卯月
四月の風は、まだ少しだけ冬の名残を抱きしめながら、
野原に佇む白猫の喫茶店へ、二つの影をそっと運んでくる。
鈴の音奏でる扉を開けば、焙煎した珈琲の香りが、
旅人をやわらかく包み、胸の奥に静かな灯をともす。
言葉はいらない。
カウンターに並んで座る二人の間を、春の光がゆっくりと流れ、
湯気の揺らぎが、語られぬ想いをそっと撫でていく。
指先が触れそうで触れない距離に、
旅立ちの決意と、まだ手放せない温もりが淡く揺れていた。
やがて、どちらからともなく立ち上がり、旅立ちの時がそっと訪れる。
椅子を引く音は別れの痛みではなく、未来へ踏み出すための柔らかな合図。
白猫の見守る静寂の中、扉へと歩き出す。
扉の外で二人は一度だけ振り返り、
同じ場所にいた奇跡を笑顔で確かめる――そして、
一人は東へ、希望の光を追うように。
一人は西へ、まだ見ぬ景色を胸に抱いて。
それぞれ違う道へと歩き出していく。
振り返らずに進む背中が、春の風に溶けていく。
「二人の背中に静かな勇気を――」
残されたのは、温もりの余韻だけ。
シロは、カウンターに寄り添う二つのカップに想いを注ぐ。
まるで別れをそっと受け止めるように、
静かに、優しく、春の光を浴びながら。
気にかけてくださり、本当にありがとうございます
これまでの物語をゆっくり振り返っていただけますよう、投稿した挿絵を大切に保存しております。
絵を眺めるだけで物語の情景がふっと蘇るような、そんな時間をお届けできれば幸いです。
どうぞ、ごゆっくりご覧ください。
https://x.com/ocarina_quartet
※挿絵は Gemini Nano Banana Pro による生成画像です※




