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黎明を灯す光 ~神に至る道~  作者: Mr.Z


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062.レイチェル

 翌朝。


 私は隣で眠っているケイジの寝顔をスマホで撮影した。その可愛らしい寝顔からは、戦っている時の凛々しい顔も、昨夜の行為の最中に見せた男らしい顔も想像できない。


 頬とつついてみると、顔を歪めてうなり声をあげる。


「ふふっ」


 可愛らしくて、愛おしくて、その顔は飽きずにずっと眺めていられる。


「好きよ、ケイジ」


 軽くキスをすると、彼の目が開いた。まだ眠たいのか、またすぐに閉じては開くを繰り返す。


「んー・・・。眠い・・・」


「もう朝よ。お寝坊さん」


 そう言って今度は鼻をつつく。


「んー・・・」


 が、彼の瞼は閉じていく。


 そんな穏やかで幸せな時間を過ごしていると、彼のブレスレットから通信の着信音が響く。


「誰だ・・・」


 眠たい目を擦りながら、ベッド脇に置いていたブレスレットを起動する。


「もしもし・・・」


『やっと起きたか』


 通信の相手はミスターコマンダーだった。


「っさい・・・」


 眠たいながらも返事する彼。そんな彼の体に腕を回して抱き着くと、頭を撫でてくれる。


『用があるのは君ではなく、彼女の方だ』


「ミカエラに・・・?」


 彼を挟んで向こう側にいるクーナは、まだ寝息をたてて眠っている。その事から起きている私に用があると考えられる。


『そうだ。大統領からの伝言がある』


「パパの?」


『一言一句そのまま伝える。お泊りするなら事前に連絡しなさい。それと学校はサボらず行く事。以上だ』


 ごめんなさいパパ。それとありがとう。心の中でパパに謝罪と感謝をする。言いつけ通り学校に行かないと。レイチェルにも報告する必要がある。


 私はケイジの上に乗ってキスをした。


「んっ。準備して学校に行ってくるね。ケイジ」


「うん・・・。転送室まで送るよ・・・」


 ベッドから降りて服を着る。そして学校に行く支度をしていると、寝ぼけたケイジがベッドから降りて廊下に出ようとする。裸のまま。


「ちょっとケイジ! 服着て!」


「え? あ~・・・」


 1か月も眠っていたせいなのか、元々朝に弱いのか分からないけど、覚醒していない彼はとても可愛らしかった。その後、しっかりと転送室まで送ってくれた彼と別れのキスをして自宅前まで転送。一瞬で数百キロメートルも移動できるなんて本当に便利だ。


 転送の偉大さに感心しつつ、専属の運転手に学校まで送ってもらう。


 教室に着くと、レイチェルが見えた。明るくて長い、綺麗な茶髪がトレンドの彼女。議員の父を持つ彼女とは、10年以上の付き合い。


「ハイ、親友。ゾンビみたいな顔じゃないって事は、うまくいった?」


 誰がゾンビみたいな顔だと言ってやりたいが、確かに前よりは痩せていた。ただ、ケイジとたくさん愛し合ったせいか、今はものすごく空腹を感じている。


「えぇ、うまくいったわ。レイチェルのおかげよ、ありがとう」


「そう。じゃあ、はいこれ」


 彼女がサンドイッチを差し出す。何故サンドイッチをと思ったものの、私の腹の虫が我慢できずに泣いてしまった。


「あ、ありがとう・・・」


「もしうまくいってなかったとしても、どうせお腹すかせていると思って」


 なんて気の利く親友なのだろうか。こんな優しい彼女を心配させてしまうなんて、本当にバカな事をしたと思う。そのサンドイッチをすぐに平らげると、空腹感が収まる。


「で、愛しの彼とはどこまで行ったの?」


 この年頃の女の子は、誰しもが人の恋愛話に興味を示す。彼女も例外ではない。


「えっと・・・それは・・・」


 無事にゴールまで決めたとは、恥ずかしくて言えない。私がどう返事をしようかと考えていると、クラスの男子が近付いてくる。


「ようミカエラ。今日は元気そうだな」


 短い金髪で背はそこそこ高い白人の男子。名前はブラッド、だったはず。興味がなかったからファミリーネームまでは知らなかった。そんな彼を、レイチェルが睨みつける。


「今ガールズトークしているのが見えない? ブラッド」


「いいだろ、レイチェル。俺だって天使のミカエラと話したいんだ」


 不躾とは言わないが、あまりにも馴れ馴れしい彼に嫌気がさす。折角今朝から彼と幸せな気分を味わってきたのに台無しだ。


「残念だけどアンタにもうチャンスはないの。ミカエラは昨晩にもうボーイフレンドとやる事やってきたんだから」


「ちょっとレイチェル!?」


 何故バレたのだろうかと思ったが、察しの良い彼女なら気付いてもおかしくない。恥ずかしくて無言になる私とは対極的に、教室の中がざわめく。


「あなたね、バレないと思った訳? 昨日よりも明らかに元気で、そんなに幸せオーラを匂わせておいて? それもそんな内股で歩いていて分からない訳ないでしょ」


 あまりにも的確な観察眼だけど、少しは私の恥じらいという面も考慮してほしい。恥ずかしさで顔が熱い。顔から火が出そうな程に。


 恥ずかしくて死にそう・・・。いつしか彼が言っていたセリフだけど、まさか自分もこんな経験をするとは思ってもみなかった。


「もうやめて・・・」


 両手で顔を隠しながら言う。だが、彼女はそんな事お構いなしで続ける。


「ねえ、彼の写真見せてよ。ないの?」


「な、ない!」


「嘘ね。ほら、見せて」


 だから何で分かるかな・・・。ただ、彼の写真は寝顔だけ。ミスターコマンダーからもらった彼の戦闘記録の映像もあるが、さすがにそれは見せられない。


「だからないってば!」


「あ、もしかして教室の外にいるあの子?」


 え、彼が学校まで来たの? 教室の外に視線を向けた瞬間、ポケットに入れていたスマホが取られる。すぐ彼女に騙されたと気付いた。


「ちょっとレイチェル!?」


 レイチェルは私のスマホを手に取ると、当たり前のようにパスワードをあっさりと解除する。


「何で知っているのよ!?」


 無遠慮に写真のフォルダを開いて、彼の寝顔の写真を見て口笛を吹く。


「ヒュ~。可愛い顔の子ね」


「返して!」


 レイチェルからスマホを奪い返して他の誰にも見られない様に画面を胸元で隠す。


「もう!」


 怒る私とは裏腹に、レイチェルは笑顔を見せてきた。


「良かったわね。ミカエラ」


「・・・うん」


 彼と結ばれたのは間違いなくレイチェルのおかげだ。その事に関しては、本当に感謝している。ただ、みんなの前で辱めた事はいつか絶対に仕返ししてやると心に誓う。


 それと途中からずっと魂が抜けたかの様に立ち尽くすブラッドが視界の端に映っていた。どうでもいいけど。


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