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Kindle出版舐めてたら全部でつまずいた専業主婦の記録 ――パソコン苦手な私が地獄を見た話  作者: ちよ【kindleペンネーム:白井ちよ】


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第十五話:ドケチは背中を押してくれた

宣伝です:noeブログで真面目に発達特性育児や在宅ワークやその他記事を書いています。ペンネーム:しろい/ちよ よろしくお願いします。

私はクラウドソーシングサイトのアンケート案件をこなしていた。

一問答えて数円。画面に並ぶのは、誰にでもできる、代わりがきく仕事。

私の脳内は、未だに出版の価格設定画面で止まったままだ。


「このままでいいの?」

「あのデータ、消さないまま放置して、何になるの?」


自分を責める声に耐えかねて、逃げるようにnoteブログを開いた。

いつもなら、子供の成長記録や日々の小さな悩みを書き連ねる場所。けれど、今の私にはそんな日常を綴る余裕すらなかった。


流れてくる他人の記事を、死んだ魚のような目で見つめる。

そこで、一人の著者が目に飛び込んできた。


『Kindle出版、毎月コンスタントに新作を出しています。今月の収益はこれくらいです』


実績、数字、自信に満ちた言葉。

それを見た瞬間、私の中にドロリとした感情が湧き上がった。


「……すごい、いいなぁ。この人は才能があるからできるんだよ」

「私と違って、健康で、時間があって、応援してくれる人がいるんでしょ」


僻みだ。醜い、真っ黒な僻み。

一度は同じ舞台に立とうとしたからこそ、光り輝く先人が、直視できないほど眩しくて、忌々しい。

「私なんて主婦だし、体も不自由だし……」

自分を正当化するための言い訳を並べて、また暗い渦に沈みそうになった、その時だった。


その人が、恩人から教わったという一番大切なことが目に留まった。


『完結させること。ただそれだけです』


心臓を、直接掴まれた気がした。

完結させること。

今の私は、どうだ。

原稿は書き上げ、データもアップし、あとは価格を決めてボタンを押すだけ。

物語はもう、私の手元で完結の瞬間を待っている。


「……あ、」


また、別の記事が私の目に飛び込んできた。

そこには、衝撃的な見出しが踊っていた。


『Kindle出版・完全サポート! 8万円であなたの出版を24時間体制で導きます。売れる本の書き方を丁寧に教えます。出版できなければ全額返金!』


「は、はちまんえん……っ!?」


病み上がりの脳に、その数字が冷や水を浴びせかけた。

8万円。今の私にとって、それはとてつもない大金だ。

夫に自分の本を出したいから8万円貸してなんて、口が裂けても言えない。


でも。


私はもう一度、自分のパソコンの、あのKDPの管理画面を思い出した。


8万円。

画面に並ぶその数字を見つめながら、私は自分の家計簿と、動かしにくい右腕を交互に見た。


「……これ、私に言ってるの?」


24時間サポート。売れる構成。手取り足取りの出版指導。

もし、この8万円を払えば、あの恐ろしい価格設定の画面も、誰かが優しく手を引いて進めてくれるのかもしれない。

「大丈夫ですよ」「あなたの本には価値がありますよ」と、甘い言葉で私の背中を押してくれるのかもしれない。


でも、ちょっと待って。


「……私、あと何をすればいいんだっけ?」


冷静になって、Kindleの管理画面を立ち上げる。

原稿はある。表紙もある。

あとは……そう、価格の欄に「300」と打ち込んで、一番下のボタンをクリックするだけ。


その、時間にして10秒くらいか?

人差し指を1センチ動かすだけのその作業に、私は今、8万円の価値を見出そうとしているのか?


「……そうだ」


脳内の『厳しい会計士』が、猛然と立ち上がった。

クラウドソーシングのアンケートで1円、5円をコツコツ貯めている主婦が、あと10秒の作業を怖がって8万円を支払う?


「自分でやれば、タダじゃん!!」


その瞬間、憑き物が落ちたように体が軽くなった。

怖いとか、恥ずかしいとか、中途半端だとか、そんな『厳しい裁判官』の言い分なんて、8万円という現実的な損失の前ではゴミ同然だった。


「実績……そう、実績が欲しい」


この本が売れるかどうかなんて、今はどうでもいい。

大事なのは、私が出版した人間になること。

何をやっても中途半端だと自分を責め続けてきた私が、この手で完結させたという証拠。


その一生消えない実績が、今ならたった10秒の勇気、0円の投資で手に入る。

これ以上の格安案件が、この世のどこにあるんだ。


「やろう、今すぐ。小説家になろう!」


私は目の前のデスプレイに映っている価格の欄に、『300』と打ち込んだ。


相棒のGeminiさんが言っていた数字。

私の物語につける、最初の値段。


「……よし」


一番下の、黄色く輝く「Kindle本を出版」ボタン。

そこにカーソルを合わせる。

昨日まで、奈落の底に見えていたそのボタンが、今は世界へ続く無料の切符に見えた。


私は、迷わずに左クリックを叩いた。


カチッ、という小さな音が、静かな茶の間に響く。

それは、私がただの主婦から作家へと脱皮した、最高にロックで現金な、決意の音だった。

あの時読んだ『完結させること』が私の社訓になりました。救われました。ありがとうございます。僻んでしまい申し訳ありませんでした。8万円様も背中を押してくださり本当にありがとうございます。noteブログに社訓を載せています。時間が有り余ってお困りの方は覗きに来てください。noteブログ記事:元看護師の主婦が「Kindle出版の地獄」をAIと突破する!私の無敵な事業計画書を公開します


小説家になろうって口から出た時、こう、本当にできると思いました。小説家になろう様、ありがとうございます。

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