087.戦乙女部隊
アンジェに『あれ』を飲ませつつ、他の隊員で素行が良い人物を教えてもらった。特に彼女と仲の良い女の子を数人。それ以外の人に関しては彼女も知らない様だった。
前は中隊が編成され、大人数と関わる機会が多かったが、小隊長となった彼女は他の隊との接点はあまり多くなかったみたいだ。
「お力添え出来ず申し訳ないであります・・・」
「気にするな。そもそもオレが他の隊員達と交流していなかったのが悪い」
とは言ってもオレに関しては彼女よりも他の隊員との接点が少ない。他の隊と任務に参加する事がほぼないからだ。基本的には単独行動だから。まあ、オレの動きに合わせられる人間を育成する為に特殊強化兵、つまりは騎士団員を募集している訳であって、そうなってしまうのも仕方がない。
「とりあえずそれを毎日飲んでくれ。先程の候補者以外の人には絶対に飲ませない様に」
「了解であります! つかぬ事をお聞きするのですが、この飲み物の原材料はなんでありますか?」
「・・・聞くな。極秘だ」
オレの小便だなんて絶対に言えない。言ったら変態扱いされるのが目に見えている。
「りょ、了解であります・・・」
彼女はオレの迫真の表情に気圧され、それ以上何も聞かなかった。時には、真実を知らない方が幸せでいられる。
原材料を知ったら絶対に飲まないだろう。オレだって飲まない。例え自分の体から出たものだとしても。自分のだからこそ尚更嫌だ。自分のを飲むぐらいだったらミカエラかクーナさんのが良い。・・・いや、そういう問題ではないのだけれど。
アンジェがあの変異ドリンクを人数分持って部屋から出ていくのを温かい目で見送る。いつか原材料を知ったとしても、オレを殺さないでおくれ・・・。
2週間後――
アンジェ率いる3人の特殊強化兵候補者が、その適性を調べる為に医務室に足を運んだ。オレも誰がどの適性なのか知りたいので、立ち会う。アンジェを含めて4人。他にも候補者がいたが、さすがに人間をやめるのは嫌だったみたいで、辞退した様だ。
辞退する人間もいる事を考えると、候補者リストの内どれだけの人が特殊強化兵になるか分からないな。オレみたいに気にしない人もいるけど、誰しもがそういう訳ではないのだ。
「緊張してきたであります・・・」
「そうでありますか」
「うぅ、意地悪であります」
緊張したところで結果は変わらない。まあ、高校受験の結果発表みたいな感じなのは理解できるけど。
「コマンダー。アンジェが緊張で吐きそうだから早くしてくれ」
『了解だ』
「吐かないであります・・・。不名誉であります・・・」
過去に超加速の影響で内臓が潰れ、輸送船の中でゲロをまき散らした事がある彼女が恥ずかしがりながら睨んでくる。ゲロインの仲間入りしてしまったのは不名誉だろうけど、当分の間はそれでいじり倒そう。
『君達4人は全員同じ適性が出ている。トウテツだ』
「よりにもよって一番弱いヤツであります・・・。すぐに吐いてしまう雑魚の私にはお似合いであります・・・」
やばい、いじり過ぎて自虐モードに入っている。ただ、斥候型がオメガの中で弱いとはいえ、トウテツの能力は決して弱いという訳ではない。むしろかなり強い部類だ。
バエルの能力だって、それ単体だとあまり強くはない。その他の能力と併用して初めて真価を発揮する。
つまりその能力単体でも活躍できるトウテツやゴライアス、クトゥルフはかなり『当たり』の部類に入るのではないだろうか。
バジリスクの能力に関しては『毒無効』だからな。RPGだと強いけど、現実では役に立つ機会なんてほぼないだろう。
「トウテツなら当たりだ。速く走れるなら敵をかく乱したり、救助活動の役にも立てる」
「囮になったり逃げまわったりでありますか・・・」
こりゃダメだ。重症だ。トウテツの因子の良さを説いてやりたいが、今は無駄だろう。なら別の路線でその心を動かしてみせる。
「それを遊撃部隊って言うんだ。少数の部隊で敵を倒したり、民間人を保護したり。カッコいいだろ?」
「・・・遊撃部隊でありますか?」
お? 食いついた。
「そうだ。騎士団所属の遊撃部隊。そうだな・・・4人共女の子だし、戦乙女部隊なんてどうだ?」
「ヴァルキリー・・・。カッコいいであります」
「だろ? 騎士団所属の戦乙女部隊のアンジェ。クールだと思わないか?」
そう言うと、アンジェが目を輝かせる。
「最高にクールであります! これからはヴァルキリー部隊のアンジェリカであります!」
単純なヤツ。まあ、やる気が出たのなら何よりだ。
まだオメガ因子を結合させた訳ではないけど、彼女なら大丈夫だろう。直感だが、彼女達が適合した暁には、活躍してくれると思う。
「そうか。この直感を信じればいいのか」
誰を結合させるのかどうか。この直感を頼りにしてみればいいのだ。
「コマンダー、彼女達の結合の準備を。それと、候補者を全員会議室に呼んでくれ」
オレの勘で全員を選別する。そうすれば事が上手く運ぶというコマンダーの言葉を信じてみる事にした。




