第十三話「予定のない午後」
昔と同じ休日。
でも、
少しだけ違う休日。
## 第十三話「予定のない午後」
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店を出る。
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相変わらず蒸し暑い。
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車に乗り込む。
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たかとがエンジンをかける。
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エアコンの風が出る。
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「生き返る」
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しょうまがシートに体を預けた。
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「大げさだな」
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「東京より暑い」
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「それはない」
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「いや、東京は暑いだけ」
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「沖縄は?」
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「蒸し暑い」
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「同じだろ」
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「違う」
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たかとは笑った。
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「その理論、毎年聞いてる気がする」
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「毎年思うからな」
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車はゆっくり走り出す。
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しばらく沈黙が続く。
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嫌な沈黙じゃない。
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昔からそうだった。
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無理に話さなくても平気だった。
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信号待ち。
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「このあとどうする?」
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しょうまが聞く。
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「決めてない」
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「相変わらずだな」
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「お互い様」
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大学生の頃もそうだった。
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予定なんてなかった。
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講義が終わったら集まる。
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暇だから出かける。
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夕方になったら帰る。
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それだけだった。
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でも今は違う。
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たかとのスマホが震える。
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画面を見る。
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会社のグループLINEだった。
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「仕事?」
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「うん」
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「休みなのに大変だな」
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「まぁな」
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短く返事を打つ。
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その横顔を見ながら、
しょうまは少し思った。
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大学生の頃にはなかった顔だった。
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責任を持つ人の顔。
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知らない時間が、
そこにはあった。
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自分も同じなのかもしれない。
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東京で過ごした数か月。
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満員電車。
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終電間際の駅。
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狭いワンルーム。
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同期との飲み会。
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少しずつ、
大学生だった頃とは違う生活になっていた。
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それでも。
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今こうして隣にいると、
昔に戻ったような気がする。
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「なあ」
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「ん?」
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「海でも見る?」
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たかとが言った。
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しょうまは少し笑う。
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「予定ないしな」
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「お互い様だろ」
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車は海の見える道へ向かった。




