075.異能型オメガ ニュクス
サイコキネシスで飛ばされた剣は、目玉オメガの背面に突き刺さる。弱点と思わしき眼球も貫き、微動だにしなくなるのを確認。再びサイコキネシスで剣を回収する。
あ、当たって良かった・・・。
剣を投げたり、サイコキネシスで飛ばしたりなんかして、もし外していたら遥か彼方まで拾いに行かなければならない。今回は偶然命中した為、事なきを得たが、外していたらと思うとゾッとする。
手元に戻ってきた剣を腕輪に戻す頃には、右腕の皮膚は再生していた。コートは無事だったが、スーツは溶けてなくなってしまった。今後はスーツもアダマンタイト仕様にしてもらおう。
「テイラー上等兵。目からビームオメガは片づけた。すぐにガブリエル大統領の救出に向かってくれ」
アンジェに通信するが、返事はない。
「あ・・・通じないんだっけ・・・」
そうだ、タワー状の新型オメガが通信障害を引き起こしているんだった。
今回は誰にも見られていないので、恥をかく事はなかったが、二度も連続でこんなミスをしてしまうとは・・・。
いや、ミカエラとガブリエル大統領が心配で気が気でないだけだ。普段のオレならこんなミスはしない。ホント。いや、マジで。
改めてその新型オメガを探すと、黄色いイソギンチャクみたいなものが地面から生えている、いや刺さっているのが見えた。倒れた記念塔の奥に鎮座していた。
太さは直径5メートル、高さは40メートル程で、体は地面に刺さっている。頭部はイソギンチャクみたいな触手が数十本生えており、ウネウネと動いているだけ。特に攻撃手段を持っている様には見えない。
通信障害を起こすだけのオブジェクトに近いのかもしれない。
「せいっ」
それに近付いて胴体を真っ二つにすると、黄色の体が黒くなり、枯れた植物の様にシワシワになっていく。
これで通信障害も改善されたのか、確認の為オープンチャンネルで通信してみる。
「こちら漆葉騎士団長。誰か聞こえるか?」
『騎士団長殿! 聞こえるであります!』
すぐにアンジェの声が聞こえる。
『君か。こちらも今しがたジャミングを引き起こしているオメガを仕留めたところだ』
そしてコマンダーの声も。
『ケイジ! 無事か!?』
最期にクーナさんの声がした。はあ、癒される。
「無事ですよ。そちらも大丈夫ですか?」
『ああ、大丈夫だ。私も今フィラデルフィアで黄色いオメガを倒したところだ。目ん玉には苦労したが、怪我はしていないから安心してくれ』
さすがクーナさん。オレなんて右腕溶かされたのに・・・。
フィラデルフィアは今いるワシントンから北東に200キロメートル以上先にあったはず。
やはりコマンダーの録音が言っていた様に、今回の襲撃はかなり大規模の様だ。
『こちらはニューヨークだ。これからマサチューセッツ州に移動する』
フィラデルフィアの更に北東150キロメートルの位置にあるニューヨークにコマンダーはいるみたいだ。アメリカ全土ではなく、どうやら首都のある東側が集中的に襲われているのかもしれない。
「了解。テイラー上等兵はそのままガブリエル大統領の救出に向かってくれ」
『了解であります!』
安全を確保した今のうちにガブリエル大統領の身の安全の確保に向かわせる。
「コマンダー。ミカエラは?」
『彼女がいるのはマサチューセッツだ。これから安全を確保する』
「オレも行く。先に向かっていてくれ」
『了解だ』
距離でいったら・・・700キロメートルぐらいか。大型輸送船に乗れたら良かったが、既に燃料切れだ。走っていく訳にも行かない。なら――
「やりたくないけど、あの方法で移動するか・・・」
北東に視線を合わせる。深呼吸して覚悟を決める。
『ケイジ』
と、そこでクーナさんから通信が入る。
「クーナさん?」
『ミカエラを必ず助けるんだ』
「・・・はい!」
そうだ、また3人で一緒にいる為にも・・・必ず助けてみせる。
オレはその場で垂直にジャンプする。およそ20メートル程跳んだ後、サイコキネシスで自分の体を強く叩く。ドガッと、背中に衝撃を受けると同時に、数百メートル吹き飛ぶ。激痛と内臓が潰れる感覚を味わいつつ、再度自分の体を打つ。
何度もそれを繰り返し、ひたすら加速する。空気抵抗を和らげる為に、体を地面と平行にし、足の裏をサイコキネシスでぶん殴る。同時にそれを足場に跳躍して更に加速。
瞬間的な速度がマッハを超えるとソニックブームが発生し、爆発に似た音が響いているはずだ。音速を超えて飛ぶオレの耳には入ってこないが、衝撃は感じられた。
酷使している脚が焼ける様に熱い。超高速下で感じる風のせいで、体が寒い。疲労した体をバエルの能力、超回復で癒すが、エネルギーを消費しすぎて今まで感じた事の無い程の空腹感に襲われる。
上空から地上を眺めると、新型オメガ以外にも、今まで戦った事のあるオメガも確認できた。襲われている民間人の姿も見られる。今すぐ降りたら助けられるだろう。
だが――今はミカエラが優先だ。オレは偽善を振りまくつもりもなければ、正義の味方でもないのだから。
赤の他人よりも彼女の命の方が大切だ。




