おかえり
自分に起きた変化に混乱して、ひとり河川敷に来た香澄。
日が落ちて暗くなった河川敷で一匹の小動物に出会う。
夜の河川敷。
街灯もなく真っ暗な中でスマホのライトを頼りに、帰ろうかと歩き始めた時だった。
こちらに向かってくる小動物を発見し、咄嗟に石を投げた。
コツン、と石が当たる音がすると同時に、
「い、痛い〜! 香澄、なにするの〜!」
と、その小動物は叫んだ。
「しゃ、しゃべった??」
まさかの状況に混乱する。
でもその声には聞き覚えが⋯。
「ミツキ? ミツキなの?」
「そうだよ〜。なんでこんな所に居るの?」
言いながら私の目前に現れたのは、茶色の熊のぬいぐるみだった。
熊のぬいぐるみが、二足歩行して私の前に来た?!
「こ、これ、なに?」
「マテリアルボディ、熊さんMk4、だよ」
言いながらぬいぐるみは腰に手を当てポーズを取る。
「ミツキが操っているの?」
「操るというか⋯中に入っている感じ」
「そうなんだ⋯あ、ごめん。危ない動物かと思って石、投げちゃった」
「痛かったよぅ」
「ホントにごめん! 痛みも感じるって、本当に中に入ってる感じなんだね」
「うん。これ、律斗が作ってくれたんだよ!」
「え、父親が?」
と、遠方からライトを持って歩いてくる人影が見えた。
「ミツキ、そこに居るのか?」
「こっち、こっち~」
ミツキ熊は手を振り、返事をした。
「よくこんな足場が悪い所を⋯」
その人物はそう言いながら近くまで来て、こちらを照らした。
私からも相手の姿が確認できるようになる。
「香澄、こんな所で何しているんだ?」
呆れた様な声。
それは私の実の父親、須藤律斗だった。
「え、うん、それは⋯」
返事をしながらも気まずさがある。
私を藍染の家に預けて、海外を飛び回っている父親。
たまにしか会えないその人に、私はどうしても肉親の情を持つことができなかった。
「とりあえず車に戻ろう」
父親はそう言うとミツキ熊を抱き上げ、先に立ってライトで足元を照らしながら歩き始めた。
別に父親に悪い感情を持っているわけじゃない。
その研究が世の中の役に立っている事も知っているし、たまに帰ってくれば気遣ってもくれる。
ただ、離れている時間が長すぎて、優しいおじさん、以上の気持ちにはなれないのも仕方ない事。
そんな事を考えているうちに、停めてあった父親の車に着いた。
ドアを開け後席に乗った時、今更気が付いた。
「わ、私に触ると⋯あれ」
見てみれば放電が起きない。
「生体発電⋯まさかこんな所に答えが有るとは思わなかった」
父親は溜め息混じりにそう言いながら車を発進させた。
「私の事?」
「ああ。ミツキが近くに居れば、とりあえず放電は大丈夫だろう」
「そうなの?」
私は抱いたミツキ熊を見ながら言った。
「私とのシンクロが繋がっていれば大丈夫だよ」
「?シンクロ? ⋯よくわからないんだけど」
「簡単に言うと、香澄は今までミツキと繫がるために能力を常に使っていただろう? それが切れて、使い道が無くなった電気が溢れ出したって事だ」
父親は前方を見つめ、運転しながらそう言った。
「そ、そうなんだ⋯ふーん」
なぜ私自身よりも父親の方が私の事に詳しいのか。
子供じみているとは思っても、つい反発してしまう。
「律斗、香澄と連絡が取れないって聞いて、滅茶苦茶焦ってたよ」
私の様子を見て、ミツキ熊はそう耳打ちした。
「こ、こら、それは言うなと⋯」
それに慌てる父親。
「聞いてないもーん」
耳を手で塞いで聞こえないポーズを取るミツキ熊。
「だがやはり、最新のボディをアメリカから持ってきたのは正解だったな。ミツキがいなければこれほど早くは探せなかった」
「役に立つって言ったでしょ! 七つの能力で無敵なんだから」
ミツキ熊は自慢げに胸をそらす。
「? 七つの能力って?」
私はミツキ熊に尋ねた。
「えーと、お腹が空くでしょ、ご飯大好きでしょ、撫でると気持ち良いでしょ、抱くと温かいでしょ、嗅覚抜群、超視力、メガトンパンチ、GPS内蔵⋯」
「7個以上に成ってない?」
「それくらい凄いんだから!」
「そうなの?」
「熊だけどな」
運転しながら父親が言った。
「熊言うな〜」
なんだろう、この二人の息の合い方は。
絶妙過ぎる⋯。
私は少し呆れながらも吹き出していた。
暫く走って車は藍染の屋敷に到着した。
随分遠くまで歩いたつもりだったが、車に乗れば所詮は数十分程度の距離だった。
玄関前に車が停まると、晴人と母親、お母さんと七海が出迎えた。
「あ兄ぃ〜!」
言いながら車から降りた父親に抱きつく母親。
いや、この人達自分を何歳だと思ってるの。
自分の両親が人前でいちゃつくとか、娘の気持ちも考えて欲しい⋯。
「香澄、なんで電話出ないんだよ!」
晴人は少し怒りながら言った。
「ごめん。少し一人に成りたくて」
私は答えながら、さっきまでスマホの電源を切りっぱなしだった事を思い出した。
「晴人、女の子はね繊細なの。大切にしなきゃ駄目だよ!」
私の腕の中のミツキ熊は、地面に飛び降りると、晴人の前に進み出て言った。
「う、うわっ! なにこの人形?! しゃべった?」
「私はね、アンタ達の⋯お姉さんみたいなものなんだから!」
「え、これ以上姉妹増えるの⋯? しかも熊?」
晴人は七海とミツキ熊を交互に見ながら言った。
「熊、言うな〜!」
と、七海がミツキの前に出る。
「ミツキ、久し振り」
七海はミツキ熊を抱き上げ、頭を撫でた。
「七海ちゃん! 大きく⋯成ってないね!」
「なるわけ無いでしょ」
「お互い様にねっ!」
2人は言い合って笑う。
なにこの状況。
混沌すぎる⋯。
「あー、せっかく皆が集まったんだし、少し話をしたいんだが、良いかな?」
父親は改めてその場の全員に声をかけた。
作者のやる気は イイね や 感想 で出来てます(笑)
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