もう一人の私
ちょっとファンタジックに成ってきました!
でもこれはラブコメです。
ラブコメなはず、です。(毎回言ってる気がする)
「香澄、香澄、大丈夫?」
聞き覚えのある声がした。
見ると、目前に母親の顔があった。
空港のロビー。
天井が見える。
そうか、私は意識を失って倒れた⋯。
「大丈夫」
答えたのは私ではなかった。
もちろん、私もそう答えようとしたが、まだ発していない。
なのに“身体”は勝手に言葉を発していた。
え、なに?
なんで身体が勝手に⋯?
「立てる?」
「うん」
そう言うと、私の身体は身を起こした。
「急に目が回って⋯」
私ではない誰かが、私の身体を使ってそう言った。
何なの?
これは夢?
でも私は、夢ではない事も理解していた。
手足の感覚。
言葉を発する時の喉の振動。
全ていつもと同じ様に感じる。
つまり、これは現実。
ただ、身体を動かす術を私は奪われている。
まるで催眠術に操られて、身体が勝手に動く様な感覚。
“誰なの?! 私から出て行って!”
何度も心の中で叫んだ。
でもそれは言葉に成ることはなく、返事も無い。
人格の分裂とはこう言う事なのだろうか?
ただ一人の観客の様に、身体がする事を“私”は眺めるだけ。
もしかして永遠にこのまま⋯?
私はずっと、私でない誰かがする事を、ただ見せられ続けるのだろうか。
それは⋯地獄でしかない。
“嫌! 嫌! 嫌! どうして?!”
何度も何度も心の中で叫んだ。
それでも何も状況は変わらなかった。
半日程が過ぎた。
“私”、は空港から実家に母親や晴人、七海と戻った。
私が倒れたので、念のため外食はせずに、そのまま実家に向かうことになったから。
実家にもどるまでの間も、私では無い“私”は普通に行動していた。
会話も行動も普段の私らしかった。
もし私が自分で行動できたとしても、同じ事をしただろう。
些細な、例えばドアを開ける時のタイミングまで私と同じ。
それを見て、私は少し考えを改めた。
この身体を動かしているのは、完全な他人では無い。
少なくとも思考や興味等、私と同じでなければ、こうまで私の意識と同じ行動ができるはずがない。
そうなると、やはり私自身の意識が二つに分かれた、と考えるべきなのだろうか。
今、身体を動かし、会話しているのも、もう一人の私なのだろうか?
だとしたら、私はこれからどうすればいい?
考えても答えはでなかった。
更に数時間が過ぎ、“私”は皆より先に寝ることになった。
母親も心配して、明日は医者に行くべきだと言った。
もう一人の“私”は、明日の体調次第で考える、と答えた。
そのままベッドに入り、目を閉じる。
何も見えなくなったが、一向に眠くならない。
やはり身体を動かしているのとは、疲労が違うのかも知れなかった。
そうして暫くの間、今までの事を回想していると、ふわり、と身体が軽くなった。
身体を動かせないのに軽くなった、というのも変な話だが、感覚はずっと繋がっているのだから、そうとしか言えない。
「分からない」
口から言葉が漏れた。
大切な事だからもう一度言う。
口から言葉が漏れた!
つまり、私は自分の身体を再び操れる様に成った!
ベッドから身を起こす。
当然の様に身体が動いた。
ベッドから降り、スリッパを履いて一階のリビングへと向かう。
少しふらついたが、構わず歩いた。
リビングでは晴人と母親、祖母が談笑していた。
晴人は今日はここに泊まるらしい。
「あら、香澄、どうしたの?」
母親がこちらを向いて尋ねた。
「具合、大丈夫?」
晴人も心配そうに言う。
「あのさ⋯変な話なんだけど⋯」
私は現状を伝えることにした。
もしかするとまた、先の状態に戻るかも知れない。
その前に伝えないと。
「空港で倒れてから今まで⋯私じゃない誰かが私の身体を動かしてた」
その言葉にそこにいた全員が、呆気に取られていた。
それはそうだろう。
普通に聞いて理解できる話じゃない。
でも今、言っておかないと。
「私はそれを私の中から見てて⋯これって何だと思う⋯? やっぱり病院⋯」
と、駆け寄ってきた母親が私の顔を覗き込んだ。
「今は?」
「今は私が⋯えと⋯」
「私って?」
「え?」
と、ここで言葉に詰まってしまった。
私は自分をなんと呼べば良いのだろう。
今まで自分は香澄だと思っていた。
でも身体を操っていた方が香澄かも知れない。
いきなり自信が無くなった。
「あなたは⋯香澄、それとも⋯」
優しく私の髪を撫でながら母親は尋ねた。
「ミツキなの?」
「ミツキ、だよ」
勝手に口から言葉が出ていた。
でも、出てみれば、それは私の当然の名前の様にも感じる。
「本当に? 本当にミツキなの?」
尋ねる母親の瞳から涙が溢れた。
ずっと昔に私はそれを見た様な気がした⋯。
「うん⋯」
そう答えた。
「良かった!」
そう言って美月は私を抱きしめた。
少し苦しいけど、温かい。
同時に再び身体の主導権が離れてゆくのを感じた。
彼女が目覚めたのだと理解した。
「あ、あれっ? どうして私リビングに??」
身体を操るもう一人の私、香澄が戸惑った声を上げた。
作者のやる気は イイね や 感想 で出来てます(笑)
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