表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「観測者の外側」  作者: vastum


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/14

■第14話「選ぶということ」

 未来は、決まっていない。


 そう信じることで、人は前に進める。


 だが同時に。


 どこかで、決まっているのではないかと疑っている。


 その間で揺れながら。


 それでも、人は選び続ける。



 神代昴は、屋上に立っていた。


 街が見える。


 高い位置から見下ろす景色は、どこまでも均一で、どこまでも雑多だ。


 人が動いている。


 小さく、無数に。


 それぞれが、それぞれの方向に進んでいる。


 だが。


 そのすべてが、どこかで交わり、どこかで離れていく。


「……綺麗じゃないな」


 小さく呟く。


 整っていない。


 揃っていない。


 無駄も、矛盾も、混ざっている。


 それでも。


「だからいい」



 ドアが開く音がする。


 振り返らなくても分かる。


 足音が近づく。


 軽い足取り。


「こんなとこにいたんだ」


 雨宮澪の声。


 昴は軽く手を上げる。



「終わった?」


 澪が隣に立つ。


 同じ景色を見る。



「さあな」


 昴は答える。


「終わったとも言えるし」


「続いてるとも言える」



 澪は笑う。


「なにそれ」


「一番ずるいやつじゃん」



「そうか?」


 昴は肩をすくめる。


「現実ってそんなもんだろ」



 少しの沈黙。


 風が吹く。


 街の音が遠くから届く。



「ねえ」


 澪が言う。


「結局さ」


「人って、選んでるの?」



 その問い。



 昴はすぐには答えない。


 少しだけ考える。


 そして。



「分からない」



 正直な答えだった。



「決まってるのかもしれないし」


「決まってないのかもしれない」



 澪が顔をしかめる。


「はっきりしないね」



 昴は笑う。



「いいんだよ、それで」



「大事なのはさ」



 少しだけ間を置く。



「選んだと思えるかどうかだ」



 澪はその言葉を聞いて、少しだけ黙る。



「……そっか」



 小さく呟く。



「納得したなら、それでいいってこと?」



「そう」


 昴は頷く。



「人は、納得できるものを選ぶ」



「でも」


 少しだけ視線を上げる。



「納得できないものも、選ぶ」



 澪が笑う。



「めちゃくちゃだね」



「だろ」


 昴も笑う。



 その会話は、どこにでもあるものだった。


 特別ではない。


 だが。


 確かに、そこに意味があった。



 白鷺悠真は、静かに本を閉じる。


 そのページには、答えは書かれていない。


 だが、それでいい。


 答えがあることが、すべてではない。


 考え続けること。


 それが重要だと、彼は知っている。



 黒鉄蓮は、街を歩いていた。


 人の流れの中に紛れる。


 誰にも気づかれない。


 だが。


 彼は見ている。


 人の選択。


 その揺らぎ。


 その矛盾。


 そして。


 それでも進む強さ。



 如月玲は、モニターを閉じる。


 データは残っている。


 だが、完全ではない。


 予測はできる。


 だが、確定はできない。


「……こっちの方が面白いかもね」


 小さく呟く。



 時任紗那は、静かに入力を終える。


「記録完了」


 それだけ。


 余計な言葉はない。


 だが、その中にはすべてが含まれている。



 鷹宮龍斗は、遠くを見ていた。


 正義とは何か。


 その問いに、答えは出ていない。


 だが。


 以前とは違う。


 絶対ではないと知った。


 それだけで、十分だった。



 そして。



 天城透。



 同じ場所に座っている。


 変わらないようで、変わっている。



 人を見る。


 選択を見る。


 結果を見る。



 だが。



 すべては、見えない。



 分岐がある。


 揺らぎがある。


 理解できないものがある。



 ノートを開く。


 ペンを持つ。



 書く。



 だが。



 途中で止まる。



 続きが、決まらない。



 少しだけ、考える。



 そして。



 ペンを置く。



「……」



 空を見上げる。



 わずかに、口元が緩む。



「……それでも」



 小さく呟く。



「面白い」



 その言葉。



 それが、すべてだった。



 未来は、決まっていない。


 だが。


 決まっているかもしれない。



 それでも。



 人は選ぶ。



 意味があっても。


 意味がなくても。



 正しくても。


 間違っていても。



 選び続ける。



 それが。



 人間だった。



 そして。



 それを見ている者もまた。



 完全には、理解できない。



 だからこそ。



 この世界は。



 終わらない。



 ただ。



 選ばれ続ける。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ