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黎明を灯す光 ~神に至る道~  作者: Mr.Z


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082.記憶喪失

 知らない天井だ。いや、実際には知っているが、母艦にある医務室の天井だ。


 ミカエラを助けた後に倒れたのは覚えている。どうやら、その後にここまで運ばれてきたようだ。


 体を起こすと、頭が重たい感じがするが、他に体調は悪そうなところはない。腕に刺さっている点滴の針を引き抜き、ベッドの脇に置かれている軍服に袖を通す。


「喉が渇いた」


 一体どれだけ眠っていたのだろうか。喉の渇きがひどい。軍服と一緒に置かれていた水が入ったペットボトルの中身を一気に飲み干す。喉が潤い、思考がクリアになる。


 あれからアメリカはどうなったのだろう。他のみんなは無事だろうか。アメリカ以外も大丈夫だろうか。まだ一度も襲撃を受けていない日本は? オレの家族は大丈夫かな・・・。


 父さんと母さん、妹の沙希の事を思い出す。


「あれ・・・?」


 だが、その3人の顔が思い出せない。確かにオレには家族が3人いる。そのはずなのに、その顔がどうしても分からない。


「なんで・・・」


 訳が分からない。一体、家族の顔を忘れるなんてどういう事なのだろうか・・・。


 それ以外にも、小学校、中学校の同級生の顔と名前も思い出せない事に気が付く。何故か担任の教師の名前は分からないが、顔は覚えていた。


 もしかして過去の記憶が・・・断片的になっている・・・?


 そうなってしまった心当たりは、サイコキネシスの使い過ぎで感じたあの頭痛のせいだろう。あの状態になると、記憶を失うのか・・・。


 どうやら、過去の記憶からランダムに消えていく様だ。軍に入隊してからの記憶は鮮明にある。


 同じ隊だったマックス、姉御風を吹かせていた橘、最期にオレを守って散ったガードナー曹長、そしてアンジェ。


 ミカエラとクーナさんの事はもちろん忘れていない。オレの天使とお姫様。


「大丈夫・・・忘れてない・・・」


 あの2人との思い出は、何一つとして消えていなかった。


 家族の事はショックだが、顔が思い出せないだけで思い出は消えていない。


 ミカエラとクーナさんの事、家族の思い出が消えていない事に安心したところで、部屋の扉が開いた。


「ミカエラ」


「ケイジ!」


 何故か顔を赤くしていた彼女が抱き着いてくる。涙を流す彼女を抱き締め、宥める。


「ごめん。心配かけて」


「ううん。いいの」


 オレが不甲斐ないばかりに、また彼女に涙を流させてしまった。


 それに記憶まで失ってしまった事を彼女が知ってしまえば、自分を責めてしまう事だろう。


「どこか具合が悪いところはない?」


「大丈夫。寝すぎたのかちょっと頭がボーッとするけど」


「3日も寝てたらそうなるわ」


 3日も? それは確かに寝すぎだ・・・。


「クーナさんは?」


「オメガの残党を狩りにアメリカ中走り回っているところよ」


 オレが3日も寝腐っている間、彼女は戦い続けているのか・・・。


「オレも行かないと」


「大丈夫よ。もう残りも少ないみたいだから、すぐに終わるわ」


 ミカエラに止められ、ベッドに腰を下ろす。彼女も横に座り、オレの手を握る。


「あの日・・・助けに来てくれて凄く嬉しかった」


「ミカエラの為ならどこへだって行くよ。さすがに今回のは遠かったけど」


 正直本当に遠かった。転校してワシントンの学校に通ってほしいと思うぐらいには。


「あの学校ね・・・死んだママの母校なの」


「ミカエラのお母さんの?」


 ミカエラのお母さんについて詳しくは知らないが、既に亡くなっているのは彼女とガブリエル大統領との会話から察していた。


「えぇ。3年前、オメガがやって来る2年前に事故で亡くなったの」


 オメガが来る前に・・・。それに交通事故となると復讐も出来ない。思いをぶつけられる先がないって、やるせないな。


「パパは大統領選挙で忙しくて、家には私一人。寂しくて・・・ママの事をもっと知りたくて・・・無理を言って通わせてもらったの」


「だからあんな遠くの学校に・・・」


「でも・・・あんな事起きたらもう・・・通えないよね・・・」


 あの惨状の中、生き残っている生徒はミカエラ達の他に、もしいたとしても数人程度。教師だって全員死んでいると思う。廃校になるか、再び学び舎として機能するのはかなり先の話になるだろう。


 友達やクラスメイト、恩師・・・たくさんの人が亡くなった彼女の悲しみは計り知れない。


 オレもたくさんの仲間を失ったが、彼らは皆軍人として戦場に立ち、散っていったのだ。


 だが、軍人でもないただの学生が巻き込まれて死ぬのは話が違う。


 彼女は死を間近に感じる事のない、平穏な世界で生きる普通の女の子なんだ。


 ミカエラを抱きしめ、頭と背中を撫でながら、未来予想図を口にしてみる。


「いつか、平和になったら・・・一緒に学校に通おう。もしあの学校がやってなかったらその時は日本の高校はどうかな? ミカエラのセーラー服姿を見てみたい」


 前に、ミカエラに自分のセーラー服姿を見てみたいかとからかわれた事がある。彼女もその事を思い出したのか、クスリと笑う。


「そうね。その時は一緒に学校に行こうね」


「ああ」


ふと、ミカエラがオレの耳元で囁く。


「その時は、セーラー服で学校に通うだけじゃなくて・・・色々としてあげるから」


 ・・・ミカエラたんマジ天使。


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