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黎明を灯す光 ~神に至る道~  作者: Mr.Z


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080.ノアの箱舟

 安全運転で移動する事1時間。既に時刻は午後6時。


 日が落ちて外の気温が10度を下回り、車体の隙間から入ってくる風が冷たく頬を撫でる。車内は暖気している為寒くはないが、暗くなった今、このまま移動するのはかなり危険だ。


 無人の民家を借りて、一夜を明かそうかと考えていると、遠くで爆発音が聞こえた気がした。車を停めて周囲を確認すると、遠くで炎の光が見える。


 続いていくつもの爆発音が響いた事で、それがコマンダーかソルジャーによる攻撃だと悟る。目を凝らすと、暗闇の中に黒い戦艦が浮いているのが見えた。


「やっと来たか。どこで油を売っていたんだか」


「ミスターコマンダー?」


「そう」


 早速車を走らせ、現地に向かう。


 風情のある建物が多いボストンの街中で、ソルジャーがオメガを蹂躙していた。天敵の新型オメガの目玉は、母艦から発射された砲弾によって倒されていた。


 避難が遅れていた民間人を防衛軍の人間が保護しながら戦闘していた。ソルジャーもいるのならば、特に手助けする必要もないだろう。下手に接近してしまえば、射線上に侵入してしまう可能性もある。


 周囲のオメガを一掃し、安全が確保されると、隊員の一人に声を掛けられた。


「そちらの方々! 安全を確保したからこちらに来るであります!」


 お前かい。近づくと、アンジェが驚きを隠せずに口をパクパクと動かす。


「アンジェ。無事だったか」


「騎士団長殿!? 本当に生身でワシントンからここまで来たでありますか!?」


 まあ、それは驚くよな。オレがワシントンから来たのを知らなかった後ろにいる3人も驚いていた。


「ああ。それよりガブリエル大統領は?」


「無事であります。既にノアの箱舟に避難しております」


 それなら一安心だ。ミカエラもそれを聞いて安堵の息をついていた。


「良かった・・・」


 緊張の糸が解けたのか、ミカエラが力なくその場に座り込む。大規模な襲撃で犠牲者は多数出てしまったが、身近な人はとりあえず皆無事の様だ。


 それから燃料を補充していた大型輸送船に民間人を含めて搭乗させる。ミカエラ達もそれに乗せようとしたところで、遠くから大きめの爆発音が轟いた。視線を向けると、黄色のイソギンチャクオメガが爆散し、体を黒く染めながら肉片をまき散らしていた。


『聞こえるか?』


 直後、コマンダーからの通信が届く。


「ああ。随分遅かったな」


『ガブリエル大統領とスプリングフィールドでエイブラハム・リンカーン大統領図書館に寄っていた。正義感に溢れる男の物語を堪能していた』


「さようですか」


 要はボストンの西にあるスプリングフィールドのオメガを倒してからこっちに来たっていう冗談のつもりだろう。コマンダーがこのタイプのジョークを言うのは初めてだったが、構ってあげられる程の元気は、今のオレにない。


「転送は使えるのか?」


『この区域内のみであれば可能だ。まだ他の州に新型オメガがいるのを確認している』


「そうか・・・。なら乗せてくれ。もう限界だ」


『了解だ』


 やり取りを終えると、目の前に光の柱が現れる。


「アンジェ、無理しない程度に救助活動を頼む」


「了解であります!」


 アンジェが敬礼し、隊を引き連れて残された人々の救助に向かう。


「ミカエラ、ガブリエル大統領も乗っているみたいだから母艦に行こう」


「えぇ。レイチェルも」


 そこで初めて茶髪の女性の名前がレイチェルだという事を知る。


「お、俺は!?」


 男の方はそのまま輸送船に乗せ、オレ達は母艦に帰還した。光に包まれ、転送室に移動すると、クーナさんとガブリエル大統領がいた。


「ミカ――」


「ケイジ! ミカエラ!」


「クーナ!」


 クーナさんはすぐにオレとミカエラを抱き締める。ガブリエル大統領もミカエラを抱き締めたかった様だが、クーナさんに先を越されて一人取り残される。


 娘にも後回しにされて、虚しく立っているお義父さんの姿は目も当たられなかった。


「クーナさん・・・。無事でよかった」


「ケイジも。今日は大変な一日だったな」


「あぁ・・・。ホントに・・・大変な一日だった・・・」


 香港でバエルの群れを、爆発するクラゲオメガを、アメリカまで移動して、次は目玉オメガに腕を焼かれて、イソギンチャクオメガのせいで散々振り回されて・・・。サイコキネシスの酷使で頭痛が起こるなんて初めての経験だってした。


 でも、最後はミカエラも助けられたし、こうして2人に抱き締められて、オレは幸せだ。


 段々と体から力が抜けて、瞼がゆっくりと下がってきた。


「け、ケイジ?」


 崩れるオレの体をクーナさんが支えてくれる。


 が、もう限界だった。体ではなく、脳がこれ以上活動する事を拒絶してくる。


 視界がブラックアウトし、そのまま意識も遠のいていった。


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