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転生したら俺以外インキャの世界だった件 〜絶世の美形に生まれ変わった元いじめられっ子、神プロデューサーになる〜  作者: 葉山 乃愛


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第7話 震えるスカウトと、史上最年少の契約

お遊戯会が終わった後の遊戯室は、まるでお通夜のような静けさだった。



普通の世界なら「感動をありがとう!」と拍手喝采が送られる場面だが、この世界では違う。



保護者たちは「見てはいけないものを見てしまった」という顔で震え、俺の両親に至っては、俺が目立ちすぎたショックで膝から崩れ落ち、お互いを励まし合っていた。



「ああ……太陽が、あんなに光り輝いて……。きっと明日から、ご近所さんに『あそこの家の子は陽キャだ』って後ろ指を指されるわ……っ」



「雫、しっかりしろ……。これも俺たちの教育が至らなかったせいだ……。太陽、父さんを許してくれ、目立たせてしまって本当にすまない……っ」



(いや、謝るポイントがおかしいだろ。もっと誇ってくれよ)



俺は内心でため息をつきながら、衣装を脱ごうとした。その時だ。



「あ、あ、あの……! す、すみません、あ、あの……!」



背後から、消え入りそうな、それでいて必死な声が聞こえた。



振り返ると、そこにはグレーの地味なスーツをこれ以上ないほど着崩し(だらしなくではなく、目立たないように)、度の強い眼鏡を真っ直ぐに直そうとして手が震えている男が立っていた。



男は俺の両親の前に進み出ると、深々と、頭が床につくほどの勢いで土下座をした。



「ひっ……!? ど、土下座!? な、何者ですか、あなた様のような立派な大人が、私らのような日陰者に……っ!」



「も、申し訳ありませんっ! 私はこういう者です……。あ、あの、どうか、通報だけはしないでください……っ!」



男が震える手で差し出したのは、一枚の名刺だった。



そこには『モブプロモーション 芸能スカウト部 根津ねづ』と書かれていた。



根津と名乗った男は、地面に額を擦り付けたまま、蚊の鳴くような声で続けた。



「お、お子様たちの……先ほどの演技……。あれは、犯罪的です……。あんなに、あんなに……『自分』を表現してしまうなんて……っ。このままでは、彼らはこの社会で浮いて、生きていけなくなります……っ」



「そ、そうなんです! 私たちもそれを心配して……!」



父親が根津の手を握りしめた。どうやらこの世界のスカウトは、「君をスターにするよ!」ではなく「君はこのままだと社会不適合者だから、うちで隔離(保護)させてくれ」というスタンスらしい。



根津はゆっくりと顔を上げ、眼鏡の奥の鋭い目で、俺を……いや、俺の背後に隠れるように立っている三人を捉えた。



「……私は、長年この業界で『いかに目立たないモブを育成するか』を考えてきました。しかし、彼らは……特に、中心にいる太陽くん。君は……毒だ」



根津の言葉に、美桜がピクリと反応し、俺の前に一歩踏み出した。



「……たいようくんを、悪く言うのは、やめて。たいようくんは、わたしたちの……神様なの」



三歳児とは思えない、氷のように冷たい声。美桜の琥珀色の瞳が、根津を威圧する。



根津は「ひっ……!」と短く悲鳴を上げ、さらに小さく丸まった。



「ち、違うんです! 悪口じゃありません……! 私が言いたいのは……あ、あの……」



根津は深呼吸をし、震えを抑えながら俺を真っ直ぐに見つめた。



「太陽くん。君のその『光』を、外に漏らさないための箱を作らせてくれないか? 君たちの才能は、このままでは世界を壊してしまう。だから……僕たちの事務所で、秘密裏に、その光を磨いてほしいんだ」



(……面白い。この男、インキャの皮を被っているが、俺たちの価値を正しく理解している)



前世で、誰からも必要とされなかった俺。



今の俺には、守るべき仲間がいる。砂場の芸術家、リズムの天才、怪物の歌姫。



そして、俺というプロデューサー。



「根津さん。一つ条件があるんだ」



俺が子供とは思えない落ち着いたトーンで話し出すと、根津と両親、そして背後の三人が一斉に唾を呑んだ。



「条件……? な、なんでしょうか、太陽様……」



「俺たち四人は、セットだ。誰一人欠けてもいけない。そして……俺たちの見せ方は、俺が決める。あなたは、場所と『仮面』を用意してくれるだけでいい」



俺の言葉に、根津は目を見開いた。



「……君が、決める? 三歳の君が……演出を?」



「ああ。この世界に馴染めない俺たちのための、最高の『隠れステージ』を、俺がプロデュースする」



根津はしばらく呆然としていたが、やがて、その口元が微かに、本当に微かに吊り上がった。



「……わかりました。契約、しましょう。史上最年少の……『特級隔離対象』として」



こうして、俺たちは芸能事務所への所属が決まった。



もちろん、表向きは「社会性を身につけるためのカウンセリング」という名目だ。



根津が去った後、美桜が俺の耳元で、熱い吐息と共に囁いた。



「たいようくん。これで、ずっと一緒だね……。邪魔な大人は、わたしが全部……仮面の中に、隠してあげるから」



美桜の笑顔は、天使のようでありながら、どこか底知れない闇を孕んでいた。



俺は彼女の小さな手を握り返し、これから始まる「芸能界」という名の、新たな遊び場に思いを馳せた。



伏線は、すでに張られている。



根津が持っていた名刺の裏に書かれていた、もう一つの事務所名。



『サンシャイン・エージェンシー』。



このインキャだらけの世界で、唯一「陽」を掲げるその組織が、後に俺たちの最大の敵となることを、この時の俺はまだ知らなかった。


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