第10話「赤い水路」
さらに翌日。
——筋肉痛が、えぐい。
全身がバキバキで、布団から起き上がるだけで呻き声が漏れる。
昨日の畑仕事が、ここまで効くとは思わなかった。
「五十嵐さーん、起きてるよねー? 行くよー!」
外からユイの元気な声が響く。
……このテンションの差よ。
「今行きます……」
私は体を引きずるように外へ出た。
ユイは既に鍬を担ぎ、トマは無言で畑へ向かっている。
朝から畑の整備が始まった。
「五十嵐、昨日言った区画を掘れ」
「……はい」
返事だけは元気にしたが、体は悲鳴を上げている。
だが、鑑定を使えば作業効率は上がる。
鑑定。
畑:改善進行中(効果:小)
土壌:通気性向上
作業者:五十嵐(疲労:重)/ユイ(元気:MAX)/トマ(通常)
……ユイの元気MAXって何だ。
「ちょっと村長に呼ばれたので離脱します!」
私はそう言って畑を離れた。
もちろん嘘だ。
このままでは体が壊れる。
村長宅へ向かうと、村長は机に向かって何やら書き物をしていた。
「おや、五十嵐さん。どうしました?」
「村の再建について、少し相談を……」
村長と、今後の村の方針について話し合う。
水路はすでに通っているが、老朽化が進んでいる。
畑の改善が進めば、次は水路の補強が必要になる。
「村を立て直すには、やはり人手が……」
村長が言いかけたところで、扉が勢いよく開いた。
「五十嵐さん!! 来て!!」
ユイだった。
顔が真剣だ。
「何があった?」
「水路! 水が……おかしい!」
急いで畑へ戻ると、
畑に通る水路の水が——赤い。
昨日まで透明だった水に、赤色が混じって流れている。
「血……?」
私は鑑定を使った。
鑑定。
水路:異常
成分:魔獣の血
流入源:上流(森側)
原因:魔獣の大量出血/外的要因(強)
「魔獣の血です。上流から流れてきてます」
「なんで……?」
ユイが息を呑む。
昨日の“魔獣の逃走パターンの変化”。
そして今日は“魔獣の血が流れてくる水路”。
——いよいよ、無視できないレベルにまで発展している。
その時だった。
村の入り口から、馬の蹄の音が響いた。
身なりの良い男を先頭に、武装した集団が村へ入ってくる。
男は馬上から村を見下ろし、鼻で笑った。
「おい、村長はどこだ。徴収の時間だぞ」
空気が、一気に張り詰めた。




