第二十四話「まだ大丈夫」
本当に寂しい時ほど、
人はどうでもいい話をする。
## 第二十四話「まだ大丈夫」
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車はゆっくり走り続けていた。
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「そういえばさ」
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しょうまが言う。
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「ん?」
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「ジューシーおにぎり買った?」
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たかとは吹き出した。
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「まだ言ってるのか」
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「大事だぞ」
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「もう聞いた」
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「帰る前に食っとかないと」
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「三回は食っただろ」
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「たぶん五回」
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「食い過ぎだろ」
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二人で笑った。
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話の内容は、
どうでもよかった。
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本当にどうでもよかった。
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でも、
黙るのは少し嫌だった。
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「そういえばさ」
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今度はたかとが言う。
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「ん?」
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「高校の時」
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「うん」
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「お前、文化祭で迷子になってたよな」
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しょうまは思わず笑った。
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「あったな」
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「校内で迷子」
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「今考えても意味分からん」
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「伝説だった」
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「やめろ」
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また笑う。
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気づけば、
昔話ばかりしていた。
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高校。
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大学。
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バイト。
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免許取りたての頃。
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どれも、
ついこの前のことみたいだった。
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でも、
もう戻れない時間だった。
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「早いな」
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しょうまが言う。
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「何が」
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「いろいろ」
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たかとは少しだけ笑った。
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「年取ったな」
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「まだ二十代だぞ」
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「もう二十代だろ」
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二人で笑った。
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その時、
しょうまのスマホが震えた。
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母からのメッセージだった。
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『飛行機の時間、確認した?』
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しょうまは画面を見る。
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数秒、
何も言わなかった。
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「どうした?」
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たかとが聞く。
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しょうまはスマホを閉じる。
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「いや」
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少しだけ笑った。
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「そろそろ現実見ろってさ」
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たかとは何も言わなかった。
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ただ、
少しだけ前を見た。
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車は走り続ける。
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でも、
時間だけは止まってくれなかった。




