第三十話「思い出すのは」
人は、
特別なことより、
何でもないことを思い出す。
## 第三十話「思い出すのは」
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東京へ戻って一週間。
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仕事は相変わらず忙しかった。
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メール。
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会議。
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電話。
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気づけば夕方になっている。
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そんな毎日だった。
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昼休み。
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しょうまはコンビニへ入った。
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飲み物を取る。
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おにぎり売り場を見る。
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そして、
少しだけ立ち止まった。
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ない。
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やっぱりない。
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「ジューシーおにぎり」
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思わず笑った。
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沖縄にいる時は、
別に気にしていなかった。
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でも、
なくなると気になる。
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不思議だった。
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レジを済ませる。
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外へ出る。
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ベンチへ座る。
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空を見る。
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ふと、
思い出した。
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海へ行った日。
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定食屋。
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コンビニの駐車場。
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夜のドライブ。
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いろいろあった。
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でも、
一番思い出したのは。
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『便利な言葉だな』
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だった。
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しょうまは吹き出した。
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何がおかしいのか、
自分でも分からない。
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でも、
思い出してしまった。
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スマホを取り出す。
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少しだけ考える。
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そして、
メッセージを送る。
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『東京にもジューシーおにぎり置け』
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送信。
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数秒後。
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返信が来る。
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『知らん』
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しょうまは笑った。
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『責任者だろ』
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『違う』
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『頑張れ』
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『他人事だな』
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どこかで聞いた会話だった。
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画面を見ながら、
しょうまは少し笑う。
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沖縄は遠い。
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でも、
思ったより遠くなかった。




