■第14話「選ぶということ」
未来は、決まっていない。
そう信じることで、人は前に進める。
だが同時に。
どこかで、決まっているのではないかと疑っている。
その間で揺れながら。
それでも、人は選び続ける。
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神代昴は、屋上に立っていた。
街が見える。
高い位置から見下ろす景色は、どこまでも均一で、どこまでも雑多だ。
人が動いている。
小さく、無数に。
それぞれが、それぞれの方向に進んでいる。
だが。
そのすべてが、どこかで交わり、どこかで離れていく。
「……綺麗じゃないな」
小さく呟く。
整っていない。
揃っていない。
無駄も、矛盾も、混ざっている。
それでも。
「だからいい」
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ドアが開く音がする。
振り返らなくても分かる。
足音が近づく。
軽い足取り。
「こんなとこにいたんだ」
雨宮澪の声。
昴は軽く手を上げる。
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「終わった?」
澪が隣に立つ。
同じ景色を見る。
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「さあな」
昴は答える。
「終わったとも言えるし」
「続いてるとも言える」
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澪は笑う。
「なにそれ」
「一番ずるいやつじゃん」
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「そうか?」
昴は肩をすくめる。
「現実ってそんなもんだろ」
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少しの沈黙。
風が吹く。
街の音が遠くから届く。
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「ねえ」
澪が言う。
「結局さ」
「人って、選んでるの?」
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その問い。
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昴はすぐには答えない。
少しだけ考える。
そして。
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「分からない」
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正直な答えだった。
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「決まってるのかもしれないし」
「決まってないのかもしれない」
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澪が顔をしかめる。
「はっきりしないね」
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昴は笑う。
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「いいんだよ、それで」
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「大事なのはさ」
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少しだけ間を置く。
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「選んだと思えるかどうかだ」
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澪はその言葉を聞いて、少しだけ黙る。
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「……そっか」
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小さく呟く。
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「納得したなら、それでいいってこと?」
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「そう」
昴は頷く。
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「人は、納得できるものを選ぶ」
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「でも」
少しだけ視線を上げる。
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「納得できないものも、選ぶ」
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澪が笑う。
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「めちゃくちゃだね」
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「だろ」
昴も笑う。
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その会話は、どこにでもあるものだった。
特別ではない。
だが。
確かに、そこに意味があった。
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白鷺悠真は、静かに本を閉じる。
そのページには、答えは書かれていない。
だが、それでいい。
答えがあることが、すべてではない。
考え続けること。
それが重要だと、彼は知っている。
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黒鉄蓮は、街を歩いていた。
人の流れの中に紛れる。
誰にも気づかれない。
だが。
彼は見ている。
人の選択。
その揺らぎ。
その矛盾。
そして。
それでも進む強さ。
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如月玲は、モニターを閉じる。
データは残っている。
だが、完全ではない。
予測はできる。
だが、確定はできない。
「……こっちの方が面白いかもね」
小さく呟く。
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時任紗那は、静かに入力を終える。
「記録完了」
それだけ。
余計な言葉はない。
だが、その中にはすべてが含まれている。
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鷹宮龍斗は、遠くを見ていた。
正義とは何か。
その問いに、答えは出ていない。
だが。
以前とは違う。
絶対ではないと知った。
それだけで、十分だった。
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そして。
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天城透。
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同じ場所に座っている。
変わらないようで、変わっている。
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人を見る。
選択を見る。
結果を見る。
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だが。
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すべては、見えない。
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分岐がある。
揺らぎがある。
理解できないものがある。
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ノートを開く。
ペンを持つ。
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書く。
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だが。
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途中で止まる。
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続きが、決まらない。
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少しだけ、考える。
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そして。
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ペンを置く。
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「……」
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空を見上げる。
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わずかに、口元が緩む。
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「……それでも」
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小さく呟く。
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「面白い」
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その言葉。
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それが、すべてだった。
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未来は、決まっていない。
だが。
決まっているかもしれない。
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それでも。
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人は選ぶ。
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意味があっても。
意味がなくても。
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正しくても。
間違っていても。
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選び続ける。
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それが。
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人間だった。
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そして。
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それを見ている者もまた。
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完全には、理解できない。
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だからこそ。
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この世界は。
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終わらない。
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ただ。
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選ばれ続ける。




