Ep.009「入学前から問題児」
越神は気づいている。この世界を見ている、あなたに。
「今日は、そうね。この話を聞かせてあげる」
彼女は「観察日記」を手に取り、ページを開く。
「美乃ちゃんがFクラスになったきっかけの話よ」
―――――――――――――――――――――――――――――
それは、2月下旬、春休みの真っ只中の話だ。
教師人は
「どういうことですか、校長!?この生徒はどう見ても問題だらけじゃないですか!」
そう叫ぶ教頭の手元にあるのは入学関係書類。ただし、とてつもなくレアな。
「一年の3割遅刻かつ、赤点も多い!こんな生徒を、どうして受け入れるんですか!?
我が校の信用に関わりますよ!」
「黙ってくれ。彼女は確かに生活が荒れていて、成績も芳しくはない。常識的に考えるなら入学を断るべきなのは確かだ。進学率が下がったり,留年率が高まるのは望ましくないからな」
「だったらなぜ!?」
教頭はどうしても納得できない、といった顔で迫る。
「忘れたか?我が校には問題児を効率的に預かることが出来るシステムがある事を」
そこで教頭はハッとして気づく。
「要塞クラス…ですか?あの、妙な連中が集まっている」
要塞クラス。それは通称で、正しくはFクラスのことだ。
成績不振、授業態度の悪さなどの問題がある生徒はここに転籍される。
寮生活を強いられ、公共料金の支払いまでも自分達でやらされるため、非常にめんどくさい場所なのだ。
「なに、使うべきときに使うってだけのことだろう?それに維持管理も寮の生徒に任せることが出来るからな。実質仕事が減るのだ」
悪い顔で校長が笑う。
「つまり、そこにいれてしまえば問題児の一人や二人、恐るるに足りんというわけだ」
「なるほど…申し訳ありません、私の考察不足でした」
「いや、キミは常識的判断をしただけだ、謝る事ではないよ。では引き続き入学の手続きの方を進めてくれ」
「はい!失礼いたします」
教頭は頭を下げたあと、校長室を後にして入学手続きのために奔走するのであった。
◆
「ひでぇ成績だな…」
改めて確認する。
「えー、恋雲美乃、4/5生まれ…趣味はマイ〇ラとエナドリ作り……」
身長体重などのプライベートな情報は無視して確認を進めていく。
一番とんでもないのはやはり遅刻回数だ。全体出席日数の実に三割を遅刻している。
義務教育だから何とかなったようなものだ。まともに入学しようとしたものなら、まず間違いなく門前払いを受けていることだろう。その点この高校を選んだのは僥倖といえるかも知れない。
彼は知る由もなかったが、実はここが5つめの受験先であり、すでに四つ察しの通り門前払いをうけているのだった。
「ゲームのやりすぎでたびたび遅刻するが、意外と周到なのか忘れ物は一度もしたことがない、か…妙なヤツだなー」
そんだけ周到なら目覚まし時計でもセットしとけ・・・・・・。
悪態をつきながらせっせと美乃を含む新入生全員の入学手続きを行っていく。
美乃が入学式すら遅刻するなど、今の彼は知らないが……それはまた別の話だ。




