第4話「畑と罠づくり」
井戸が使えるようになったので、次は食糧だ。
まずは備蓄を把握するため、倉庫に案内してもらった。
そこには、意外にも大量のジャガイモがあり、鑑定すると——
ジャガイモ:★1
味:マズイ
保存状態:良い
種芋としての利用:可能
……エグ味すごいもん、そりゃあマズイよ。
ただ、これだけの量を状態良く保管しているあたり、
農業を理解している人が村にいる気配がする。
「他の食糧はありますか?」
「水辺に行けば魚が、森に行けば果実や山菜があります。ただ、どちらも魔獣に遭遇するリスクがあり、狩り手が少ない今は戦えません」
「その魔獣って……食べられます?」
「食べられますよ。特に畑を荒らすボアは美味しいですよ」
鑑定。
ボア:イノシシ
味:美味しいが獣臭あり(調理に工夫が必要)
おぉー、ジビエ好きなのよぉ!
「よし、イノシシ狩ろう。ステーキにして、ジャガイモはマッシュしてポテサラにしよう!」
魚と獣が狩れれば栄養バランスも取れる。
そうなれば村民の健康状態もパフォーマンスも上がる。
その先の廃村再建の基盤にもなる。
「畑はどこでしょうか?」
案内された畑は、広さにして十五反。
サッカーコート二面分ほどだ。
「いや広すぎでしょ……。
こりゃ人手足りなくて魔獣にやられ放題になるよ……」
栽培している主は茎菜類、つまりジャガイモが中心。
だが——
鑑定。
畑:魔獣被害(大)
実質生産量:1ヘクタール未満
土壌:やや痩せ気味(改善可能)
「……なるほどね」
畑の半分以上が荒らされている。
これではいくら働いても食糧は増えない。
川辺や森の調査は後回しだ。
まずは畑を“安定生産”できるようにする必要がある。
「魔獣をどうにかしないとダメですね」
「ですが、討伐は……」
「討伐じゃなくて、罠です。
荒らしに来る魔獣を“いただく”方向でいきましょう」
村長が目を瞬かせた。
「罠……ですか?」
「はい。畑の周りに仕掛ければ、魔獣避けにもなるし、捕まえれば食糧にもなる。一石二鳥です」
簡単に作れる罠をいくつか説明する。
——落とし穴
地面を掘り、枝と草で蓋をする。
捕獲サイズ:中型まで。
——くくり罠
ロープを輪にして地面に固定し、踏んだ瞬間に足を締め上げる。
捕獲サイズ:小〜中型。
——挟み罠
木のバネを利用して、踏んだ瞬間に挟む。
捕獲サイズ:小型。
今回は、畑に来る魔獣のサイズを考えて、
落とし穴とくくり罠を中心に設置することにした。
「よし、これで一晩様子を見ましょう」
村人たちと協力して罠を設置し、その日は終了した。
——翌日。
罠には何もかかっていなかった。
——翌々日。
落とし穴に杖が入っていた。
どうも村長が気になって様子を見に来た際、誤って落としたらしい。
「……そりゃ魔獣も警戒するわけだよ」
毎回様子を見に来られたら魔獣が引っかからないので、
部外者ながら村長に畑への立ち入り禁止令を出した。
そして三日目。
「五十嵐さん、これ……!」
畑の端にある落とし穴を覗くと、
そこにはイノシシ型の魔獣——ボアが落ちていた。
鑑定。
名称:ボア
危険度:小
特徴:突進のみ
動き:直線的で読みやすい
弱点:鼻先
「おお……本当に捕まるんですね……!」
「ええ。あとは止めを刺すだけです」
止め刺しは簡単だ。
落とし穴の中で動きが制限されているので、
鼻先を棒で強く叩けばいい。
——鼻は急所だ。
そこを一撃入れれば、ボアは倒れる。
私は長めの木の棒を構え、穴の縁から狙いを定めた。
「ごめんよステーキ君。村のためだ」
鼻先に一撃。
ボアは短く鳴き、動かなくなった。
「……こ、こんな簡単にボアが!! 神様じゃ!!」
「これで、しばらくは肉に困りませんね」
村長は胸の前で手を組み、天を仰いでいた。
井戸、水、そして肉。
少しずつだが、村が“生き返る”気配がお腹の音と共にしてきた。




