第二十三話「当たり前じゃない」
当たり前だと思っていた時間は、
意外と簡単に終わってしまう。
## 第二十三話「当たり前じゃない」
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車は海沿いの道を走っていた。
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窓の外には青い海が見える。
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「暑っ」
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しょうまが言う。
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「沖縄だからな」
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「東京も暑いぞ」
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「人が多いから余計暑そう」
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「それはある」
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二人で笑った。
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信号待ち。
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たかとが窓の外を見る。
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「あの店」
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「ん?」
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「前、よく行ってたよな」
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しょうまも外を見る。
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大学の頃、
何度か行ったカフェだった。
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「あったな」
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「レポートやるって言って」
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「全然やらなかった」
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「ずっと喋ってた」
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また笑う。
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しばらく沈黙。
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そして、
たかとがぽつりと言った。
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「社会人になるとさ」
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「うん」
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「会うの難しくなるな」
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しょうまは少し驚いた。
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たかとから、
そんな話をすることは珍しかった。
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「まぁな」
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短く答える。
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「学生の頃は」
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たかとは続けた。
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「暇だったら連絡して」
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「そのまま会ってたしな」
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「確かに」
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「今は予定合わせないと無理だ」
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しょうまは頷いた。
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それは東京でも同じだった。
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仕事。
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生活。
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責任。
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少しずつ増えていく。
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「でもさ」
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しょうまが言う。
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「こうやって会えてるじゃん」
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たかとは少し笑った。
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「まぁな」
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それだけだった。
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でも、
どこか嬉しそうだった。
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車はゆっくり進む。
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空は相変わらず青い。
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今日という日は、
まだ終わらない。
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でも、
ずっと続くわけでもなかった。




