第3話「井戸と蚊と、優先事項」
村の再建にあたって、優先順位を整理した。
やることは大きく三つ。飲み水の確保。食糧の確保。そして村の防衛。この三つを先に進めないと、何も始まらない。
まずは飲み水だ。
村長に案内された先には、見事に壊れた井戸があった。滑車は折れ、ロープはボロボロ。底は石ばかりで枯れているように見える。
村人たちは雨水を桶に溜めて飲んでいるらしい。
その桶を覗いた瞬間、私は固まった。
「……えぇ、ボウフラいるじゃん」
鑑定
名称:ボウフラ(蚊の幼虫)
危険度:低
衛生度:最悪
——最優先事項、確定。
私は前世で蚊が大嫌いだった。部屋に一匹でもいたら、倒すまで寝られないタイプだ。ましてやボウフラ入りの水を飲むなど、論外。
「村長さん、井戸を先に直します。これは放置できません」
「やはり……そうですよね」
まず井戸本体を鑑定する。
鑑定
井戸:使用可能
水質:やや悪い(改善可能)
深度:十分
「よし、いける」
滑車の軸が折れているだけだったので、釘を叩いて代用品を作る。
鑑定
滑車(代用品):★1/応急処置・長くは持たない
ロープは女性陣が新しいものを編んでくれた。
鑑定
ロープ:★3(普通)
問題は井戸の底に溜まった石の除去だ。誰が降りるかと考えていると、子供たちが手を挙げた。
「僕ら、慣れてますから!」
「順番でやるよ!」
……この村の子供、たくましすぎる。
鑑定で危険がない深さと確認してから、交代で降りてもらう。
子供たちは、器用に石を拾い上げ、私は上で滑車を回して引き上げた。
「よし。これで井戸が使えるはずだ」
試しに水を汲むと、濁りはあるが飲めるレベルに近づいている。
「村長さん、これで雨水生活は終わりです」
村長は目を潤ませながら、深く頭を下げた。
「……ありがとうございます。本当に……」
「いえいえ。次は食糧ですね」
見上げると、青空の中をアオアシガメムシが飛んでいくのが見えた。
——さて、あのジャガイモをいつまでに卒業できるか。
ここだけは計算したくなかった。




