文月
風の息づかいがそっと流れる、野原の真ん中の小さな喫茶店。
白猫のシロは、今日も変わらず静かに佇み、訪れる旅人を迎えていた。
七月の夜空は薄藍に澄み、笹の葉がさらりと揺れる。
遠い星々の気配が胸の奥をくすぐり、世界がひとつ呼吸を忘れたように静まり返る。
そのとき――木の扉の前に、ひとりの旅人の気配が揺れた。
淡い光が、物語の余韻を歩くように静かに近づいてきた。
指先の仕草ひとつ、衣の揺らぎひとつが、星々の記憶をそっと語りかけてくる。
シロには、その姿が天の川から降り立った精霊のように思えた。
年に一度だけ逢うという古い伝承が、この夜空にも息づいている。
旅人は星のきらめきを纏いながら、ふわりと微笑む。
「今日は、天の川が少し近いのです」
焙煎した珈琲の澄んだ香りが立ちのぼり、旅人のまとう光と溶け合う。
その一杯は、織り上げた布のように柔らかく、渡る天の川のように静かで深い。
そして旅人は、星の粒を落とすように囁いた。
「願いは風に乗せれば、星々が拾ってくれます」
そう言い残し、旅人は野原の向こうへ歩み去る。
残されたのは淡い光の余韻と、胸の奥に芽吹いた小さな願い。
七夕の空の下、シロは今日も静かに物語を紡ぐ。
その物語は、風に乗り、星に触れ、そっと――あなたの胸へ届いていく。
気にかけてくださり、本当にありがとうございます
これまでの物語をゆっくり振り返っていただけますよう、投稿した挿絵を大切に保存しております。
絵を眺めるだけで物語の情景がふっと蘇るような、そんな時間をお届けできれば幸いです。
どうぞ、ごゆっくりご覧ください。
https://x.com/ocarina_quartet
※挿絵は Gemini Nano Banana Pro による生成画像です※




