第三十一話「気づけば秋だった」
離れたのは、
気持ちじゃなくて時間だった。
## 第三十一話「気づけば秋だった」
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気づけば秋だった。
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東京の空は少し高くなっていた。
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しょうまは会社を出る。
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腕時計を見る。
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午後七時。
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残業だった。
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最近はそんな日が増えていた。
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電車へ乗る。
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座れない。
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相変わらずだった。
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スマホを見る。
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通知はない。
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別に気にならない。
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本当に。
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気にならないはずだった。
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ふと、
写真フォルダを開く。
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海。
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定食屋。
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夜のドライブ。
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沖縄の夏。
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数か月前の写真だった。
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「早いな」
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思わず呟く。
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ついこの前のことみたいだった。
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でも、
もう数か月前。
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電車が駅へ到着する。
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スマホを閉じる。
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その時だった。
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通知が一件。
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画面を見る。
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たかとだった。
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しょうまは少し驚く。
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最後に連絡したのは、
いつだっただろう。
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二週間前か。
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三週間前か。
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そんなものだった。
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メッセージを開く。
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『台風やばい』
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しょうまは吹き出した。
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それだけだった。
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写真もない。
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説明もない。
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本当にその一言だけ。
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しょうまは立ったまま返信する。
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『沖縄だろ』
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送信。
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数秒後。
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既読。
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『それな』
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しょうまは少し笑った。
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昔みたいに、
毎日話すわけじゃない。
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毎週会うわけでもない。
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でも、
完全に消えたわけでもなかった。
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電車のドアが閉まる。
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窓に映る自分を見る。
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あの夏は終わった。
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でも、
終わっていないものもあった。




