■第13話「それでも続く」
世界は、終わらない。
どれだけ大きな出来事があっても。
どれだけ価値観が揺らいでも。
日常は、静かに続いていく。
だから人は、安心する。
そして同時に、忘れていく。
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朝。
街はいつも通り動いていた。
通勤する人々。
スマートフォンを見ながら歩く学生。
店のシャッターを開ける店員。
すべてが、変わらない。
だが。
ほんのわずかに。
見えない部分が、変わっている。
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ニュースが流れる。
いつも通りの話題。
経済、事件、天気。
どれも、普通だ。
だが。
コメント欄は、少しだけ違う。
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「これ本当?」
「前も似たようなのあったよね」
「なんか信用できない」
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疑い。
小さな違和感。
それが、残っている。
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神代昴は、その様子を静かに見ていた。
カフェの窓際。
コーヒーを片手に、外を眺める。
「……いい」
小さく呟く。
完璧な変化ではない。
劇的でもない。
だが。
「十分だ」
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雨宮澪は、向かいの席でスマートフォンをいじっていた。
「ねえ」
軽く言う。
「結局さ、何が変わったの?」
昴は少しだけ考える。
そして。
「信じ方だな」
短く答える。
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「信じ方?」
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「前は、見たものをそのまま信じてた」
「今は」
少しだけ間を置く。
「一回疑う」
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澪は笑う。
「それって良いこと?」
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昴は肩をすくめる。
「さあな」
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「でも」
静かに言う。
「面白くはなった」
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白鷺悠真は、本を閉じていた。
ページをめくる手を止め、目を細める。
「人は、納得できるものを信じる」
小さく呟く。
「だが」
「納得できないものが増えたとき」
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「どうなるか」
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黒鉄蓮が横から言う。
「混乱する」
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悠真は頷く。
「そうですね」
「だが、それが悪いとは限らない」
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如月玲は、モニターを見ながら言う。
「前よりバグってるよね、この世界」
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紗那が淡々と答える。
「不確定要素、増加」
「予測精度、低下」
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堂島が笑う。
「いいじゃねえか」
「人間らしくて」
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鷹宮龍斗は、少し離れた場所でそれを聞いていた。
何も言わない。
だが。
理解している。
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正義も、情報も、選択も。
すべてが揺らいだ。
だが。
崩れてはいない。
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それが、この結果だ。
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一方。
天城透は、同じ場所に座っていた。
静かに。
何も変わらないように見える。
だが。
その内側は、確実に変わっている。
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人を見る。
行動を見る。
選択を見る。
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だが。
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以前のように、すべては見えない。
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分岐がある。
揺らぎがある。
理解できない部分がある。
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「……」
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ノートを開く。
ペンを持つ。
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書く。
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だが。
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途中で止まる。
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続きが分からない。
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それは、初めての感覚だった。
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少しだけ、口元が緩む。
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「……面白い」
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小さく呟く。
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その言葉には、以前とは違う意味があった。
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神代昴は、席を立つ。
コーヒーを飲み干す。
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「行くか」
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澪が顔を上げる。
「どこに?」
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昴は答える。
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「次だ」
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その一言。
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悠真が静かに笑う。
「終わらないですね」
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蓮が言う。
「当たり前だろ」
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如月が肩をすくめる。
「むしろここからでしょ」
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紗那が淡々と入力する。
「新規記録、開始」
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堂島が笑う。
「また面倒なことになりそうだな」
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鷹宮は、小さく目を閉じる。
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そして。
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ゆっくりと歩き出す。
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世界は変わった。
だが。
終わってはいない。
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人は、選び続ける。
間違えながら。
迷いながら。
それでも。
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選ぶことをやめない。
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だから。
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この物語も。
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終わらない。
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ただ。
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形を変えて、続いていく。




