孤独な時間
晴人にキスをされそうになり香澄が動揺した瞬間、突然電撃が走った。
唖然とする皆に香澄は⋯。
「な、なんだ⋯漏電?? 」
突然の轟音に晴人がキョロキョロと辺りを見渡す。
「晴人、大丈夫?」
「ああ、ちょっと痺れたけど⋯」
「腕?」
「ああ、ビリビリするっ」
晴人は痺れを払おうと何度か腕を振った。
「ごめん⋯」
「なんで香澄が謝って⋯え、まさか?」
「今の私だから」
「マジ?」
「うん⋯だから、ごめん⋯」
悔しかった。
晴人を傷つけるつもりなんて無かったのに、勝手に電撃が出てしまった。
「⋯す」
「す?」
「スゲェ! 電撃能力! 俺も欲しい!」
晴人はまるで子供の様なキラキラした目で私を見ていた。
「いや、そんな目で見ないでよ」
「香澄?」
「私⋯晴人に怪我をさせる所だったんだよ」
悔しくて涙が滲んだ。
こんな、危険な力、また暴走したら⋯。
「駄目⋯」
「香澄?」
「わ、私⋯自分で⋯」
私はカバンを取ると慌てて店を出た。
「「香澄?!」」
皆の声を振り切る様に走った。
商店街を抜け、市街に出る。
そのまま、いくつかの路地を通り抜け、住宅街に出た。
やみくもに走ったせいで、息が苦しい。
足がもつれ、路肩に膝をついた。
「どうしたの? 大丈夫?」
道端にしゃがんだ私に通りがかりのおばさんが声を掛けてくれた。
「あ、はい、大丈夫。大丈夫です」
私は伸ばされたおばさんの手を取った。
すると。
パチン!
軽く弾ける様な音が響いた。
「キャッ?」
おばさんは慌てて手を引く。
「あ、あら、静電気かしら⋯?」
まさか私が原因とは思わないおばさんは、戸惑った様な表情を浮かべた。
「!!」
駄目だ。
まだ放電が止まらない。
このままだと危険だ。
誰も居ない所に行かないと、怪我をさせてしまうかも知れない。
私は再び立ち上がると、ふらふらと歩き出した。
どこへ行けば良いか、なんて分からない。
ともかく誰にも迷惑を掛けない所に行がないと⋯。
1時間ほど後、私は街から少し離れた県境の大きな川の河川敷に居た。
川に架かった橋の橋脚のたもとにしゃがみ込む。
ここなら路地からも見えない。
誰かが声を掛けてくる事は無いだろう。
少し淀んだ流れが、ゆったりと砂利の河原の中を縫っていた。
穂を出し始めたススキが夕方の風に揺れている。
“ヴーヴー”
カバンの中でスマホの呼び出しが鳴った。
取り出して見ると、晴人からの着信だった。
何と答えて良いか分からず、そのまま電源を切った。
ともかく色々な事が有りすぎて混乱する。
晴人に告白されるし、電撃は止まらないし⋯。
どちらにせよ、少し様子を見るしかなさそうだった。
それから2時間ほど、私はここで、揺れるススキを見ながらただ時が過ぎてゆくのを待っていた。
空が暗くなり星が瞬き始める。
薄暗がりが広がり、河原の景色が暗い青に変わってゆく。
家に帰るのなら、そろそろここを離れなくては成らない。
これ以上暗くなれば、石だらけの河原を歩くのは大変になる。
そうと分かっていても、私はこの場を離れる事ができずにいた。
結局、私は自分が恐かった。
人と違う力を持った自分。
誰かを傷付けてしまう自分。
晴人への気持ちを整理できずに居る自分。
全部自分自身の事なのに、何一つ自由にならない。
「頭の中ぐちゃぐちゃだよ⋯」
こんな時、ミツキならどう言うだろ?
いつの間にか、頭の中でミツキと相談するのが当然に成っていた。
でも、今はミツキと話すことはできない。
更に1時間ほどが過ぎた。
街灯の無い河川敷はもう真っ暗だった。
対岸の街明かりが妙に懐かしく瞬く。
⋯このまま外泊する訳にも行かない⋯帰ろう。
この時間なら人通りも少ないから、迷惑もかけずに済むだろう。
「ふう」
私は溜め息をつくと立ち上がった。
スマートフォンの電源を入れ、ライトを使って足元を照らした。
同時に晴人からの着信履歴が10件ほど通知されたが、後で返信する事にする。
か弱いライトを頼りに、石だらけの河川敷を注意して歩く。
と、前方の暗闇の中に、二つの光点がきらめいた。
高さは私の膝ほど、間隔を保って左右にゆらゆらと揺れる。
あれは⋯動物の瞳がこちらのライトに反射している?
市街から外れた河川敷だから、野犬や猫、或いは狸等も居るかも知れない。
足を止めて様子を伺うと、その2つの光点はふらふらと左右に揺れながら、こちらに向かってくる。
微かにライトの届く距離まで近付いたそれは、やはり動物の類のようだ。
暗色の毛並みがチラチラと見える。
私は足元の小石を拾うと、それに向かって軽く投げた。
小石が落ちてカラカラと音を立てた。
小動物なら驚いて逃げる、と思った。
けど違った。
その動物は、気にする様子もなく、むしろこちらに向かってくる。
私はもう少し強く、動物に向かって再び小石を投げた。
カツン、と石が当たった音がした。
「い、痛い〜! 香澄、なにするの〜!」
その動物は叫んだ。
作者のやる気は イイね や 感想 で出来てます(笑)
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