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黎明を灯す光 ~神に至る道~  作者: Mr.Z


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088.選別

 という訳で、コマンダーがリストアップした候補者の200人全員を会議室に呼び出してもらった。マスクを着用して、一人ずつ顔を合わせて直感で選別していく。目の奥に宿る才能を探り当てるのだ。


 何だか生まれたばかりのヒヨコがオスかメスか一目で見極める達人の真似をしている様に思えてきた。


 そうして200人いた候補者の内、今回は10人のみ残る事となった。思っていたよりも少ない事にオレ自身も驚きだ。だがまあ、仕方がない。


 残った10人にオメガ因子の話をして、変異ドリンク(オレの小便)を飲んでまで戦うのか問うと、誰もが顔を伏せて考え込む。そんな中、オレより年下に見える金髪の双子、男の子と女の子が前に出てきた。


「僕、やります!」


「・・・クララも」


 覚悟をその目に宿し、宣誓する様に言う男の子。そして小さな声で続く女の子。


 その二人は見覚えがあった。どこで会ったのかは覚えていないが、絶対にどこかで会った事があるはずだ。後で確認してみるとしよう。


 彼らに続き、残りの8人も特殊強化兵に志願した。子供に負けてられないと思ったのだろう。彼らが良い着火剤となってくれたって訳だ。


 そうして10人にアレを渡して、毎日少しずつ、時間を掛けて飲むように伝える。彼らの特性が何であれ、活躍してくれる事だろう。


 全員出て行ったと思っていたら、最初に乗り出してくれた双子がまだ部屋に残っている事に気が付く。


「どうかしたか?」


 そう問うと、男の子が懐から何かを取り出す。その手にあったのは、左目部分が欠けたオレのマスクだった。


 それを見て全てを思い出した。彼らは、ベルリンでオレがアンラ・マンユに殺される前、カフェに立て籠もっていた子供だ。孤児だった為、警察に引き取られた後どうなったか知らなかったが、まさか防衛軍に志願していたとは。


 オレはマスクを外して、男の子と目を合わす。


「ずっと・・・持っていたんだな」


「はい。・・・あの時は・・・ありがとうございました・・・! あなたのおかげで僕達は今もこうして生きていられます・・・。ただ、もう会えないと思っていました・・・」


 男の子が涙を流す。零れたその雫が、手に持っているオレの仮面の上に落ちる。その頭を撫でながらオレは言う。


「良く妹を支えながらここまで来たな」


 ベルリンが襲われてから今日までおよそ1年。それまでの間、この子は妹を守りながら生き抜いてきたのだ。孤児院にいたのか、路上でその場暮らしをしていたのかは分からない。


 ただ軍に志願して、騎士団に入る資格までも得たのだ。彼らの努力は決して温いものではないだろう。


「名前は?」


「・・・ルカです」


 名前を聞くが、孤児だからなのかファミリーネームは名乗らなかった。


「ルカか。いい名前だな。妹は、さっきクララって言ってたよな?」


「ん。クララはクララなの」


 一人称が自分の名前になっている。まあ、可愛らしい小さな女の子だから似合っている。


 ・・・小さな女の子?


 孤児であるが為、まともな食事が摂れておらず、背が伸びていないのは分かる。だが、それにしても少し小さい気がする。


「ルカとクララは何歳なんだ?」


「えっと・・・僕とクララも・・・14歳です」


 ・・・15歳からしか入れないって話はどこに行ってしまったんだ? いや、志願した場合って年齢は関係ないのか? そんな訳ないか。


 とりあえずコマンダーに聞いてみるか。


「年齢的にアウトじゃない?」


『・・・志願書には15歳と記載がある』


 多分、コマンダーがアメリカのどこかに保管されているであろう彼らのサインが入った志願書のデータを確認してみたところ、虚偽の申告があった様だ。


「ごめんなさい・・・。15歳じゃないと軍に入れないって聞いて・・・。でも行く宛もなくて・・・」


 オレらのやり取りを見ていたルカが、心苦しくなったのか白状した。ただ、金欲しさではなく、行く宛が無くて仕方なく入隊したという理由は責められるものではない。むしろ盗みに走らなかっただけマシだろう。入隊もせずにぬくぬく過ごしている大人達に見習ってもらいたいものだ。


「そうか。心配するな。追い出したりなんてしないから」


 追い出されないか心配しているルカとクララの頭を撫でてやる。


「ただ、訓練はしっかり受けてもらうからな。覚悟しとけよぉ?」


「・・・はい!」


 ここにいられると分かり、明るい笑顔で返事するルカとコクコクと頷くクララ。明るくて社交的なルカに対して、クララはかなり大人しめな子だ。


 男にしては少し長い金髪のルカと、少しカールが掛かった金髪ロングヘアーのクララ。今みたいに身なりがしっかりとしていると、人形みたいに綺麗な子達だ。青い瞳が金髪の輝きを増している。


「そのマスクはもういらないから、捨てていいぞ」


「いえ・・・。捨てません。これは・・・僕達の大切な宝物です」


「・・・そうか」


 オレからしたらゴミだけど、彼らからしたらお守りみたいなものなのだろう。ならが、オレから言う事はもう何もない。


 彼らは年齢を偽っている。ルールは大切だが、それ以上に大切なものだってある。それに、誰かを傷つける嘘でないのなら、それは嘘ではない。今回に限っては、それは覚悟と呼ぶべきだ。


 この小さな戦士を大人達が守ろうとしないのならば、今後はオレが守ってあげよう。


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