第二十八話「帰り道」
見送る側にも、
帰り道はある。
## 第二十八話「帰り道」
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自動ドアが閉まる。
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しょうまの姿が見えなくなった。
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たかとはしばらくその場に立っていた。
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特に理由はない。
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ただ、
すぐに車へ戻る気になれなかった。
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「帰るか」
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誰もいないのに呟く。
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そして少し笑った。
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数日前から、
何度も聞いた言葉だった。
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帰るか。
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帰らないな。
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そんなことばかり繰り返していた。
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駐車場へ戻る。
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車に乗り込む。
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エンジンをかける。
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ラジオが流れ始めた。
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でも、
すぐに消した。
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なんとなくだった。
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空港を出る。
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来る時は、
二人だった。
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帰る時は、
一人だった。
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当たり前のことなのに、
少しだけ変な感じがした。
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信号待ち。
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助手席を見る。
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誰もいない。
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「静かだな」
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思わず呟く。
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別に、
普段からずっと喋っていたわけじゃない。
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黙っている時間も多かった。
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でも、
誰かがいるのと、
いないのは違った。
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スマホが震える。
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信号待ちの間に画面を見る。
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しょうまからだった。
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『保安検査通った』
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短いメッセージ。
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たかとは少し笑った。
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そして返信する。
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『了解』
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それだけ。
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本当は、
もっと何か書こうと思った。
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でも、
思いつかなかった。
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信号が青になる。
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車は走り出す。
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沖縄の空は、
今日も変わらず青かった。
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でも、
夏休みは終わった。
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それだけは確かだった。




