第二十七話「またな」
別れの言葉は、
意外とあっさりしている。
## 第二十七話「またな」
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車は駐車場へ入った。
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エンジンが止まる。
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静かになった。
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二人とも、
すぐには降りなかった。
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「着いたな」
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たかとが言う。
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「着いたな」
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しょうまも答える。
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それだけだった。
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飛行機は待ってくれる。
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でも、
時間は待ってくれない。
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しょうまはシートベルトを外した。
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後部座席から荷物を取る。
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「重そうだな」
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「お土産」
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「買いすぎだろ」
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「親に言え」
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二人で笑った。
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最後まで、
そんな感じだった。
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車を降りる。
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空港の入口が見える。
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旅行客。
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家族連れ。
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観光客。
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いつもと同じ風景。
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なのに、
今日は少し違って見えた。
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「じゃあ」
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しょうまが言う。
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たかとは頷いた。
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「またな」
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短い言葉だった。
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「またな」
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しょうまも答える。
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それだけ。
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本当にそれだけだった。
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握手もしない。
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ハグもしない。
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特別なことは何もない。
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でも、
十分だった。
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しょうまは歩き出す。
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数歩進む。
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そして振り返る。
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たかとはまだそこにいた。
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スマホを見ている。
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たぶん、
見送るのが照れくさいだけだった。
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しょうまは少し笑う。
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手を上げる。
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たかとも気付いて、
軽く手を上げた。
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それだけだった。
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空港へ入る。
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自動ドアが開く。
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冷たい空気が流れてくる。
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その瞬間、
ふと思った。
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今回の夏休みも、
もう終わりか。
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寂しい。
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そう思った。
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でも同時に、
また帰ってこようとも思った。
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沖縄がある。
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家族がいる。
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そして、
待っている友達がいる。
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それは、
思っていたよりずっと幸せなことだった。




