第十九話「変わらない店」
なくなったものもある。
でも、
変わらないものもあった。
## 第十九話「変わらない店」
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車が駐車場へ入る。
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しょうまは窓の外を見た。
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そして笑った。
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「本当に来たな」
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「俺が言ったんだぞ」
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たかとが言う。
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目の前には、
大学時代によく通った定食屋があった。
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「あれ?」
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しょうまが看板を見る。
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「少し変わった?」
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「看板な」
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「やっぱりか」
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「でも店はそのまま」
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しょうまは少し安心した。
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最近は、
変わった景色ばかり見ていた気がする。
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取り壊された建物。
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新しくできた店。
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変わった街並み。
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でも、
ここは残っていた。
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「まだ潰れてなかったか」
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しょうまが言う。
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「失礼だな」
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たかとは笑った。
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二人で店へ入る。
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冷房の風が気持ちよかった。
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「懐かしいな」
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「だな」
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店内を見回す。
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昔と変わらない。
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テーブルも。
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椅子も。
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壁のメニューも。
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「あ」
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しょうまが指を差す。
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「まだある」
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「何が」
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「唐揚げ定食」
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たかとは吹き出した。
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「お前それしか食わなかっただろ」
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「うまいからな」
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「毎回言ってた」
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二人で笑った。
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注文を済ませる。
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しばらくして料理が運ばれてきた。
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「おぉ」
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しょうまは少し嬉しそうだった。
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「変わってないな」
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一口食べる。
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「うまい」
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「変わってない?」
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「変わってない」
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即答だった。
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たかとも笑う。
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「大学の頃さ」
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「ん?」
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「テスト前なのに来てたよな」
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「あったな」
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「勉強するって言いながら」
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「してなかった」
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「してなかったな」
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二人で笑った。
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「卒論の時も来てた」
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「現実逃避な」
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「バレてたか」
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「全部バレてた」
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また笑う。
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窓の外を見る。
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大学生だった頃。
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社会人になった今。
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いろいろ変わった。
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でも、
こうして笑える相手は変わらなかった。
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それが少しだけ嬉しかった。




