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黎明を灯す光 ~神に至る道~  作者: Mr.Z


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068.襲撃事件

 数分後、演説が始まる。戦死者を悼む為の黙祷や戦争の苛烈さを伝えるものの、民衆からは野次やブーイングの嵐が飛ぶ。


 既に戦死者は2万人に達し、新たな適合者の強制召集が何度か実施されていたらしい。オレが死んでいる最中の出来事だったので詳しくは知らない。ただオレがいない作戦の戦死者がかなり多かったらしく、ソルジャーの様な無人兵器をもっと導入しろという声が多い。


 確かにソルジャーは強力だが、アールヴヘイムでは草木を燃やしてしまう恐れがある為、出禁状態。アールヴが極端に嫌がる。人類と接触する前に、一度火事になりかけた事があるらしい。


 地球上の作戦でも使われる事は多いが、火力重視の為機動力が低い。惑星マザーに存在するアダマンタイトも残り少なく、地球上の金属で製作した場合かなりのコストが掛かる。つまり人間の方が安いのだ。


 アメリカ軍が使用している戦車だって数十億円するらしい。それがオメガにも通用するオートマタ製ともなれば、原材料だけでも数百億はする。食糧難に陥っていない為、人間で代用した方が安く済んでしまうのが現状だ。


 今後はオレと同じオメガ人間が戦闘の主となるのかもしれない。コマンダーは以前に数億分の一の確率でしかなれないと言っていたから、それはあまり現実的ではないかもしれないが。


 ガブリエル大統領のスピーチが終わり、質疑応答の時間に移ると、記者からいくつか質問が飛んでくる。


 その中でも戦死者が多いのは戦場で死んでいるからではなく、人体実験に使われているからだという根も葉もない陰謀論を言う記者には笑ってしまった。少なからず的を射ていたからだ。オレがその人体実験の被験者1号です。


 他にも下らない質問がされている中、路駐している車の中からこちらにライフルを向けている男がいるのを目視する。


 マジで大統領を襲撃するヤツっているんだ、と映画のワンシーンみたいな場面に興奮しつつ、腕輪を剣に変形させてガブリエル大統領の前に立つ。


 マズルフラッシュが見えた直後、弾丸が飛来する。それを逆手に持った剣の腹を盾にして受け止めた。


 キンッ――


 甲高い金属音が鳴り、銃弾を防ぐのに成功する。これもアニメや映画のワンシーンみたいでカッコいいな。自画自賛しつつ、ガブリエル大統領を連れて下がる。そこでようやく狙撃されている事にその場にいた連中が気が付いた。


「ガブリエル大統領、そのままオレの後ろから出ないで下さい」


「銃弾を剣で弾いたのか!? ハハッ! 凄いな! それとお義父さんだろ!」


 撃たれているのに悠長な・・・。それだけ肝が据わっているならオメガとも戦えそうだ。


 続く3発の射撃も弾くと、民衆の中からダイナマイトの様な筒状の物が飛んできた。多分、ダイナマイトじゃなくて手製爆弾だろうけど。


 オレはそれをサイコキネシスで真上に弾き飛ばす。刹那――


 ドゴォオオオンッ――


 爆発音が轟く。爆風が頬を撫でるが、その威力は大したものではなかった。こちとらソルジャーの榴弾の爆発力に慣れているからな。粗末な手製爆弾では物足りなさすら感じる。


 既に犯人は警備していた軍人に差し押さえられている。さすがに演説はここで終了となり、今はガブリエル大統領とそのシークレットサービスと、防弾・防爆仕様のリムジンに乗って移動していた。


「やはりケイジを連れてきて正解だった。コマンダーにソルジャーを借りていたら、私は今頃地獄に落ちていただろう」


 その顔なら確かに地獄の方が良く似合う。つい先程殺されかけたというのに笑っているガブリエル大統領には畏敬の念を覚える。


「無事で良かったです。ガブリエル大統領」


「お義父さん、だろう?」


「はい・・・。お義父さん・・・」


 マジで勘弁してほしい・・・。


 大統領襲撃事件はすぐにニュースになった。犯人の動機は、ガブリエル大統領が言っていた通り、戦死者の遺族によるものだった。家族を失った悲しみや怒りの矛先をオメガではなく、人に向けるのは間違っていると思う。


 今となってはオレ自身、強制召集は必要悪だと考えている。戦う人がいなくなれば、待っているのは人類の敗北、つまりは絶滅しかないのだから。


 こんな状況でも人間同士で争うなんて、本当にバカげた話だ。それは死んでいった者達の犠牲を無駄にしてしまう事だと何故分からないのだろう。


 認めたくないのか、本当に分かっていないからなのかは分からないが、一度戦場に来て経験してみればいいのだ。そうすれば、嫌でもオメガの脅威を知る事になるだろう。


 いっその事、作戦の状況をテレビで放送したりネットで配信してしまうのはどうだろうか。生中継で、ありのままを放送する。配信事故が起こる可能性も高いが、オメガの大群を目にすれば誰だって気付くはずだ。戦う人間が必要だという事を。


 ホワイトハウスに戻るまでの途中、スモークガラスの向こうに映る日常に目を向ける。ノースウエスト通りにいる歩行者が呑気に生活している。


 平穏を享受しているのは自分以外の人間が戦場で戦っているからだというのを、一体どれだけの人が理解しているのだろうか。


 今のオレにとっては自分事だから深く考えるが、もし適合者ではなく、普通の人間として今も日本で暮らしていたら、オレも他人事だと思って気にも留めないだろう。


 結局、人間とはそういう生き物なのだ。少しだけ、物事の捉え方がコマンダーに影響されてしまったかもしれない。


 それは嫌だなと思い、視線を落とした時、ガブリエル大統領が何かを思い出したのか口を開く。


「そういえば先程まで君の家族に会っていたんだ。みんな元気そうだったよ」


 ・・・なんでこの人オレの家族に会ってんの? 何をどうしたらそうなるんだ?


 突然のカミングアウトに、オレは固まる事しかできなかった。


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