第十五話「帰り道」
楽しい時間ほど、
帰り道が少し寂しい。
## 第十五話「帰り道」
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海をあとにする。
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夕日はもう半分沈んでいた。
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車がゆっくり走り出す。
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しばらく二人とも何も話さなかった。
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嫌な沈黙ではない。
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昔からそうだった。
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無理に話さなくても平気だった。
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「腹減ったな」
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最初に口を開いたのは、
たかとだった。
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しょうまは笑う。
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「さっき沖縄そば食っただろ」
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「別腹」
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「高校生かよ」
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「育ち盛りだからな」
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「何歳だと思ってる」
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二人で笑った。
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信号待ち。
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コンビニの看板が見えた。
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「あ」
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しょうまが指を差す。
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「寄る?」
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「寄る」
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即答だった。
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車を停める。
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冷房の効いた店内へ入る。
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アイスコーナーの前で立ち止まる。
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「まだそれ食うのか」
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たかとが笑う。
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「うまいからな」
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「大学の頃から変わらんな」
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「お前もだろ」
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結局、
昔と同じアイスを手に取った。
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レジを済ませる。
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車へ戻る。
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エンジンはかけない。
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窓を少し開ける。
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夜風が入ってきた。
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遠くで虫の声が聞こえる。
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「そういえば」
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たかとがアイスを食べながら言う。
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「東京のコンビニって違うの?」
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「違う」
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「何が?」
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しょうまは少し考えた。
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「ジューシーおにぎりがない」
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たかとは吹き出した。
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「そこかよ」
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「大事だぞ」
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「普通のおにぎり食え」
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「違うんだよ」
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「またそれか」
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しょうまは笑う。
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「あとソーメンチャンプルーもない」
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「確かに」
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「弁当コーナー見て悲しくなった」
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「お前だけだろ」
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「いや、沖縄県民は分かる」
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たかとは少し考える。
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「それは分かるかもしれん」
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「だろ?」
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しょうまは少し嬉しそうに笑った。
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「帰ってきてから何個食った?」
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「ジューシーおにぎり?」
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「うん」
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「覚えてない」
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「絶対三個以上だろ」
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「否定できない」
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二人で笑う。
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「帰る前にもっと食っとけ」
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「言われなくても食う」
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「だから太るんだよ」
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「うるさい」
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また笑った。
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コンビニの駐車場。
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特別な景色じゃない。
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でも、
こういう時間が好きだった。
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何でもない話をして、
何でもないことで笑う。
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大学生の頃から、
ずっと変わらない時間だった。
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「そろそろ行くか」
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たかとが言う。
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「だな」
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アイスの棒を捨てる。
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車のエンジンがかかる。
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帰り道。
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でも、
今日はまだ終わってほしくなかった。




