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一歩、二歩、三歩。  作者: ともり。


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12/32

第十二話「いつもの店」

変わるものはたくさんある。

でも、

変わらないものもある。

## 第十二話「いつもの店」

---


翌朝。


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九時過ぎ。


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エアコンの音で目が覚めた。


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沖縄の夏。


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カーテンの隙間から強い日差しが差し込んでいる。


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東京のアパートとは違う。


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実家の天井を見上げながら、


しょうまは少しだけ笑った。


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スマホを見る。


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通知が一件。


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たかとだった。


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『起きた?』


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『起きた』


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すぐに返信が来る。


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『昼どうする?』


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少し考えて、


しょうまは打ち込んだ。


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『久しぶりに沖縄そば食べたい』


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既読。


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数秒後。


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『昨日も食っただろ』


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『あれ空港のやつ』


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『同じだろ』


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『違う』


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『面倒くさいな』


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『褒め言葉?』


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『違う』


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しょうまは吹き出した。


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『大学の時よく行ってた店行こうぜ』


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『まだあるかな』


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『あるだろ』


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『潰れてたら笑う』


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『笑えん』


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待ち合わせは十二時。


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車に乗り込む。


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「おはよう」


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「もう昼だぞ」


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「夏休みだから」


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「便利な言葉だな」


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二人で笑った。


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車はゆっくり走り出す。


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「そういえば」


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しょうまが窓の外を見ながら言う。


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「今年も旧盆と被らなかったな」


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「あー」


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たかとが頷く。


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「被ったら面白かったのに」


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「何が」


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「友達みんな集まるじゃん」


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「確かに」


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「社会人になると全員揃わんし」


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「それはある」


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少しだけ静かになる。


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大学生の頃は、


会いたい時に会えた。


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でも今は違う。


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仕事。


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予定。


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住む場所。


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少しずつ変わっていく。


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昔よく通った沖縄そば屋へ着く。


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店の前を見る。


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「あった」


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思わず声が出た。


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「良かったな」


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たかとが笑う。


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「なんか安心した」


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店へ入る。


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出汁の香り。


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少し色褪せたメニュー。


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壁の写真。


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大学生の頃とほとんど変わっていない。


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「懐かしいな」


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「だな」


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席へ座る。


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「何にする?」


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たかとが聞く。


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しょうまはメニューを開く。


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数秒後、


閉じた。


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「ソーキそば」


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「即決か」


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「昔からこれ」


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「知ってる」


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その一言に、


しょうまは少しだけ笑った。


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しばらくして、


そばが運ばれてくる。


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湯気。


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出汁の香り。


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柔らかい肉。


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しょうまは一口食べた。


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「うま」


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「大げさだな」


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「東京で食えん」


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「食えるだろ」


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「違うんだよ」


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「便利な言葉だな」


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「お前覚えたな」


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また笑った。


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ふと窓の外を見る。


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向かいの建物に足場が組まれていた。


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「あれ?」


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「ん?」


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「向かい工事してない?」


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たかとも窓の外を見る。


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「あー」


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「本当だ」


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よく見ると、


建物の一部は取り壊されていた。


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「結構なくなってるな」


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「だな」


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「何できるんだろ」


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「どうせマンション」


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「夢がないな」


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「沖縄だぞ」


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「確かに」


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二人で笑う。


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しばらく工事現場を眺める。


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しょうまがぽつりと言った。


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「俺が次帰ってくる頃には出来てるかな」


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たかとは少し考える。


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「その頃にはまた東京だろ」


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「まぁな」


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しょうまは頷いた。


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当たり前のことだった。


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でも、


少しだけ胸が痛かった。


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工事は進む。


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街も変わる。


---


時間も進む。


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何も変わらないままではいられない。


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それはきっと、


自分たちも同じだった。


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「ごちそうさま」


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店を出る。


---


相変わらず蒸し暑い。


---


「あっつ」


---


しょうまが顔をしかめる。


---


「沖縄だからな」


---


「便利な言葉だな」


---


「お前が始めたんだろ」


---


また笑った。


---


空は真っ青だった。


---


夏休みは、


まだ続いている。


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