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彼と彼らと私のおはなし  作者: たいやき
12/18

私と決心

もう空は暗くなり始めてきていた。

道路の側にたたずむ古い電灯がひっそりと道路を照らしている。

校舎を出て駅に向かうまでの短い道のりで、一体何人の下校中の生徒を追い越してきただろう。

手を繋いでいちゃつきながら歩くカップルや、自転車をのろのろ押しながら歩く男子生徒の塊。

みんな、自分の横を全速力で走り抜いていく私を無言で見送った。

「なにあれw」というひそひそ声も聞こえてきた。

だが、気にしている余裕はない。

だって電車は待ってくれない。


周りの目を気にしないようにして走り続けると、駅が見えてきた。

電車に乗ろうとする学生や仕事終わりのサラリーマンの姿が見える。

息を切らしながら駅に走り込み、電車の発着時刻を示す電光掲示板に目をやる。

『×× 6:49』 

時計は6時47分を示している。


(間に合った!)


急いで改札を通り、電車が止まるホームへと向かう。

階段を使って向かい側のホームまで再び走る。

もう制服についた涙は乾いてしまっていた。

その代わりに制服の中が汗でしっとりと濡れていた。


ホームには既に電車が止まっている。


「まもなく、××行きの電車が2番ホームより発車致します」


アナウンスが流れると同時に一番近くのドアから電車に乗り込んだ。

息を整えつつ、周りを見渡してみる。

この時間の電車は仕事が終わった会社員の姿が多くあった。

ちらほら学生の姿も目にとまる。

席は殆ど埋まっていた。

立っている人も少なくない。


電車のドアが閉まり、ゆっくりと動き出した。

閉まったドアに背中を預けて目を閉じた。



明日、ほのかに報告しよう。

他の仲良い子たちにも言おうかな。

祐兎くんともちゃんと話をしよう。

「心の病気だから」なんて理由でふられちゃったけど、なんとなく納得いかない。

どんな心の病気なのかも分からないままだし。

あんな簡単に諦めたくない。

だって、初恋だよ?

初めて人を好きになったのに、あっさり負けを認めたくない。

いろんなことがわかって、それでもやっぱりだめだとなったら、それは仕方ないけど。

まだ何も分からないから。

祐兎くんの何も知らない。

彼も私のことを何も知らない。


とにかく、

明日からまた、

初恋を始めよう。



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