Ep.011「彼女は私の……?」
小夜がメインです。
越神は気づいている。この世界を見ている、あなたに。
「今日は、そうね。この話を聞かせてあげる」
彼女は「観察日記」を手に取り、ページを開く。
「小夜ちゃんが見つけた、一人の少女の話よ」
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Fクラスのみんなが「オーバーラップズ」というチーム名に決まったその日のことだ。
ファーストフード店で合流した皆はしばらく話し込んだあとそのまま解散し、各々が自由行動をとっていた。
私……小夜は食品買い出し当番だったため商店街に寄り道している。
「よし。これで揃ったかな。忘れ物もなし……っと」
最後の品物も入手し店を出たとき、すでに辺りは暗くなっていた。
少し離れた川沿いの道を通り、寮へと向かう。
忘れたものはないか、しばらくメモとにらめっこしながら歩いていたためか、人とぶつかってしまった。こんな時間にこの通りを歩いているのは珍しい。
「すみま━━っ」
相手は息を飲むほどの美少女だった。きれいな顔立ち、高い身長、しかし痩せすぎてもいない。
そして一番目を惹くのはその目だ。
左目だけが淡い黄緑色をしていて……
(……?この感じは……っ)
彼女はうっすら微笑み、顔を急速に近づけてくる。普通の男なら卒倒しそうなものだがあいにく頭が混乱しているので堪能するようなことはなかった。
彼女はひっそりと私の耳元で呟く。
「━━街灯のない夜道は、気をつけて」
「……え?」
彼女はそれだけいって歩いていってしまう。
「街灯のない夜道……?」
だがここら一帯はほとんどの場所に街灯が設置されている。条件に合致する道はなかった気がする。
(イタズラか?しかし、あの時の感じは……)
彼女と目があったとき……具体的には左目を見たとき、魔力を感じた。
しかし、あり得るのか?
女神は魔法を持つものをFクラスに集まるよう運命操作をしたと言っていたはずだ。
Fクラスにいない魔法所持者がいるというのか?
「……聞いてみるか」
私は帰路を急ぐ。
◆
川沿いの道を抜けて街灯のない公園を通れば寮への大幅ショートカットができる。公園を迂回すると8分ほどのロスだ。
(……嫌な感じは、しないな)
私の予感は、予見能力のものだ。そのため的中率はほぼ100%。私はそのまま公園を抜けることにした。
◆
公園の半分を過ぎた時、私は軽く後悔した。
「なっ!?」
突然強烈なまでに嫌な予感を感じた。
思わず私は後ろに飛び退く。それと同時に、私のたっていた地面がえぐれ、ひっくり返った。
気づけば公園には結界のようなものがあり、それは認識阻害の魔法が組まれているようだった。
「グルル……」
目の前に現れた魔物は、かつて見た狼の魔物だ。
名前は『グリードウルフ』。しかし……
「ヌシ、といったところか」
やつには通常存在しないツノが生えている。長年生きるとああなるらしい。
「気をつけろと言われてなかったら、一撃食らっていたかも、な!」
私は武器を取り出し、なるべく音をたてずに始末した。
◆
「……というわけなんだ。心当たりはあるか?」
寮へ戻った私は夕食の最中に、先程の出来事を伝えた。
「ねぇ小夜ちー!その子って……紅い髪?こんな髪型?背高くなかった?」
そう言って桃音は両手で髪型をジェスチャーする。
「あ、ああ。紅い髪に、高身長、確かにそんな髪型だが……知ってるのか?」
桃音は大きく頷く。
「小さな頃のたった一人のおともだちでね……一度会いに行こうとは思ってたんだー。時園彩月ちゃん……この町にきたんだなぁ」
そうしみじみ呟いてスプーンを口に運ぶ。
「ちなみに彼女からは、魔力を感じた。これについて桃音、何か聞いてたりするか?」
「ふぃふぁりふぁひれるっふぇ!」
「……ご飯飲み込んでから答えてくれ……」
「んっ!……っふぅ。彼女はねー、『未来がみえる』って自称してたよ。インチキ扱いされてたけど私は信じてる」
そこで話を遮ったのは、のんきに電話をする女神様だった。
「あーもしもし聞こえる?あんた地球に来たりした?……え、来たことあるのね?で?……ふぅん。……あっそれ時園っていう子?あっ、やっぱり?でもどうしてそんなことしたのよ?……うっ……面目ございません……そう、もう問題はないのね?ならいいわ。……だけど念のため管理下におかせてもらいたいのだけれど……OK?じゃあいじるわ。それじゃー」
電話を終えた女神は視線が集まってることを確認し口を開く。
「あー……その子の眼は魔眼で間違いないわ。本人がいってたもの」
「……本人が?」
「ええ、未来神クルタナに電話して聞いたわ。『時園彩月ちゃんに、未来視能力あげた』って、はっきりと」
「……はあ」
「彼女の運命は今操作したわ。そのうちこちらに来るでしょう」
「手をつけるの早くないか?」
「魔法所持者を放置はできないでしょう…?」
それもそうだ。
「わーい彩月ちゃんにあっえる♪会えるるーん♪ごちそーさま!」
テンション高めになった桃音はるんるんしながら部屋へと帰っていった。
「って、桃音!今日は洗い物当番だろう?おい、待て桃音ー」
みくもにつかまった桃音はしぶしぶ洗い物を終わらせ、もう一度るんるんになりながら部屋へと帰っていった。
彼女と再会するのを心待ちにする桃音だが、
それはまた別の話だ。




