第二十九話「日常」
特別な時間は終わる。
そして、
日常は何事もなかったように始まる。
## 第二十九話「日常」
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東京。
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電車のドアが閉まる。
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人が多い。
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相変わらずだった。
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しょうまは小さくため息をつく。
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数日前まで、
沖縄にいた。
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海を見て。
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車に乗って。
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ジューシーおにぎりの話をして。
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どうでもいいことで笑っていた。
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でも、
今はもう違う。
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改札を抜ける。
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アパートへ向かう。
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見慣れた道。
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見慣れた景色。
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鍵を開ける。
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部屋へ入る。
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静かだった。
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荷物を置く。
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ベッドへ座る。
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スマホが震えた。
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たかとからだった。
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『着いたか』
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短いメッセージ。
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しょうまは少し笑った。
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『着いた』
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送信する。
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数秒後。
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『お疲れ』
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それだけだった。
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それだけなのに、
少し嬉しかった。
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スマホを置く。
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窓の外を見る。
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東京の空。
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沖縄とは違う空。
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でも、
不思議だった。
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前より少しだけ、
頑張れそうな気がした。
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また帰る場所がある。
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また会いたい人がいる。
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それだけで、
十分だった。
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机の上に、
沖縄で買ったお土産が置かれている。
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しょうまはそれを見て、
少しだけ笑った。
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「そういえば」
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誰もいない部屋で呟く。
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「ジューシーおにぎり買うの忘れた」
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そして、
一人で笑った。




