表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マインドピース  作者: 黒崎蓮、宮原周一、うみうし、神山咲、佐藤葵、胃薬
PR
11/16

報われない苦労

目が覚めた。

そして驚いた。

さっきまで俺は道路で友達二人と話しながら歩いていたはずだったのに。

記憶があるのは交差点までだ。

あそこで確か、不注意で文美が道路に飛び出してしまった。

そして車に轢かれたところまでは覚えている。

あれは…もう助からないだろう。

そんな目をそむけたくなるような光景の次の瞬間、俺はベッドに寝ている状態で目を覚ました。

あれは夢だったのだろうか。

もしそうだったらどんなにいいことだっただろうか。

あの光景が夢ではないと確信をもって言える。

なぜなら、部屋の日めくりカレンダーの、八月七日のページを俺はもう何度も破っているからだ。



日めくりカレンダーを一枚破り、それを粉々に引きちぎってゴミ箱に捨てる。

現れる8の数字。

意味はなくても、何度もそうしたくなる気分になる。

気分が悪いのもあるけれど、何よりも八つ当たりが大きい。

そろそろこのループも二ケタ近くになる。

全く解決策も見えないまま何度も文美が死ぬ瞬間を見せられる。

そろそろ気が狂いそうだ。

途中から文美が死なないように手を回したりした。

けどその苦労も何の意味もなく彼女は死んでしまう。

前回は思い切ってお前は今から死ぬからおとなしくしていろと言ってしまったのにも関わらず、だ。

彼女はそんなことはないと笑っているだけだった。

そしてさらに気分を悪くさせるのは良則だ。

彼は文美が死ぬ直前、笑っていた。

確かにあれは笑顔だった。

まるで文美が死ぬのを楽しむような笑顔。

あいつはきっとわかっている。

文美が死ぬのをわかって、それでああやって見て笑っているんだ。

許せない。

もう何年も一緒にいて、俺は二人が付き合っているとさえ思っていた。

それでいて俺たちは仲のいい友達だと思っていた。

それを裏切るようなその行為、どんな理由があっても許せない。

今度は徹底的に邪魔をしてやる。

俺のこの身が滅んでもいい、必ず良則の邪魔をして文美を助けて見せる。



運命を感じた。

もしくは神様の悪戯か。

それだけ聞けばとてもいいものに聞こえる。

けど、実際は最悪だ。

二時間かけて手を尽くしたというのに、今俺は文美と良則の三人で歩道を歩いている。

「されでさ、あいつ俺に大学受験しろなんて言うんだ。前からずっと就職するって言ってるのにさ」

「良則の成績ならそういわれてもおかしくないからねー。私に勉強教えてよ」

「なんだかんだいって数か月前から教えてる気がするけど?」

二人はあたかも仲よさげに話をしている。

だが、何を考えているかはわからない。

特に良則はそうだ。

「敬、体調悪いの?」

「少しね。今朝嫌な夢見たからさ」

「あー、電話で言ってた私が死ぬとかいうやつ?」

「敬、そんな夢見たのか。大丈夫大丈夫、正夢って口に出したら起きないらしいぜ」

「そうだね。そうだといいなって思ってるよ」

何が正夢だ。

お前が見殺しにしているだけだろう。

良則を睨む。

この道は一回前と同じだ。

あと数百メートル先の交差点で文美が道へ飛び出してしまい、トラックに轢かれる。

よく覚えている。

その前に文美をなんとかして救えばいい。

歩く速度を遅くして信号が赤から青に変わるまで時間を稼ぐとか。

とりあえず何かをすればいいんだ。


ああ、でも俺はなんて馬鹿なんだ。

文美が死ぬ方法もタイミングも全く同じときなんて一度もなかったじゃないか。

前回もその前もその前の前も、違う死に方をしたじゃないか。

未来を知っている人がそれを食い止めようとしたって結局結果は変わらないものだって、俺は知っているじゃないか。

そんなことを、笑顔で振り向く彼女へ向かって、車が突っ込んでいくのを見ながら、思った。



そして俺は手を伸ばした。



やっと終わるんだ、この連鎖が。

1人の犠牲によって、1人が助かって。

これでよかったんだろうかって思う。

けど、きっとそれ以外に方法はきっとなかった。

お前もそう思うだろう?



夕暮れ時、学校の屋上。

文美はそこにいた。

フェンスの向こう側に立つ彼女の背中は悲しみにあふれていた。

「危ないよ」

声をかける。

「知ってるよ」

「そう」

彼女は空を見上げたまま、こちらを向くことはなかった。

「敬、死んじゃったね」

「文美を庇って、ね」

「他人事みたいに言うんだね。自分がそう仕向けたくせに」

「知ってたんだ」

なんとなく、そんな気はしてた。

敬もいつからかループに気が付いていた。

文美が気が付いていてもおかしくない。

「私はね、知ってたよ。敬が鍵だって。だから耐えられたの。自分が何度死んだって敬が生きているなら大丈夫だった」

「俺はそんなお前がずっと嫌いだったよ」

「それも知ってた」

何でも知っているんだな。

そういえば昔から何故だか彼女には隠し事ができなかった。

「でも、もういいよね。敬、いなくなっちゃったから」

落ちるな、と思ったらもう彼女の姿はそこにはなかった。

「もう疲れたの」

最後の言葉が残響のように響いた。

「俺も疲れたよ」

ポケットから拳銃を取り出す。

これを手に入れたのはもう何年も前のように感じる。

けど、手に入れたのはつい一週間前なんだよな。

エアガンにはない重さ、モデルガンでも表現できないリアルさ。

当たり前だ、本物なのだから。

「やっと終わりだ」

どこを撃てば確実に死ねるだろうか。

やはり、こめかみか。

そういえば少し上を向かせると確実に死ぬってどこかに書いてあった気がする。

いや、あれは自殺に見せかける殺害方法だっただろうか。

何でもいい、俺は死ぬんだ。

敬が死んで、文美も死んだ。

次は俺だ。

ここまでずいぶんとかかった。

これで、終わりだ。


銃声が響く。

次の瞬間、世界は暗闇に包まれた。


                     written by 宮原周一

どうも、宮原周一と申します。

今回は「同じ二人」「報われない苦労」の二作です。

思いのままに書いていいと言われましたが、どうも方向性を間違った気がしますね。

「報われない苦労」のほうは締切直前に思いついて書き上げたものなので少し話が荒いかもしれません。

ただ、二つとも「これは面白いだろう」と感じて書いたものなので、読んで楽しんでいただけると幸いです。

最後に宣伝ですが、宮原周一で検索していただけるとほかの小説も出てくると思います。

そちらもぜひ読んで欲しいです。

ではまたいつかどこかで私の小説を読んでくれることを願います。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ