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二重人格パイロット、銀河辺境砂漠型惑星にて  作者: サイリウム


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11/13

11:軍人



「あー、軍曹ちゃん? もーちょっとさ、らくーにして良いとおじさん思うんだけどなぁ。」


「いえ、少尉殿! 小官は与えられた軍務を全うするだけであります!」


「うーん。元気いっぱいね、ほんと。」




視点は変わり、セファたちがドレッドを隠し、かき氷になったドロ猫に暖かい昼食を振舞っていたころ。


町の駐屯地から、2機のドレッドが出発しようとしていた。


共に防塵対策と追加装甲、そして近遠両方の武装を装備した万全の『アヴァランス』である。



(ウチの駐屯地のトップ、中佐さんが言うには砂賊が出たって通報があったらしいけども……、そんなもん聞いてないんだよねぇ。)



気だるげにそんなことを考えながら、自身のドレッドに乗り込む男性。先ほど少尉殿と呼ばれていた、無精ひげの人間だ。


彼も他の同僚と同じように軍務にやる気はあまりなく、安定した給料だけもらえれば良いと思う人間ではあったが、同時に軍全体にはびこる腐敗に不満を覚える人間でもあった。年のせいか言葉や行動を起こすことはなかったが、その眼には今回の任務への強い不信が宿っていた。



(ちょっと調べてみたけど、通報記録は一切無し。まぁ基本みかけても通報しないもんね。砂賊出ても町を攻撃しない限りは僕たち軍は動かないというか、動けないというか、働く気ないし。どっちも『サンドライン商会』の手下になっちゃってるからなぁ。)



セファたちが住む拠点から一番最寄りのこの町。勿論ザイオラ政府から派遣された町長などは存在しているのだが、サンドライン商会の手が伸びており、実質的な支配者はその支部長だ。


故にその配下である砂賊が何をしようとも、軍は動くことが出来ない。何せ駐屯地トップの中佐が支部長に大量の献金を受けているし、その恩恵を多く受けているのが彼らだからだ。少尉という階級から彼にそのような情報は一切流れてきていないのだが……、傍から見るだけで理解できるというのは多く存在する。


故にわざわざ『砂賊が出たからその調査』として軍が動くのは、異例だと彼は考えていた。



(もし現住生物に喰われてたらその討伐と、破片の回収。他の企業とかの横やりが入ってたら、その検挙ってところか。……正直、めんどいな。)



軍よりも企業が力を持っているのが、昨今の人類であり、この惑星ザイオラもその例に漏れない。


『サンドライン商会』と戦闘になりそうな企業と言えば、最近この惑星に進出して来た大企業である『イプシロン=ゼクス』であり、彼らはお抱えのドレッド乗りを大量に保有している。


しかも今回“出た”と伝えられている砂賊は、『バースト団』を名乗るドレッド3機に大量の車両を保有する砂賊。つまり今回の下手人はそれを撃破できるだけの強さ、もしくは数を保有しているに他ならない。


もしそんな存在と戦いになれば無傷では済まないだろうし、生き残れたとしても最悪企業が軍に圧力をかけて彼らは懲戒処分。職を失うことになる。確かにまだ彼だけ、少尉だけならその辺り上手く調整し、丸く収める事が出来たかもしれないが……。



『少尉殿! 準備完了致しました! いつでもどうぞ!』


「へいへい、んじゃ出発するとしましょうかねぇ。」



少尉が見るコックピット画面に映る、僚機。


金髪を後ろで軽くまとめ、軍にしてはかなり珍しくやる気いっぱいな女性。


年齢・見た目的に少女と言ってもいいかもしれない彼女が、問題だった。


軍の腐敗に歯噛みしながらも、自身の思い描く理想の軍人として振舞い続ける存在。駐屯地内で上からも下からも厄介者扱いされている軍曹が、どう暴走するか解らないからだ。何せ彼女は、まだ軍がまだ腐敗していなかった時に作られた軍規に忠実すぎる。


対象がドレッドを持っていれば認可証の提出を求め、持っていなければ逮捕、反抗すれば撃破後に捕縛。当初警察としての動きも求められ定まったルール通りに、動いてしまうだろう。


良く言えば柔軟、事実を言えば軍規違反のオンパレードに協力するとは到底思えなかった。



(僕たち周りの法を全部覚えてるのなんて一体何人軍にいることやら。でも彼女はなんかその辺り全部覚えてるみたいだし、見つけたらやっちゃうだろうなぁ……。自他ともに厳しいというか、軍として動くように自分も周りも押し付けちゃうから、厄介者扱いされてるし。)



遠巻きに必要なら見捨てて帰ってこいって言われたしなぁ、という言葉を吐き出さず口の中で収める少尉。


彼が“軍曹ちゃん”と呼ぶ彼女の行動が正しいことは彼も理解しているが、いささか軍の腐敗が進み過ぎている。これを正すには将レベルまで出世して改革するか、軍全体が崩壊するまで待たなければならないだろう。


つまり軍曹でしかない彼女。そして少尉でしかない彼では、もうどうしようもないのだ。



(まぁでも普通に良い子だし、汚い大人のあれこれに巻き込まれて死ぬなんて可哀想がすぎる。最悪僕がちょっと頑張ることにして、一緒に生きて帰れるようにしないとねぇ。)



そんなことを考えながら、ドレッドを走らせる少尉。


軍務中だからということで一切私語を喋らない軍曹ちゃんに少し寂しさを感じながらも数時間。


砂上を動かし続けた結果、上から伝えられた位置。サンドライン商会の支部長が何とか反応を追跡し、砂賊たちの反応が消えた場所へ到着していた。



『少尉殿、通報された位置はこことのことですが……。』


「だねぇ、案の定なんもないけど。何か見つけた?」


『はい、いいえ少尉殿。何も発見できておりません。……通報は匿名のキャラバン隊とのことでしたが、悪戯だったのでしょうか。いくら現住生物相手だとしてもその痕跡すらないのは異常だと愚考します。』


「うーん、みんな食べられちゃったのかもねぇ。まぁ砂賊だし、そっちの方が治安が良くなると思うけど。」



口ではそう言いながらも、思考を掛け巡らせる少尉。


痕跡が一切ないということは、誰かが隠したからに他ならない。何せ今回の命令は、かの支部長からの命令だ。ここに砂賊がいたという情報は確実であり、戦闘が起きたであろうと言うことも確実。後は何にやられたのか、という話だが……。


何もない砂漠を見る限り、人の手によって討伐されたのは間違いない。



(僕だけなら、巨大ミミズに全部丸呑みにされたみたいです、みたいにでっち上げて帰るけど……。あの子は納得なんかしないだろうね。さて、何て言って帰るか。)



人によって討伐されたのならば、それこそ企業の影が見え隠れして来る。一介の軍人ではさばき切れる問題ではない。無能のレッテルを貼られようが、生き残り食い扶持を維持するためには軍曹の彼女を説得して帰るしかない。


ドレッドのセンサーを動かし、何かを探す様な振りをしながら次の言葉を考える少尉。しかし彼が口を開くよりも早く、軍曹が言葉を紡ぐ。



『あ、少尉殿! マップを確認したところこの近くに「給油所」があるようです。どうやら血油を販売する店舗とのこと。この距離ですし、何か知っているかもしれません。捜査協力を打診すべきでは?』


「ん~? あぁほんとだ。珍しいねちゃんと申請出してるの。あ~~~、うん。じゃあちょっと話を聞きに行こうか。あ、それと対応とかなんだけど、軍曹ちゃんに任せてもいい? ほら僕らドレッドで来てるでしょ? 変に警戒させちゃ可哀想だし、僕みたいなおじさんより若いお姉さんの方が色々と良いでしょう?」


『確かに、要らぬ心配を市民の皆様におかけするのは避けるべきですね。了解しました!』







〇オルド・セレスター社製 第十四世代 戦闘機『アヴァランス』


地球の北欧系企業を元に寒冷惑星に進出したオルド・セレスター社における第十四世代型ドレッド。


寒冷地における高速移動および長期運用を目的として開発された。結果、キャタピラタイプでありながら同タイプ同出力のドレッドと比べ3割の軽量化が果たされ、また整備性の向上が見られている。


同社が武装系の開発を不得意とすることから『もういっそのこと外部に全部任せては?』という設計方針に落ち着き、当機開発以前の武装ほぼすべてが使用可能になるOS等が組み込まれている。また開発陣は当初気が付いていなかったのだが、機体テスト時に武装のみならず追加装甲やその他周辺機器までほぼ問題なく使用できることが発覚したため、自由にカスタムできる拡張性の高い機体として販売されるに至った。十四世代を象徴する傑作機の一つ。


惑星ザイオラの軍部では一般兵向けの機体として採用されており、各地に配備されている。ただ元々寒冷地向けの機体であるため大幅な現地改修が必要であり、その改修は全て現地整備員に一任されるため多種多様な『アヴァランス』が存在している。





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