第二十話「そういえばさ」
ずっと続くと思っていた。
でも、 ずっと続くものなんてなかった。
## 第二十話「そういえばさ」
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定食屋を出る。
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外はまだ明るかった。
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「腹いっぱい」
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しょうまが言う。
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「食い過ぎだろ」
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「唐揚げが悪い」
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「店のせいにするな」
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二人で笑った。
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車に乗り込む。
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エアコンが動き始める。
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「帰る?」
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しょうまが聞く。
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「帰るか」
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たかとが答える。
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数分後。
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車はコンビニへ入った。
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「帰らないじゃん」
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「喉渇いた」
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「さっき飲んだだろ」
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「別腹」
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「便利な言葉だな」
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また笑った。
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飲み物を買う。
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車へ戻る。
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エンジンは切ったまま。
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窓を少し開ける。
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風が入ってきた。
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「そういえばさ」
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たかとが言った。
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「ん?」
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「大学の時覚えてる?」
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「何が」
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「卒業旅行行こうって話」
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しょうまは笑った。
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「あったな」
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「結局行かなかった」
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「みんな予定合わなかったからな」
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「そうだったな」
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しばらく沈黙が続く。
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「まぁ」
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しょうまが言う。
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「今なら金はある」
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「時間がない」
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たかとが即答した。
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二人で笑った。
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笑ったのに、
少しだけ寂しかった。
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大学の頃は、
時間だけはたくさんあった。
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集まろうと思えば集まれた。
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会おうと思えば会えた。
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でも、
今は違う。
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仕事があって。
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住む場所も違って。
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簡単には会えない。
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「不思議だな」
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しょうまが言う。
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「何が」
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「大学の時はさ」
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「うん」
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「いつでも会えると思ってた」
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たかとは少しだけ笑った。
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「俺も」
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短い返事だった。
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それ以上は言わなかった。
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言葉にすると、
少し照れくさかった。
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コンビニの駐車場。
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特別な場所じゃない。
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でも、
こうして話せる時間が、
当たり前じゃなくなっていることだけは分かった。
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「そういえばさ」
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今度はしょうまが言う。
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話したいことは、
たぶんもう話している。
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それなのに、
また次の話題を探してしまう。
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もう少しだけ。
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もう少しだけ、
この時間が続けばいいと思った。




