Ep.006「男なんてキライだ」
桃音メインです。
越神は気づいている。この世界を見ている、あなたに。
「今日は、そうね。この話を聞かせてあげる」
彼女は「観察日記」を手に取り、ページを開く。
「桃音ちゃんが聞かせてくれた話よ」
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ある晴れた昼下がり。
テスト期間なため学校は午前で終わり、昼にもかかわらず駅の近くの商店街は、寄り道する生徒でごった返している。
商店街のなかでも、学生の溜まり場として特に愛用されているのは「雀の踊り場」という喫茶店だ。
値段が安く、座席が多いためである。
オーバーラップズの彼女らも例外ではなく、寄り道していた。
◆
「桃音ー」
目の前で机に突っ伏しながらゲームを続けている少女を呼ぶ。
「なーにーみくもん」
彼女は手を止めずにこちらに向き直る。ノールックプレイというやつだ。器用なやつだな……
「周り見て思ったんだけどさー」
「うん?」
彼女も周りを見渡す。
周りの座席の8割がカップルという状況……どうやら桃音も気づいたらしく、露骨に嫌そうな顔をした。
「桃音は彼氏とか憧れる?」
聞いたとたん、彼女の目から光が消えた……気がした。
「私はね、男の子がそもそも嫌いなの」
そういってゲーム機を置き、コップに刺さったストローを混ぜてからすする。
「みくもんなら、理由も魔法でわかるんじゃ?」
「人のプライベートを暴くために使いたくはないな」
飲み物を飲み終わったところでタイミングよく先刻頼んでいたポテトのおかわりが届く。
桃音は早速手をつけ、そのあとこちらを見て話し始めた。
「みくもんには教えてもいいや。……中学の時のことだよ」
少し悲しい、思い出話をーー
………………
…………
……
私はね、まだまた子供だったよ。
かなり強いって噂のゲーマーに勝って調子乗っちゃうくらいには。
「君、本当に最強だったの?信じらんないね」
私は煽ってた。自分の強みを見つけて錯覚してた。
「お前……ゼってぇ許さねぇからな」
そう吐き捨てて帰った彼を私は無様な負け犬くらいに思ってた。
◇
それからの一週間、私はいじめを受けた。
1日目、罵倒を浴びせられた。
2日目、靴を隠された。
3日目、ゲーム機を壊された。
4日目、いろんなタイミングで転ばされた。
5日目、カバンをボロボロにされた。
6日目、根も葉もない噂を流された。
そして7日目。
「もう、やめてよ!どうして!?たった一回ゲームに勝っただけでここまでするなんてバカなんじゃないの?」
「黙れ!!」
そう叫んだ彼は私の髪を引っ張りながら倒し、無理矢理背中にのし掛かってくる。
「お前に負けたことで俺の無敗記録に傷がついた。女に負けるなど、男の恥だ」
「痛い痛い!!離して!傷んじゃうっ!!」
「ふんっ!」
「嫌ぁぁぁぁ!!」
離すどころかさらに強く引っ張られあまりの痛みに叫ぶ。
それと同時に引っ張る力が突然消え、私はそのまま倒れてしまう。
「俺の勝ちだ。認めろ」
彼はそういって立ち上がる。
パラパラ……と何かが目の前に落とされる。
「この学校は俺のシマだ。お前は消えろ」
そう言い残して彼は静かに立ち去っていく。
助かった、と思ったのもつかの間、目の前に落ちたそれに気づき、凍りつく。
「……あぁ……そんな……嘘だ……」
それは、私の髪の毛だった。
とっさに頭をさわり、気づいた。ポニーテールがなくなっている。
ポケットに入れていた鏡を使い、震える手で確認するも。そこにいままでの自慢のポニーテールは存在しなかった。さんざん引っ張られ傷んだ髪。乱雑にきられた髪の束……醜い髪だ。
「男なんて……キライだ……」
ーー私はすぐに転校した。
変わり果てた髪を友達の少女は心配してくれたけど、心は変わらなかったよ。
……
…………
………………
「そんなわけで、私は男の人キライ」
「……とりあえずその男殺っていい?」
「みくもんか言うと冗談に聞こえないよ?」
「尋常じゃない殺意がわいたよ……」
みくもは何も言わずに席を立ち桃音のとなりに座り直し……何となく、桃音を抱き締める。
「ちょいっ!?なっなにっ!?」
「辛いことを思い出させたのが、申し訳ない」
桃音は動かずに返事する。
「大丈夫。要塞クラスは世界を越えて繋がってるんだよ?嫌な思い出程度で揺らぐ関係じゃないよ」
「その通りだ」
桃音の背後の座席から返事された。
その人は立ち上がり、こちらを覗き込む。
「小夜?!」
「やー、ぐ、偶然だねー!すごいたまたま」
隣にはこゆみんもいた。ポテト食ってる。
「こゆみんはしゃべらない方がいいね」
里花までいるではないか。ジュース飲んでる。
反対側……みくもんの座っていた方の背後にも4名ともいた。
「なにやってるの、みんな……w」
どうも、ずっといたらしい。こゆみんの発言からして、わざとなんだろう。盗み聞きか……
小夜が咳払いをし、話を戻す。
「事実、私達は世界さえも越える繋がりなのだ。じゃんじゃん頼れ。密告でもいい。ここにいるやつらは間違いなく手をさしのべる。そういう人ばかりなのだから安心してくれ」
ふとみくもんを見ると、うっすらと笑っている。いや、みくもんだけではない。みんなが微笑んでくれている。
(あはっ。この人達にはかなわないなぁ)
「仲間かぁ……よし!」
私は靴を脱いで机に乗る。
店員が白目をむいてこちらに来るのが目に入ったが、気にせず続ける。
「いまここに!!私たちはチームを結成します!!我らは、『オーバーラップズ』!!」




