Ep.013「異世界転移」
新しいオリキャラたち追加ー
越神は気づいている。この世界を見ている、あなたに。
「今日は、そうね。この話を聞かせてあげる」
彼女は「観察日記」を手に取り、ページを開く。
「異世界からやって来た少女達の話よ」
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その日は晴天。夏休みの真っ只中だった。
私たちは合同課題会を先日行い課題はすでにおわっているため各々好きなように遊んでいる。
美乃はくるみと日向ぼっこしていた。
「あー、風がさわやかだねぇ」
「そーですねぇくるみ先輩」
二人とも目を閉じて川沿いの芝生に寝そべり、のーんびりと風を堪能している。
そんなときだった。
「……くるみ先輩……あれなんでしょうかね?」
「なんだろうねー」
ソレを指差し訪ねてみるも、くるみ先輩は気にした様子もなくのんびりとしている。
ソレは、例えるならブラックホールだろうか。
ゲームとかでよくみる、渦巻いてるあれである。
それが空に浮かんでいたのだ。
なんだろう、と首を捻っているとポケットの中の携帯が振動し、着信があることを伝えた。
「ん……もしもし、小夜ちゃん?」
『美乃、どこにいる?』
私はこの川の名前を思い出そうとしながら答える。
「名前が出てこないんだけどー、寮の近くの川沿いー」
『すまない、なるべく早く寮に戻ってきてくれ。……ん、もしやくるみも一緒か?』
なぜわかったし。
『都合がいい。二人とも速やかに戻ってきてくれ』
小夜ちゃんはそう言って通話を切った。
何かあったんだろうか。疑問は一旦飲み込んで、私はくるみ先輩を引っ張って寮へと向かった。
◆
あれから数分後。私たちは寮へと戻ってきた。
小夜ちゃんは玄関前に立っていて、出迎えてくれる。
「急に呼んですまなかった。……これでみんな揃ったな。緊急会議だ」
━━緊急会議。
読んで字のごとくではあるが、
私たちの間では少し意味が異なる。
最初の頃に取り決めた暗号のようなもので、「魔法的な問題」について話すときに使われるのだ。
会議に使われるのはリビング。元々椅子が足りなかったけど、絢音ちゃんがどっかから手に入れてきた。
全員が席につき、空気が切り替わる。
「やっぱりあの黒いの、そっち系なのね」
どうやら桃音先輩も見たらしい。ということはおそらくみくも先輩も見たんだろう。
「あれは魔法。存在は私も知っているけれど、使ったことはないわね。というか使える人が存在するとは思わなかったわ」
少し驚いた風に女神様が答える。
(女神さまでさえ使ったことないのか……)
「あの魔法は、ワールドゲートと呼ばれる転移魔法で、どの異世界でも転移魔法のなかでは神話扱いされている」
そうか、小夜ちゃんは異世界にいく能力だから知ってるんだな。
「本題はここからよ。あれ自体は転移と言ったでしょう?」
転移魔法……あれ?
何が転移したの?
「あっ!」
私が思った通りの答えに、みくも先輩もたどり着いたようだった。
「そう、何者かがこの世界に来てるはずなのよね」
異世界から魔法を使って世界をわたるような存在が、この世界に来ている。
(なるほど、確かに大問題だ)
ただでさえ本来魔法のない世界なのだ。
これ以上魔法を持ち込んだりしたら……
「というわけで、ソイツを捕まえるわよ」
女神様がそういった直後だった。
『!!!』
バカでっかい魔力を感じた。
方向もはっきりわかるほどである。
魔力は魔力同士ぶつかるので魔力を持つものは魔力を感じ取れるのだ。
「今の……魔法?」
絢音先輩が可能性を聞く。
「間違いない。あれは索敵魔法だな。……というか、この魔力は……」
小夜ちゃんは何か心当たりがあるようだ。
女神様が全員に指示を出す。
「全員、手を繋ぎなさい!!……《集団転移》!」
みんな手を繋ぐとほぼ同時に、女神さまの魔法が発動する。
今何が起こったのかわからないうちに、全員公園にいた。
「公園のど真ん中に転移って……大丈夫なの!?」
「意識の隙間に転移したから問題ないわ。徐々に見つかるけど誤差の範囲。それより……あれね」
女神様が示す方を見ると、そこには二人の少女がいた。
向こうも私たちが見ていることに気付き、驚いている。そして二人で何やらこそこそ話している。
(ねえ、認識阻害魔法切れてないよね?ね?『転移してきた』あの人たち、こっち見てるんだけど)
(あの先頭にいる黒髪の……あれはヤバいね。私の魔法さえ効かないとなると……)
(てか、サヨいるよ!?探しにいく手間省けた?)
(え!?そ、そうだね……でもまずは落ち着いて話せるところへいかないと)
何やらヒソヒソ話している二人の少女は、小夜ちゃんに視線を向けて嬉しそうに笑う。
そして……杖を持っている少女がこちらへゆっくり歩いてくる。
「まず一つ。私たちは敵対するつもりはないです。どこか、落ち着いて話せる場所へ行きたいのですが」
「そう。じゃあ、寮まで行きましょうか。手を繋ぎなさい」
私たちも手を繋ぎ直し、改めて転移する。
あっという間に寮へと戻ってきた。
後処理はきっと女神様が上手くやってるだろうから気にしないことにした。
いつの間にか椅子が二つ増えたリビングで円卓を囲み、改めて彼女たちと話す。
「改めて。私はハイアス・ヴェルセンテリアです」
「えーと、シオンです」
二人とも外国人のような名前だ。
ハイアスさんは小夜ちゃんに微笑みかける。
「久しぶり、サヨ。なんか、あのときより強くなった?雰囲気違うね」
「スキルは増えたが使う機会はないよ。……平和な世界なんでな」
「いいことだよ」
ハイアスはクスクスと笑う。
そして女神さまへと向き直る。
「私は越神奏女よ」
「真名でお願いします」
名乗った女神様が目を見開いて絶句する。
一瞬で偽名と看破されたのだ、驚くのも無理はない。
眉間にシワを寄せて女神は問いかける。
「……なんのつもり?」
「ヒトじゃないですよね、あなた。私の魔法が効かないことからそれは分かります」
彼女は自分の魔法に絶対的な自信を持っているようだった。
「大したものね。では改めて。私は女神エオラス」
そう答え、普段は消えている背中の羽パーツが現れる。
「やっぱり神だったか……ありがとうございます」
真名を伝えてもらったことへ礼を言い話を戻す。
「私たちは、かつてサヨと一緒に旅をしました」
そこで何人かの視線が小夜ちゃんへと集まる。
小ちゃんが補足してくれる。
「異世界でな」
しんみりとした思い出すような表情でハイアスが語る。
「旅の終わりに誓ったんです。いつか必ず会いに行くよ、って」
「まさかワールドゲートを起動してくるとは思わなかったがな」
「大変だったんだからね?」
そういってまたクスッと笑う。
「約束を果たすために、この世界まで来たと?」
「そういうことです。こっちの世界で暮らすつもりですし」
「こっちの世界は楽しそうですしねー」
事も無げに言っているが…異世界から来たのだ、戸籍などない。家もなければこの世界の常識もないはず……。
ここで小夜ちゃんが話を少し変える。
「女神様へお願いだ。彼女たちが『存在する』ことへ違和感を持たないように、思考を動かせないか?」
「心配要らないよサヨ。それはもう終わってる。日本中をマインドコントロールした」
スケールの吹っ飛んだことしてる……。
それは魔法をろくに使えない私でもわかる。
「……一応制約を付け……あ?効かない!?」
魔法に制約を付けようとした女神だったが、
どうも失敗したようだ。
「私にその手の魔法は効かないよ。でも安心して。人目のある場所では魔法を使ったりしないと誓います」
「不安ねー……寝てるときとか大丈夫?」
そういわれてハイアスがムッとする。
「子供じゃないんだからへーきです」
「そう。ところで、何でエルフちゃんにも効いてないのかしら」
「私はハイアスと義姉妹なので、補助魔法がずっとついてます」
なるほど。
「化け物ねーあんた……」
「人あらざるモノにいわれたくないです……」
そのあとはしばらく互いの世界の話、魔法の話をするのをみんなで聞いていた。
ハイアスちゃんがとんでもない魔法使いということがシオンちゃんと小夜ちゃんの説明でよくわかる。
それらのあとに彼女らの名乗る偽名をみんなで決めた。
「あー……美桜時音、です」
「灰山明日華です」
早速新しい名前で名乗ってもらった。問題なさそうだ。
「じゃあ早速!おべんきょー、だね!」
桃音先輩がいつの間にか漢字、算数……各種ドリルを用意していた。
ご丁寧に日本語の辞典もある。
こうして新しいメンバーがFクラスへ(非正規な方法だが)入ることとなった。
異世界からの来訪者を迎え、学生生活はさらに賑やかになるのだが、それはまた別の話。




