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消えた亜梨沙

晴人のことで香澄と亜梨沙は仲違いをしてしまった。

「裏切り者〜、不埒者〜、祟ってやるぅ〜」

昼休み、教室の机をくっつけてお弁当を食べている間も、亜梨沙はずっと愚痴を言っていた。


「御免て。亜梨沙の事を騙すつもりじゃなかったんだってば」

「じゃあ、どうしてよ? 裏切り者ぉ」

何度も説得したが、未だに亜梨沙の機嫌は直らない。


「そ、それは⋯私、自分でも気持ちが分からなくて⋯」

「だったら、晴人君、私に譲ってくれても良いじゃない!」

「いや、姉としてそれは許容しかねる」

「なんでよっ!」

「それは、ここでは言いづらいな⋯」

周囲の生徒の耳もある。


亜梨沙の激しい男性関係を知っている姉としては、晴人とはストップをかけざろう得ない。


「晴人君も香澄が良いと言ってるんだ。諦めなよ」

尊が助け舟を出した。


「そーゆー問題じゃない!」

「どう言う問題??」

「女の子のプライドの問題!」

亜梨沙は拳を握りしめて言った。


「あれって、プライドをかける程かなぁ」

晴人を思い浮かべながら私は言った。


こう言ってはなんだが。

そりゃ、私は家族としての愛着もあるから晴人を⋯その⋯気にかけているけれど。


「亜梨沙なら他にいくらでも⋯」

何とかフォローしようと私は言った。


「あーーー! そう言う、勝ち誇った態度、嫌いっ! べーーーだっ!」

それが癇に障ったのか、亜梨沙はアカンべをして教室を出て行ってしまった。


「いや、小学生か」

「亜梨沙、もう授業始まるよ?」

私達の呼びかけを無視して、亜梨沙は廊下を走って行ってしまった。



授業が始まっても、そのまま放課後に成っても亜梨沙は帰って来なかった。

電話にもメールにも反応が無い。


さすがに心配になって、尊と保健室や屋上を探して見たが、居ない。


『ミツキ、亜梨沙の行き先分からない?』

私は困った時のミツキ頼みに出た。

『ちょっと待って⋯学校のセキュリティストレージを検索してみる⋯』

『お願い』

『あった⋯教室を出て三階の廊下を走っている画像を見つけたよ』

『その先は?』

『ごめん、見つからない。でも正門や裏門の監視カメラには映ってない』

『ってことは、まだ校内に居るんだね』

亜梨沙は鞄も教室に置いたままだ。


「手分けして探そう」

「分かった、私は体育館を見てくる」

尊はそう言って校庭に向かった。

私は引き続き、校内を探すことにする。


亜梨沙が走り去った特別教室の方に向う。

途中で幾つか教室の中を見てみたが、誰も居ない。


「亜梨沙、どこいったのよ⋯」

言いながら廊下を歩いていると、何か異様な匂いがする⋯。


「何だろ、変な臭い⋯」

『香澄、これ、なんの臭い⋯?』


感覚を共有するミツキも気が付いた様だ。

実は鞄に付けた小型の熊のぬいぐるみが中継器《リピーター》となって自宅に居るミツキとの常時接続を実現している。

今までの接続より遥かに高速、鮮明だ。

ミツキも感覚共有がより繊細になっている。


「何か魚が腐ってるみたいな臭いだけど⋯」

そう言いながら発生源を探す。


朝の特訓で活性化しているのは体力だけじゃない。

感覚も今までとは段違いに鋭敏になっている。

その感覚を動員して、廊下の突き当たりにある教室にたどり着く。


『歴史資料室』


ドアの上のプレートにはそう書かれている。

時間は既に放課後だ。

授業をやっている筈はなく、また室内からは特に物音もしない。

私は決意して、ドアを開けてみる事にした。


「あのー、すみません。どなたか⋯」

ドアを開け、覗き込んだ資料室の室内はほとんど真っ暗だった。

手前にある机のシルエットが辛うじて見えるだけで、ほぼ完全な闇。


しかも凄まじく臭い。

まるで鼻を殴られている様な感覚になってしまう。


「うわっ! えーと、スイッチは⋯」

言いながら私はその闇に踏み込み、壁のスイッチを探した。


ニュルッ


指先にまるで軟体生物でも触ったような異様な感覚。


「きやっ!」

思わず声を出して手を引っ込めた。

なんだろう?

真っ暗で見えないが、部屋の中に何かが居る。


「な、なに?」

私は電気でできた球を作り、それを宙に浮かせて、教室内に送り込んだ。

懐中電灯の変わりだ。


電球がパチパチと放電する音を響かせながらゆっくり教室内に漂ってゆく。


その光に照らされ、教室の中央に倒れた人影が見えた。

それは⋯。


「亜梨沙?!」


駆け寄ろうとした私を、闇の中から現れた真っ黒で巨大な触手の様な物が弾き飛ばした。


「うあっ!」

まるで教室に入るのを拒むように、私はドアの外まで飛ばされた。


その時、

「香澄、一体? 妙な気配が⋯」

七海が階段を駆け上がり、現れた。


「あ、七海。教室に変な物が」

七海はその暗黒の教室内を見て呟いた。

「歪んだ気配⋯これは⋯?」

作者のやる気は イイね や 感想 で出来てます(笑)

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