表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したら俺以外インキャの世界だった件 〜絶世の美形に生まれ変わった元いじめられっ子、神プロデューサーになる〜  作者: 葉山 乃愛


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/19

第11話 硝子のサンクチュアリと、美しき独裁者

フェスタでの勝利から数年。俺たちはついに、地元の公立小学校へと入学した。



普通の世界なら、小学校入学は新しい友達作りに心躍らせるイベントだろう。



だが、このインキャだらけの世界における「学校」とは、いかに目立たず、いかに他人のパーソナルスペースを侵さないかを競い合う、静寂の聖域だった。



「……あ、あの。名簿、一番の……相沢くんです。趣味は、壁の角を見ることです……。六年間、よろしくお願いします、申し訳ありません」



教壇に立つクラスメイトが、消え入るような声で自己紹介を終える。



続く生徒たちも同様だ。誰もが床を見つめ、自分の存在を消そうと必死になっている。



そんな澱んだ空気の中、俺はゆっくりと立ち上がった。



「……天道てんどう 太陽たいようです。みんなと一緒に、面白いことができたらいいなと思ってます。よろしく」



俺が真っ直ぐに前を向き、爽やかに言い放った瞬間。



教室内の温度が、一気に数度上がったような錯覚に陥った。



「ひっ……!」



「な、なんて眩しい……。あんなに堂々と、自分の名前を……」



クラスメイトたちが、まるで神の啓示を受けた信者のように、一斉に俺を仰ぎ見る。



前世ではいじめっ子たちの標的だった俺の「普通」が、この世界では「王の風格」として処理される。このバグじみた感覚には、いまだに慣れない。



だが、俺の背後から放たれる「別の圧力」に、俺は背筋を凍らせた。



「……たいようくん。今、あの子と目が合ったね。三・五秒も」



隣の席に陣取った美桜が、長い前髪の隙間から、琥珀色の瞳を怪しく光らせていた。



彼女は成長するにつれ、その美貌に磨きがかかると同時に、俺に対する執着心が加速していた。



美桜は、俺の机の上に、自身がデザインした「S」の文字を象った小さな銀色のブローチを置いた。



「これ、クラスのみんなに配っておいたから。たいようくんを敬うための、聖域の証」



ふと周りを見渡すと、クラスメイト全員が、胸元にそのブローチをつけていた。



(……えっ、いつの間に?)



「……みんな、たいようくんに声をかける勇気なんてない。だから、わたしが管理してあげるの。たいようくんの時間を、無駄な雑音で汚させないために」



美桜の笑顔は、慈愛に満ちているようで、その実、このクラスを一つの「実験室」に変えようとする独裁者のそれだった。



砂場の芸術家だった彼女の才能は、今や「集団の心理をデザインする」という、極めて危険な方向へと進化しつつあった。



そんな時、教室の扉が静かに開いた。



「……遅れて、すみません。……サンシャイン・エージェンシーから、転入してきました」



現れたのは、あのフェスタで救った陽菜ひなだった。



彼女はかつての無理な笑顔を捨て、どこか儚げで、だが芯の強さを感じさせる落ち着いた雰囲気を纏っていた。



「瀬戸 陽菜です。……太陽くんに、もう一度会いたくて、来ました」



陽菜が俺を見つめて微笑む。その瞬間、教室内には火花が散った。



「……あら。壊れたはずの偽物が、何の用かしら」



美桜が立ち上がり、陽菜の前に立ちはだかる。



「偽物じゃないわ。太陽くんに、本物の自分を見つけてもらったの。……私はもう、あなたの言いなりにはならない」



陽菜の瞳には、かつてなかった「意志」が宿っていた。



俺という太陽を巡って、二人の「ヒロイン」が小学校という閉鎖空間で衝突を始める。



そして、俺は気付いていた。



廊下の隅で、カメラを構えてこちらを盗み見ている、高学年の男子生徒の存在に。



その腕には『新聞部』の腕章。だが、その瞳に宿っているのは、純粋な好奇心ではなく、獲物を狙うスキャンダルライターのような濁った野心だった。



俺の二度目の人生、最高の青春時代。



それは、小学校入学と同時に、美しくも残酷な「派閥争い」の舞台へと変貌しようとしていた。



(……やれやれ、これじゃあプロデューサーとしての修行は、大学まで待ってくれそうにないな)



俺は内心で苦笑しながら、美桜と陽菜の間に入り、混乱の渦中へと足を踏み出した。



物語は、幼少期の無双から、より複雑な「人間関係の支配」へと加速していく。



俺が大学生になり、伝説のプロデューサーとして芸能界を揺るがすまで、あと十二年。



その伏線となる「初恋の戦争」が、今、静かに幕を開けた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ