集積拠点に近い場所で、その物資集積拠点に建造されている総合港湾施設にブラックロータスとアントリオンを駐機し、そこからクリシュナとモリガンで現地に移動する予定だとか。
「クリシュナはともかく、モリガンも使うのか」
「流石に定員オーバーというか、みっちみちになりそうですから……本来五人乗りですからね、クリシュナは」
「ニーナ達も入れると十九人だもんな……クリシュナだけじゃそりゃ無理か」
俺、ミミ、エルマ、セレナ、クリス、ティーナとウィスカ、クギ、ショーコ先生にネーヴェ、ルシアとイゾルデにまだ名前を教えてもらっていない近衛騎士三名、更にメイとメイド三人、合わせて十八人もの大人数をクリシュナに詰め込むのはちょっと遠慮したい。重量的には問題ないし、寝室や貨物スペースも使えば乗れないことはないけれども。短時間なら生命維持装置方面の問題もないだろう。
でもなぁ、今はルシアがいるしなぁ……本人はそれはそれで楽しみそうではあるんだが、安牌を切っておきたい気持ちはわかる。あとまぁ、暑苦しいだろうしな。いくら俺以外全員女性だとしても。
「しかしまた高く付きそうな……ん? もう支払い済みなのか?」
プランの内容をチェックしていると、既に支払いを終えて現地の施設が準備を開始しているという表示が目に入った。どっちにしろ俺もこのプランにするつもりだから良いんだが、この金額を動かすのに俺の許可もメイのチェックも入れてないってのは珍しいな。
「そこは帝室からの祝儀ということで。ご心配なく」
ルシアが胸を張ってドヤ顔をする。いや、良いんだけどさ。この上なくロイヤルな血筋としてその俗っぽいドヤ顔は良いのか? もっとお優雅でなくてはならないのでは? 今更だが。
「えぇ……? なんか恩に着せられそうでヤダなぁ」
「そんなケチなことは言いませんよ。お忍びとはいえ、帝室の者がみだりに特定の貴族家に借りを作るわけにはいかないので、ここは受け取って下さい」
「こんなことでも政治力学が働くのめんどくさ……まぁそういうことならありがたく受け取るけども」
「というか、ヒロの個人的な財布から出させるようなことはしませんよ?」
「そうですね。ダレインワルド伯爵家から予算を出しますね。新婚旅行の費用を名誉子爵とはいえ元平民の入り婿に全額出させた、なんて話が露見したら、ダレインワルド伯爵家はそこまで困窮してるんですか? とか他の貴族家に言われてしまいますよ」
「ワァ……なんというかこう、考え方が異次元だぁ……」
別にマッチョイズムとか女は三歩後ろをついてこい、みたいな考えの持ち主ってわけじゃないんだが、こういうところでは男が金を出すのが甲斐性というのでは? と考えてしまう俺としてはなかなかに新鮮なものの考え方であった。
うーん、なるほど。貴族としての面子の問題かぁ。貴族社会では俺は元平民の弱者、という位置づけであるというわけなんだな。
「えっと、そういうわけで既に宿泊先の確保は完了してますから。向こうの準備が完了次第向かう形になりますね」
「それじゃあそれまではシエラプライムコロニーに滞在か。まぁここは遊ぶ場所にも買い物をする場所にも困らないから、退屈はしないな」
交易・娯楽コロニーなので軍事系物資の取り扱いは殆ど無いが、嗜好品や娯楽品の取り扱いは非常に豊富だ。リゾート惑星での超高級バカンスには手が届かない様な人達がバカンス気分を楽しむための施設も沢山あるし、遊戯施設も多い。高級食材や酒類の取り扱いも豊富だ。何もかも観光地価格ってレベルじゃないのが玉に瑕だが。
「さほど時間はかからないという話ですから、シエラプライムコロニーで買い物とかをするのは帰りのほうが良いと思います。荷物になりますし」
「それもそうか。荷物を置く場所には困らないけど、あっちで必要なものであっちで買えるだろうしな」
以前シエラⅢに滞在した時も借り切った島にショッピングモールがあったりしたしな。そこで色々と買い物をしたのも良い思い出だ。
「それじゃあ楽しみに待つとするか。お、でも船へのオーガニックフードデリバリーサービスとかもあるぞ。今日の夕食はこういうの頼んでみるのもアリじゃないか?」
「うっ、それは興味……ありますね!」
目をキラキラさせるミミと一緒にオーガニックフードデリバリーについて調べ始めたら他の面子もやいのやいのと寄ってきた。待て、この人数でタブレット端末で見るのは無理だから休憩スペースの大型ホロディスプレイで見よう。わかったから! 皆で見るから!




